何かを決めるのは1人じゃロクな事にならない
次は、姫の章
僕達は、散開された部隊を見て……目の前の機体に集中する。
姉ちゃん、殺っちゃおう! 今すぐ!
そうだね~! あいつらは本当に殺っちゃおう!
だが……違和感を覚える。敵機体が誰も動かない。やってきた人数は100くらいだ……が、どうもおかしい。
武器を構えてはいるが、突っ込んでくる様子もない。相手の1機だけだ……。
「お兄ちゃん! 死んでよ~、僕達が英雄になるんだからさ!」
「お姉ちゃん! 馬鹿だから死んで! 今すぐ!」
声は可愛いもののはずだが、聞こえてくる言葉が汚すぎる。それは自分達にも言える事でもある。
だが、英雄になれるわけがない。精々使いまわされてガラクタの様に捨てられるだけだ。
知っているか、優秀な人間は個性が抜ける……いや、抜かれる。それは何故か、親が育ててるのではなく……飼育しているんだ。
何が違う? 育てるは、子供を成長させて1人達させる。飼育は……自分の使い易い駒を作るんだ。
言葉通り飼ってるんだ。
僕達ではもう、救えない……。
そう、私達では弟達は救えない。
2人は知っていた。こうなることも、彼らが大人の玩具にされる事も。
だが、止められなかった。救ってあげられなかった。それは、努力よりも……難しいこと。
「どうしたの、悪役なんだから生きててもしょうがないよね? 今、殺してあげるよ!」
「もう、こんなゴミ相手に何言ってるのよ。さっさと先行こう」
生命の大樹は、何時からこいつらに味方したと思う? 一度もない……そう、生命の大樹にとって国軍は傷口に群がる虫……ただの害虫だ。
何故、2人が集められたのかもしらない。亡霊も魔城も死神も絶望……そして、サアランドも。
この因果は何から始まったのか、何で終わるのかですら分からないんだ。
国軍が、生命の大樹を傷つけたから始まったのか。巫女が大樹で歌を歌うからだろうか。
何もかも知るものはいない。
ブーストし、機体を突っ込む……周りの敵は動かない、真ん中にいる機体が動く。
相手が持っているのは、両手に剣を持っている。
「「もう、終わりする!」」
「やっと来た。待ちくたびれたよ、脇役」
「簡単に死なれちゃこまるからね」
そう言いながら、双方のブレードと剣で相対する。切れ味なんて関係無いと言えるほど、普通に受け止めていた。
横に飛ばして、後ろから奇襲をかけるが剣で受け止められる。
「遅い、遅いよ! そんな動きじゃ、僕達が出るほどじゃない!」
「つまんない!」
瞬間に、剣を振り切られ……半身を斬りつけられる。
即座に戻すが、損傷が激しい。
だが、2人は笑った。
時間を稼ぎ切ったよ!
そうだよ! 稼ぎ切った!
その直後、これまで消えるような歌声ではなく……全員に響くような綺麗な歌声が聞こえた。




