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今だけを見るコト
「いやあ、ギブ、ギブ」
俺は正直、そこまで運動神経が良くない。特に球技は苦手で、大学から空手と柔道を習い始めて鍛えたが、体力もそこまでない。
それでも分かる。ヴィヴィのような優しくて美しいパスの受け手にして出し手とボールで対話すると、下手くそなりに楽しみもあるというものだ。
「なあ、ヴィヴィ。どうやったらそんなにうまくボールを蹴れるんだよ」
芝生の上に寝転んで聞く。J2の舞台でもうすぐ俺たちの戦士がこの芝生の上を駆け回る。
「今だけを見るコト」
ヴィヴィは鮮やかなリフティングを難なくこなしながら言う。
「今、このトラップを。今、このパスを、このシュートに集中するコト。これだけだネ」
「一球入魂ってやつか?」
「タブンそんな感じ」
汗を拭いて、家路に向かう。そういえば、サポーター仲間も付き合いが減ったな。
だからこそ、店に備えたテレビで「武藤克幸、韓国のサッカーリーグ、通称Kリーグへ移籍」のニュースに驚いた。店の奥の部屋に行くと、嫁の記入欄だけ書かれた離婚届もあって俺はもうどうしていいのか分からなくなった。




