ちょっと腹黒いにも程がありませんかね
友人を庇って重体となった三上正成は、目を覚ますと戦国時代、のちの石田三成である石田佐吉となっていた。
なんやかんやあって石田佐吉となってから三年経ち、身の振り方を考え始める佐吉だったが―—?
また短いです。
申し訳ありません。
事件は起きた。
昼下がり、平和な村で。
何故だか村を越えて広がった諸々の技術について様子を見に行く途中、切り裂くような悲鳴が辺り一面に響く。
ハッと息を呑み、声のするほうへ視線を向ければ、精一杯走っている子供の姿。
さらに奥を見れば、子供を追う幾人かの大人たちが見えた。
慌てて首を突っ込もうとしたところで、後ろから伸ばされた腕に襟をつかまれた。
「佐吉?」
振り返れば見覚えしかない、いつぞやの笑顔があった。
無言で圧をかけてくる兄に、すごすごと諦めて首をもどした。
「首を突っ込むなっていたはずだけど。」
いいましたけど。
顔で文句を言いながら謝る。
「……すみません。」
ぽんぽん、と軽く頭を撫でられる。
「わかればよろしい。」
それはそれとして、見捨てるわけには行かないだろう。
というかもうすぐ境界を越えられる。
無関係とは言えなくなる。
そう問えば、お前が行ってどうにかなる問題ではない、と返されてしまった。
たしかにそうだが。
父を呼ぶ暇などなさそうだ。
子どもが足を縺れそうにさせながら走ってくる。
そちらを見やりながら問えば、短くそうだな、と返された。
「代わりに……私が行く。」
いい終えるなりすたすたと一直線に向かっていく。
「……どの口が言ってるんだ!」
思わずツッコミながら追いかける。
子どもがこちら側に踏み込んだのを確認した兄が、一瞬こちらを振り返る。
歩調を速めて大人の元へ向かう兄の意図をくんで、子供に近づく。
走って息の上がっている子供を連れてさがる。
荒れた息が落ち着くのを待って、様子を聞こうとした、その時。
「だから、悪いのはそっちのガキだって言ってんだろ!」
辺りに響くほどの大声で、後ろから迫っている男が叫ぶ。
え、と思わずそちらへ目線を向ける。
と、びく、と体を縮めた子供が息の整いきらぬうちにまた、走り出そうとする。
待った、と止めようとした私の目が、子供の懐から除いた物を見つける。
……これは。思ったより厄介なことに首を突っ込んだようだ。
懲りない自分に呆れながら、子供の腕を掴んで留め置く。
子供とは別の荒い息を吐く幾人かの大人が、兄の後ろについて近づく。
忌々しげに子供を見下ろす大人たちを制しながら、兄がしゃがみ込む。
私に腕を掴まれたままの子供に問う。
「どうしてこの人たちから逃げていたのかな。」
「だからっ!そのガキが……」
憤懣やる方ないといった様子の、大人たちのリーダーと思しき男が声を荒げる。
まぁまぁと宥めながら、子供の返答をまつ。
「……何か言ってくれないと、助けることも出来ない」
「っ私!何もしてないからっ」
余りにも口を開こうとしない子供に、つい急かすような言葉をかけてしまった。
途端に、甲高く弁明をして私の手を振りほどこうとする。
慌てて逃げないように掴む力を強くすると、足を蹴られた。
「痛いって!」
キッと下から睨めつけられる。
「……ごめん。」
抗議にしてはやりすぎな気がする。
とは言っても力を緩めればきっと逃げるだろう。
どうしたものかと悩んでいると、正面の大人が声を上げて笑った。
「っはは、甘えな嬢ちゃん。」
……嬢ちゃん?
誰のことだ、と首を傾げているとこちらの疑問に気づいていないのだろう男が続ける。
「このガキは盗っ人だ、加減なんざ必要ねえよ。」
「私盗んでなんかないもん!」
男の台詞に、またも甲高く反論する子ども。
呆れたような、困ったような顔で兄が話しかける。
「それじゃあどうして逃げていたのかな。このおじさんたちは君に物を盗まれたから探して追っていたと言っているんだけど。」
「おじ……っ!」
わけのわからないところでダメージを受けたおじさんたちを前に、子どもはただ同じ言葉を繰り返す。
「私盗んでなんか」
「それじゃあどうして逃げていたのかな。」
対する兄も、口調だけを変えて同じことを繰り返す。
「何も盗んでいないならどうしてこのおじさんたちは君を追っているのかな。」
「知らないっ」
「……人違いとでも言うつもりかな。」
「ぇ、あ、うん、そう、そうだよ、人違い、人違いだって!ほら、はなs……」
兄の撒いたエサにまんまと食いついてしまった子どもの眼前に。
若干冷たい目をした兄が白い小さな巾着を突きつける。
「それなら……これは何かな。」
軽く巾着が振られる。
ちゃりちゃり、と金属同士が擦れる音がする。
あ、と小さく大人の一人が声を上げる。
黙りこくった子供から大人たちへ目線を向けると、
「確認しますか?」
と巾着を差し出した。
慌てて腕を伸ばし、止めようとする子供を強く引き止める。
確固たる意志を持って。
「……これは俺のやつだ。間違いねえ。」
巾着を開け、中身を改めていた男が呟く。
唇を噛み、そっぽを向く子供を見ながら、兄が口を開く。
「これはね、君がこちらに走ってくる途中で落としたものだ。それなのに……どうしてこの人のものが出てくるのかな。」
目が笑ってない。
「違うもん……」
反論が弱まる。
「見間違いだよ、きっとその人が落としたんだよ」
声は弱くなったが、相変わらず弁明は続けるらしい。
呆れたように一つ息を吐いた兄が、種明かしをする。
「残念だよ。大人しく認めてくれたら良かったのに。」
「……ぇ。」
「これは君が持っていたもので間違いないんだよ。」
これ、のところで男が持つ巾着を指差しながら、兄が言った。
「……嘘!だって私、」
「うん、そうだね。君が落としたというのは嘘だ。」
へ、という驚き方をしたのは後ろの大人たち。
だったら、と弁明を続けようとする子供を遮って、兄は続けた。
「なぜなら、あの巾着は今さっき私が君の懐から抜き取ったものだからね。」
こいつやったな、という顔をする大人たち、慌てて懐を確認してから悔しげに兄を睨む子供。
顔色を変えずに兄が続ける。
「だからこれは君が持っていたもので間違いないんだ。」
腹痛につき今回もまたお休みします。
申し訳ありません。




