死に場所は一緒に(side 亡霊&エルダ)
2人視点になります
私は、彼だという確信を得ていた。貴方なんでしょ……ナリタ……。
この10年前、私を死地から救い出してくれたのは彼だった。
本来なら死ぬはずだった。彼はそんな事全然思っていないけど……私にとっては、人生が変わった瞬間だった。
昔の私は、今無き帝国軍の下っ端……以下だった。
名も無い村で生を受け、10歳に育ち……村が帝国軍に支配された後。私は奴隷以下の環境で育った。戦場では捨て駒に使われ、奇跡的に生還しながら生き延びていた。
11歳の頃、私は毎日の様に戦場に駆り出されてる人生に、嫌気が指し。いっその事死んでやろうかという事まで考える程だ。
帝国軍が衰退する時の戦争では私は見た。
国軍の機体、緑の量産型で二足歩行型であり、顔は適当に掘られた不格好な機体。他の兵士はそれぞれオリジナルの機体なのに彼だけ違うのは目立った。
私はそれだけで、何故か親近感を覚えた。この機体も捨て駒何じゃないかと。
実際の戦闘始まってみれば、同じ様な機体が紛れる中。彼の機体だけ動きが違った。まるで戦場を騙すように、動けば敵を倒し。止まれば他の機体と見分けが付かなかった。
ある作戦で私は、彼と対峙した。しかし、彼はこういった。
「このままでは、俺らは死ぬ。お前はどうする?」
「……私はどうでもいい、もう疲れたんだ」
「ふっ、その程度で疲れたなんて。俺みたいだな」
何故か、彼は自分の様に呟いていた。彼の乗っている機体に似合わない大振りの剣を肩に担ぐと、上をむいていた。
そして次の言葉に、私は衝撃を受けた。
「どうだ? そっち裏切って俺の方に来ないか?」
「……どういうことだ?」
「どうせ死ぬ気なら、そっちでは戦死にして俺らの方で戦わないかって事だ」
意味がわからない、何故敵である私にそんな事を話すのか。ただ……悪くないと私は思った。この男なら私の何かを変えてくれそうだと思った。
彼は剣を持った片手との手で、手を出してきた。死ぬ前くらいなら別な夢くらいみてもいいかもしれない。
私は静かにその手を握り返した。
「それじゃ、2人で暴れますかね。本部からは俺から連絡しておく」
そう言って、しばらくすると。
「許可が出た、俺の監視の元。信用が出来るなら、構わないという事だ」
彼はニヤッと笑った気がした。機体だから分かるわけも無いのだが、そんな気がした。
そして、彼は言った。
「これからが正念場だ、相棒」
「ふっ、裏切るか分からない相手に相棒だと? 狂ってるな」
「かもな、俺もお前も何処か似てるかもな」
2人はその後、私は帝国軍の作戦を無視し、彼と共に戦場で舞った。
今思えば懐かしい記憶だ。あの時、彼に帝国を裏切らないかと言われなかったら私は未だに、戦場に踊らされていただけだったな。
私と彼だけが知っている無線を繋いだ。それは、10年前のあの時から使っていた特殊な無線。
『お前に話しがある』
――□――――◇――――□――
俺は相変わらず、甘いやつだと思う。最初の時点で、どうせ殺さないと行けない相手だと思っているのに出来ない。
初めての感覚だった。この先、どうなるという事を知っているのに……。彼女だけは死なせたくなかった。10年前の時からおかしかったのかもしれないな。
そんな事を思いながら襲い掛かってくる敵を薙ぎ払っていた。
突如、懐かしい所から無線が飛んでくる。やっぱり……気づいちゃったか。そうなるだろうと俺も思っていた。
『お前に話がある』
『……なんだ』
『お前と一緒に、前の……10年前の様に戦わせてくれないか?』
何を言い出すんだ、お前は国軍に入ってから努力をして。地位も人徳も手に入れた、全てを投げ捨てた俺と違って。
馬鹿な事をと言いたかった。
『この機体は1体しかない、お前の機体もボロボロだ』
『お前の後ろ開いているだろ?』
『何故それを……』
そう、俺のこの機体は本来、2人で乗るようの機体なのだ。製作者に俺は1人でやりたいと無理に言ったため、そのリミッターを外してまで限界まで体を痛め付けた上で実現している。
例えば、プログラムが追いつかないのを頭の解析速度と共に動かし。両手足をそれぞれ入れるけど他に手の本数は何処で処理をしてるって頭だ。なのでずっとフル回転状態で動いている。
ただし、それを知っているのは俺と……もうこの世にいない製作者だけだ。
『解析班を甘く見ないほうがいい、そこまでは容易に想像できていたそうだ』
『そう、だったな……あいつはそういうやつだった』
『わかった……どうせ、ならあの時の様に2人で舞おうか』
ただ俺の状態を見て彼女はどう思うだろうか……、俺の体はもう半分以上の体の感覚がなくなっていた。
1回目で肩腕の時点で肩から先、2回目で下半身が半分機能していない上、左肩から先も感覚が無い。
動かせているのは、脳の処理と今まで培った感覚だけだ。
俺は、周りの敵を片付けてエルダの機体に近寄った。
着くとエルダは、コックピットから出て俺を見ていた。本当にやる気なのか……後1回やったら、もう死ぬまで戦い続けるだけだぞ……。
この機体の事を知っている筈なのに、目の前に見える彼女はあの時と同じ決意の目をしていた。
俺はしゃがみ、コックピットを開け彼女を誘った……。
その時。
上からの光が灯っていた。最初の時の……あの杭を打ち出す時の様な。