プロローグ「ボロアパート」
別に努力が好きなわけじゃない。
いつも周りから、なぜそんなに勉強を続けるのかと問われるが、俺だってやりたくてやっているわけじゃないのだ。
ただ、俺は常に借金に追われている両親の役に立ちたい、手助けをしたいと感じたからやっているだけ。
この努力にそれ以外の感情は何もない。
しかし、そんな俺も高校3年生。大学受験の時期がやってきた。
目標は当然、お金のかからない有名国立大学。
「この時のために青春をすべて勉強に捧げてきたんだ。」
春。
新しい環境にわくわくしながら慣れない生活を送る人々の中で俺は昼夜逆転生活を送っていた。
毎日、深夜に起きてはゲームをして、腹が減ってはカップ麺を食い、朝方に寝る。
そう、ニートになったのだ。
きっかけはあの日、入試当日。
しっかりとコンディションを整えて向かった試験会場・・・。場所がどこなのかわからなかった。
試験会場に着けなかったのだ。
すべてはマップが悪い。
そうだ。
あのマップが悪いんだ。
最短ルートをすぐ変えたり、存在しないはずの道をさしたり、そもそも自分がまずどこなのかもわからない。
最終的にギガがなくなって諦めた。
「・・・本当に、大事な時の運がないな。」
最初は絶望だった。家に帰るなり、ベッドに入って丸一日飲まず食わずだった。だが、心の拠り所となるゲームを見つけてから、現実逃避を始めた。
ある日、いつも通り11時(当然23時)ごろに起きた。空腹を感じる。
「なんか食うか。」
ちなみに我が家についてだが、クッソボロアパートだ。うん。
絵にかいたかのようなボロアパート。
家賃2500円。
築何十年のため、普通に歩いただけで床もギッシギシ鳴る。
今考えてみれば、床が抜けるのも当然だったと思う。
俺は、隠しカップ麺のストックを眺めながらどれを食すか悩んでいた。
その瞬間、緊急地震速報が鳴った。
狭い我が家に鳴り響く不協和音。驚きすぎて、しりもちをついた。
そして、床が悲鳴を上げた。
そりゃそうだ。
約3ヶ月間、終わっている生活をし続けたがために、順調に肥えていったその体、その巨体に、ボロアパートの床が耐えられるはずもないのだ。
そのまま床を突き抜けて、2階から落下した。後頭部を打ったのかな。
薄れていく意識の中で、最後に思ったことは一つだけだった。
努力なんて、するんじゃなかった。
「二度と努力なんてしない。」
そう誓って――俺は死んだ。




