亡霊の由来(side 敵)
副隊長のエルダ・コールドだ。
級は中尉。少佐は気さくでいい人だが、戦場を甘く見ている。
亡霊の戦いで奇跡的に何回も生還しているが、それは亡霊が意図的に生かしているようだった。
こちらに向かってくるのは、漆黒で細身の機体。データでは漆黒の不死鳥と呼ばれる。危機が訪れる度に、腕が1つずつ追加される驚きの兵器。
2つ名は、地獄を彷徨う亡霊。それはここ10年の戦闘結果を見ても、物語っていた。
我らが、侵略する土地を正確に当て。全ての敵を鋭い爪の様な腕を飛ばし、数十分程で周りの機体をただのガラクタにする。
勝算があるとしたら1発キル、それが出来なければこの私では勝つことが無理になる。
今回は宇宙にある衛生に大型の杭を仕込み、指示と共にあの機体目掛けて照射する。それで勝てるかどうかだ。
少佐は、何を考えているのか敵に話しかけた。
「そこを退いてもらおうか、亡霊」
そういう、少佐を無視して漆黒の機体は右手を少佐に向けた。
その時に私は思わないと行けなかった、ヤバイと。
「退かないと言うのなら、倒すまで! 放……」
ガキンッ!
という音から何が起こったのか、察する事が出来なかった。横を見ると、少佐のコックピットがピンポイントに貫かれていた。
一瞬呆然とし、彼が呟いた。
「呆気ないものだ」
それと共に、正気に戻り、少佐に無線を飛ばしつつ。目の前の機体を睨む。
「少佐、少佐返事してください!? 貴様……殺してやる!」
私は被害を抑えるために、この機体を引きつける。ブーストをかけ、持っている剣を振るう。しかし、遊んでいるかのように、私の攻撃を避けては両手を器用に飛ばし。
今だに正気に戻らない、兵を掴み投げ。私の攻撃を避ける盾にしていた。
無線で話しかける。
「お前らは下がれ! あれを使う!」
「副隊長は? どうするんですか!」
私は無線に、集中しすぎたせいで目の前が見えてなかった。目の前をみた瞬間、敵の足が腹に食い込み思い切り吹き飛ばされた。
撤退する兵を押しのけて、後方に吹き飛ばされた。
その時、衛生からの通信で。
『今から射出する』
『待ってください! 私達が!』
『倒せれば、良いのだよ。あの化け物1人殺せれば、本望だろう?』
ズドンッ!
講義する瞬間、私の眼前に轟音と共に一斉に放たれた巨大な杭が振った。
目の前は、衝撃による砂嵐が舞っていた。私達の部隊の半分以上を飲み込んでだ。
砂嵐の中に立ち上がる、機体があった……。
「嘘……でしょ……?」
外した、しかもそこに刺さっているのは杭。その状態では普通は機体は行動不能になるはずが、それを豪快に抜いて投げ捨て。
後ろの背中には腕が2本生えていた。
片腕は肩から消失しているのが救いだ。
爆風を舞い上げ、油断している。兵に、無事な腕で貫き、右肩から切断した。
それを端子に繋げる様に電撃を流し、引き寄せた。
それを私は、唖然としているしかなかった。
『本部! 増援をお願いします! 亡霊が生きてます!』
『何っ! 今寄こす、持ちこたえろ!』
私は兵より先に突っ込むが、遅い……。
兵は、新たな腕と共に次々と貫かれ悲鳴も出させず。私はブーストを最大に突っ込む、それを軽々と避ける。
私は語りかける、この戦いの意味を。
「亡霊! 貴様は何故こんな無意味な戦いをする!」
「無意味? それはお前の主観だろ? 俺はこの場に居る意味があるから居るんだ」
それは正確には答えに聞こえなかった。だけど、少なくとも私達をこのまま助けてる雰囲気ではない。
しかし、何故私を狙わないのかがわからない。他の兵は、少佐ですら躊躇無く殺したのに何故?
『中尉もうすぐ到着します』
『分かった、急いでくれ』
そう言って私は、次の手を進めようとした。