この後2人揃って絞られました。
友人を庇って重体となった三上正成は、目を覚ますと戦国時代、後の石田三成である石田佐吉になっていた。
なんやかんやあって石田佐吉として三年ほど過ごし、転生者らしいことをしてみたりするなか、盗みを働いた子供と、それを追う大人たちと出会い――?
また短いです。
申し訳ない。
辺りの空気が凍りつく。
思わず背筋が凍るような、冷たい顔をした兄が子供を見下ろす。
ジリ、と大人たちが近づく。
俯いていた子供がちっ、と舌打ちする。
勢いよく私の手を振りほどこうとする、子供の力を利用して押さえつける。
カチャ、と子供の懐から音がする。
色めき立つ大人たちを抑え、どこからか取り出した縄で兄が子供を木に縛り付ける。
不自然に膨らんだ懐から、どう考えても子供が持つものではない、簪やら何やらが出てくる。
それぞれの持ち主が名乗りを上げる。
縛られたまま項垂れた子供はそれでも盗んでいない、の一点張りだった。
本人の言い分としては、そこのお兄さんたちが自分の意志でくれたものらしい、が。
おじ……お兄さんたちは当然ながら否定した。
何でも行き倒れたところを拾い、村で面倒を見ていたがある時から家の貴重品がなくなるようになったらしい。
盗賊にしては慎ましすぎるし、同じ村の人の仕業とは思えない。
首をひねっていると、子供が消えたことに奥さん連中気づいたらしい。
――黒だ。
もはや何処にも子供の味方はいない。
敏感に空気を察したのか、先ほどまでの口の硬さは何処へやら、必死に弁解を試みる子供。
「ち、違うの、これは本当に貰ったものなの!」
すかさず反論する大人たち。
「そんなわけねえだろうが!」
うん、私もそう思う。
というか素人目で見ても子供が持つものではないとわかる物を子供に渡す不用心な大人がいるだろうか。
普通に銅銭もあったし。
「本当だもん!私好きにしていいって言われたもん!」
顔を真っ赤にしながら子供が続ける。
うーん、400年後くらいにも同じ事を言いそうな人がいるな。
言ってる意味をわかる気はしないが。
「……はァ?」
心の声が聞こえたわけではないだろうが、話が通じない、という顔をするおじ……お兄さんたち。
その後もずっと同じ調子で弁解する子供を、無視して大人たちは話を進める事にしたようだ。
「ちょっと何を言っているのか俺らもわからねえが……」
頭が痛い、とでも言いたげに頭を抑えながら、代表して一人の男が前に出る。
「こいつは俺たちの村で起きたことだ。捕まえるのに協力してもらったことには感謝するが……」
こいつ、と縛られた子供を指差しながら男が言う。
と相手の台詞に被せるように、殊勝な顔で兄が口を開いた。
「えぇ、私もできることならそうしたいのですが。」
ちらりとこちらに目線を向けながら続ける。
「無関係とは言えなくなったのです。」
「……?」
何のことだ、と首をひねる大人たちに、境界を指さす。
「あれが境界です。越えてこちらの来られてしまっている以上、私たちも無関係とは言えないのです。」
少し険しい顔で驚く大人たちを見ながら、自分よりも高い位置にある殊勝な顔の腹黒さに舌を巻く。
多分そこまで計算していたのだろう。
……運のない人たちだ。
自分から首を突っ込もうとしていたことは棚に上げ、何やら手慣れた兄に対応を任せて成り行きを見守る。
「……しっかしなかぁ。俺たちもはいそうですか大人しく帰ります、とは言えないんだよ。」
男が苦虫を噛み潰したような顔で言う。
村ごとでの自治が基本のこの時代では、まぁそうだろう、が。
こちらとしても引き下がるわけには行かない。
「それは承知しています。ですが――」
「仮にこの子を連れ帰ったとして、末路は決まっているでしょう。いくら非があるとはいえ、子供です。寝覚めの一つや二つ悪くなるかもしれませんよ。」
若干脅すような台詞を受けて、男が考え込む。
やや間があって、再び口が開かれた。
「……。それで?かりに俺たちがこいつを置いて帰ったらあんたは子供だからと言って赦すのかい?」
「いいえ。ただ……こちらの決まりに則って罰するだけです。」
「……」
「それに……連れて帰る途中でまた逃亡を図る可能性がないわけではない。また煮え湯を飲まされることになっても宜しいのですか?」
「……まぁそうだな。俺たちとしても盗られたもんは基本戻ってきた訳だしな……」
どうする、と代表の男が後ろを振り返る。
若干苦い顔をしながらも、恐らく了承したのだろう、男たちは回収した貴重品の変わりに感謝と忠告を残して去っていった。
「……まぁ、何だ。お陰さんで俺達は助かったが……あんまりぬるい事やってると何時か痛い目見るぞ。」
「……えぇ。」
何故か私のほうを見て返事をした兄と、去ってゆく男たちを見送った。
影が地平線の向こうへ消えるほど彼らが去ってから、隣に立つ兄を見上げた。
「それで……どうするんです兄上。」
「どうするもこうするも連れて帰るしかないだろう。父上に報告しなければならないし。」
縛られている子供を木から外しながら聞く。
「無断でいろいろやっちゃった事については……」
「……」
「無言で目をそらすのはやめてください兄上!」
「……まぁ、そろそろ屋敷の人手が足りなくなってきているそうだからな。」
目線を戻さないまま話題も若干そらそうとする兄に、少し前言われた台詞を返した。
「こっち向きましょうよ兄上。」
絶妙に生温い目線には気づかないふりをして、子供を連れて帰途についた。
もうすぐ、日が暮れる。
「というか随分手慣れてません?」
道を戻りながら、一連を通して湧いた疑問をぶつける。
「まぁよくある事だからな。」
何でもないようにさらりと言われて驚いてしまった。
「えっ。」
続く言葉に新たな疑問がわいた。
「お前が知らなかっただけで。」
新たに湧いた疑問をぶつければ、
「……ひょっとして私が関わると自体が悪化すると思って」
「ない。そういう訳では無い。ただ私のほうが慣れておいたほうがいいから私が関わっているだけだ。」
凄まじい勢いで否定された。
絶対嘘だ。
主に前半部分。
と思ったら声に出ていたらしい。
「……嘘だ。」
「本当だよ。」
嘘だ。
絶対思ってる。
見慣れた家の影が近づくなか、他愛もない応酬を繰り返す。
あと何度出来るかはわからない応酬を。
作者『えー、どうも皆さんこんばんは、日付変更線に負けそうな作者です。今回は風邪を引きかけてる気がするのでリモートで参加しています。』
三上「カッスカスやないか。」
三成「治ったと言っていなかったか?」
作者『いやぁ治ったと思ったら頭痛が酷くてですね、喉も痛くなってまいりまして。今アロマ焚いてます。』
三上「無駄に洒落てやがる。」
三成「季節柄体調が悪化しやすくなるからな……充分気をつけるようにしなくては。」
作者『まぁそういうわけで』
三上「どういう訳だ」
作者『今回は特に本編とは関係ないのですが豆知識のようなものを一つ。』
三上「関係ないのか」
作者『まあまあ。今回の豆知識は蘭奢待について?です』
三上「なぜに疑問形」
作者『蘭奢待という有名なお香があるのですが、知っていますか?』
三上「……いや?」
三成「天下第一と謳われる黄熟香だ。かつて織田信長公が切り取ったことが有名だな。」
三上「嫌に詳しいな。」
三成「散々聞かされたからな。」
作者『つい先日、奈良で開催された正倉院展で展示され、またその少し前には東京だったかでその香りの再現もしていた事で、一時期話題になりました。』
作者『そんな蘭奢待ですが、この香木を保管しているお寺の名前が隠されているそうです。』
三上「……え?」
作者『私もつい先日知ったのですが。』
三上「つい先日かい!で、隠れてるって何処に。」
三成「……案外分かりやすいと思うが。」
三上「えぇ……」
作者『正解は、東大寺、です。』
三上「……ん?あぁ、あー言われてみれば。」
作者『蘭に東、奢に大、待に寺。ですね。』
三上「……いやトンチかいっ!」
作者『日本人の血でしょうね。という訳で短いですが今回はここまで。次は土日に投稿予定です。次回をもって第一章は完結、来月からは第二章を始める予定です。これからもどうかよろしくお願いします。』




