誓って私の趣味ではない
前回までのあらすじ
友人を庇って重体となった三上正成は、目を覚ますと戦国時代、後の石田三成である石田佐吉になっていた!
何やかんやあって秀吉のもとに仕官した佐吉は、何と女装を強いられる!
謎時空
思ったより長くなったので分割します。
今日は楽しいひな祭り……と言ってもまだひな祭りとは呼ばれておらず、上巳の節句と呼ばれているのだそうだが。
大の大人からすれば関係のないことだろうに、振る舞われた酒を飲んで気分を良くし乱痴気騒ぎの大人たちに囲まれた、私はと言えば。
明かりをつけましょ爆弾に……を実際にやってやりたい気分だった。
ドカンと一発ハゲ頭
なんてことするまでもなくもれなくだいたい全員半分ハゲ頭なのだが。
石田佐吉、十八歳!
人生初の女装中!
全くなんの因果だ!
前世……と言っていいのか分からないが、三上正成として生きていた時も初めて女装したのは18の時だった。
男女逆転シンデレラとやらで男装し王子様を演じるという幼馴染と変装して魔女をする幼馴染によって半強制的に女装してシンデレラをさせられた事があった。
こんな青春は嫌だコンテストに応募できそうな体験を思い出しながら、無駄に手際のいい侍女の皆さんに着せられたのだ。
事の発端はねね様がせっかくの上巳の節句なのに祝うような女の子がいないと呟いたとこからだった、そうだ。
確かに言われてみればむさ苦しい男ばかりで、子供に限るとさらにいない。
締め上げて吐かせれば別に男だけでもやると言えばやるそうなのだが、まぁともかく女の子を祝ってみたいというのが本題らしい。
上巳の節句を祝わないというのも寂しいし、と何故かやることは決定した節句の該当者探しが、どうやら行われたらしい。
と言ってもそう簡単に当該する子供など見つかるはずもなく。
しょぼくれる子供達に、昼間から酒でも飲んで酔っていたのであろう主君、秀吉が要らぬ知恵を授けやがったのだ。
女装でもしてみたらどうだ、という巫山戯た提案に、名案だと飛びついた子供達もさすがの子供だが。
どうでしょうと言われて言いわね見てみたいわなんて言いよったねね様もなかなかだ。
と、今さっきになるまで知らなかった事実を一度も関わることがなかったため一片に聞かされた私に、拒まれるわけがないといった目で見上げてくる小僧共。
なぜ自分でするという発想がないのだコイツラは。
そりゃあまぁ分からなくもない。
身長やら体型やら骨格やら、見事なまでに健康的な優良男児の女装なんぞお目汚しにもならんだろう。
だがしかし。
何故私なのだ。
年齢の割には童顔だとか一番身長が低いだとか、それなりに自尊心の傷つく言葉を並べられながら引っ立てられる。
こう、市中引き回しされる気分ってこんな感じなんだろうなと現実逃避しながら着いた先、にこやかに微笑むねね様。
怖い。
すごく怖い。
いつぞやの父上と兄上には遠く及ばないが、背筋の冷える笑みだ。
その時点で何と無く選択肢など無いことは察していたのだが。
とどめを刺したのはねね様の後ろの侍女が、まぁ随分と似合いそうな御方ですわねぇ、と手早く衣装を用意しながら言ったことだった。
似合うわけがあるか私は男だぞ、と叫ぶ間もなく奥の部屋へと連れ込まれた。
そして今。
いかに普段の装束が機能性に優れたものであったかを痛感しながら、酔っ払いどもの間を連れ回されているのだ。
結構重いしコルセットほどではないが締め付けられているしそれなりにきついと言えばきついのだが、座るよりはマシか、と諦めながら歩き回る。
と、一際図体の大きい、ちょっと有り得ない大きさの杯で酒を飲んでいる男と目が合った。
驚きに見開かれた目に、身構える間もなくすでに酔っぱらっていた秀吉に大声で問いかけた。
「ヤイ藤吉郎、お前何時の間に娘作ったんだ?」
「馬鹿言うな小六、儂にはまだ子どもなぞ産まれておらんわ!」
同じ酔っ払いをかき分け、足音を立てて小六と言う大男に駆け寄りながら秀吉がこれまた大声で返した。
「あぁ?じゃぁこの娘は……まさか攫ってきたんじゃねぇだろうな。」
「お前儂をなんじゃと思ってるんだ!」
小六……聞いたことないなぁと思いながら、大声の応酬に耳を塞ぐわけにもいかず、黙って一歩づつ下がって距離をとる。
「……紀之介?」
と、近くにいた紀之介の顔が目にとまった。
常の、ちょっと胡散臭いが穏やかな顔からは想像がつかないほど剣呑な顔。
何処か寂しげな顔に、思わずどうしたんだ、と問いかけた所で距離を取ろうとしていたことに気づかれた。
市松と虎之助に袖を引かれて二人の側に連れて行かれ、罰の悪そうな顔をした紀之介は客人を迎えに行ってしまった。
「お前……男なのか?!」
間にあったであろう会話を聞き損ねていたために想像で埋めるしかないが、大方予想はつく。
「えぇ、まあ、はい……そうですね。」
何故どいつもこいつも男だと分からないんだ。
着替えを手伝ってくれた……というか強引に着飾った侍女の皆さんには本業では、となかなかに理由のわからない言葉をかけられ。
すでに疲弊しているなか様子を見に来たねね様には本格的にうちの娘にならない?と提案された。
私は男だ。
そして発端の三割くらいを担う小僧どもの第一声は、お前女の子だったの?という驚愕からの叫びであった。
そして恐る恐る本業は……と伺いを立てられた。
何だ本業って。
女装が本業としたら今までお前たちが一緒にいた男は何なのだ。
どいつもこいつも目が腐りすぎだ。
私にはどう見ても男の女装姿にしか見えない気がするのだが。
軽く化粧も施されたが、それで急に男が女に見えるわけもないだろうに。
表立ってため息をつくこともできず、不本意です、と言う顔を大男に向ければ。
ほー、と謎に感心しながら片手を伸ばしてむにむにと頰で遊ばれる。
「言われなきゃわからんな。」
言われんでもわかるでしょう、というか分かってください。
と言ってやりたいが多分相手はお偉いさんだ。
機嫌を損ねるわけにはいかない。
それはそれとしていい気はしない。
なされるがままにされながら、抗議を込めて見返せば、頰を軽くつまみながらまじまじと顔を見られた。
「しっかし見ねぇ顔だな。」
多分この人が今日会ったなかで一番まともな人かもしれない。
どんな人か知らないけれども。
「新入りか?」
そうです。
「まさかお前……あの」
「何をやっとるんじゃ兄者!」
あの、何だ?!
何かを言いかけた小六と呼ばれる男の後ろから呆れた声が響いた。
むにむにと頰を遊んでいた手が離れ、周囲の酔きっていない男どもが一斉に声のした方向に顔を向けた。
……この場合の兄者って誰に向けたものなんだ?
今更ながら同年代の者としか交流が無かったことを思い知りながら、顔を伺う。
秀吉様のご兄弟だな、うん。
似ている。
瓜二つ、とまではいかないが血縁のありそうな、しかし秀吉様より人の出来ていそうな顔だ。
などと若干失礼な思考に陥りかけていると、嬉しそうに秀吉が声を上げた。
「おお小一郎、まだおったんか!折角じゃ、お前も楽しんでいけ!」
合っていたらしい。良かった。
というか秀吉に兄弟がいたのか。
未だに知らないことばかりだな、などと考えていると、再び呆れた声が耳に届く。
「用があると言って読んだのは兄者じゃろうが。」
「というか何をやっとるんじゃ。信長様に知られたらまた叱られるぞ。」
そんな怒られるような事かな?
騒ぎすぎとは思うけど、と首をひねったあたりでとんでもない台詞を聞き取ってしまった。
まだ戦の決着はついとらんだろうが!
え?
どういう事だ。
取りあえず身近にいた虎之助をひっ捕まえた。
「戦って何だ?揃って済ませた初陣は終わっていなかったのか?」
何時だったか市松がしれっと言っていたことを思い出して聞いてみる。
「え……いや、その。実は何か長引いて一旦帰ってきただけで。」
まさか。
「終わってはいないのか……?」
そんな事あるのだろうか。
「戦自体は終わってないらしい。」
そんな時に何やってんだ!
作者「こんばんは、三軒はしごしても菱餅を買えなかった作者です。」
作者「今日はひな祭り、別名上巳の節句、桃の節句についてざっくりやっていきたいと思います。」
三上「おーい」
作者「一応前回予告したじゃないですか。」
三上「まさかあそこまで本格的とは思わないだろ普通!」
三成「……あの程度、まだ序の口だぞ?」
三上「ちょっと待てこれが最初で最後ではないのか?!」
作者「という訳で上巳の節句についてですが、もともと中国の方から伝わってきたとされています。」
三上「流すな!どうなんだ!」
作者「……ノーコメントです。」
三成「……時が来れば分かる。
もともと宮中で災厄を払うために行われていたものだ。」
作者「現代では飾っているひな人形は、もともと厄災を受ける身代わりのようなものでした。
ですので川に流したりしたそうですね。」
三成「一応戦国時代までは祓いとして行われる面が強かったりするのだが。」
作者「まあ色々あるのですよ、お酒を飲みたい大人の事情です。」
三上「それで良いのか……?」
作者「ほら、何かそんな歌があるじゃないですか、一月は正月で酒が飲めるぞ、二月は節分で酒が飲めるぞ、三月はひな祭りで酒が飲めるぞー見たいな。」
三上「そんな巫山戯た歌があるか!」
三成「余談だが現在の形になって入れたのは江戸時代の頃から出そうだ。
江戸時代は偉大だな。」
次回は1週間後を予定しております!




