あおとあか
ずっと悩んでいた作品名を変更しました。
引き続きご愛読いただければ幸いです。
「ご機嫌だね、そんな顔も可愛い」
「ぅうむううう!」
気づいたときには時すでに遅し。
わたしの両ほっぺは、変態王子の片手で潰されていた。
油断してたことは認めよう。
お肉のことで頭がいっぱいなのは認めよう。
だけどーー
わたしは、勢いよくその手をパチンと振り払い、飛び退る。
この超絶かわいい身体を何だと思ってるの!
「っさわらないで!」
「はははっ、可愛いね。」
全身の毛を逆立ててフシャーする猫の真似をするわたしに、変態王子は可愛い可愛いと連呼する。
言っておくけど、わたしが可愛いのは当たり前だからね。
もっと言ってくれていいからね。
でも、それはそれ。これはこれ。
この可愛い主に触ることは、許さないんだから。
ほっぺを膨らませて睨んでいると、変態王子が思い出したように掌を拳で打った。
「あぁ、お肉が欲しいんだったね。もうこれしか残っていないんだけど」
そう言って、変態王子が部屋の角にあるカーテンを捲る。
すると、オブジェのような巨大な塊が鎮座していた。
わたしは、居ても立っても居られず、足早に駆け寄る。
「うひゃあ!おっきい!!」
わたしの顔の10倍はあるじゃん!
鮮度も保っているみたいだし、持って帰りたい!!
興奮のあまり舐め回すように見るミアだが『凍っていること』に何の疑問も抱かない。
水魔法レベル4以上でないと、発動しない氷魔法。
それを成したのはギルバードだということを、ミアはまだ知らない。
はぁ〜やっぱり今食べたい!今すぐ食べたい!
…うん、焼こう!アル兄がいるし、お咎めなんてないよね!
満面の笑みで振り返ったところで、ハッとした。
初めて会ったときは、瞳の色まで変えていたらしい。
透き通る碧にわたしが映る。
「うわぁ!すてきなひとみ!ほうせきみたい!」
率直に口に出したら、変態王子が、ぐるんと勢いよく首を後ろに回した。
首、もげてない?
不思議に思い、変態王子の正面に回ると、今度は秒で体ごと背を向けられた。
なんだか様子がおかしい。
わたしは、変態王子の脚に纏わりつき、その瞳を覗こうと試みるもーー
「み、み、見ないで…」
ドキンッ。
思わず胸が弾んだ。
「……。」
いやいや、なんだドキンって。なんでだドキンって!
両の手で顔の紅を隠す変態王子にビックリしただけだから!ただそれだけなんだから!!
わたしは、ぶんぶんと頭を振り、急いで踵を返した。
「お、お、お肉を切っておいて!みんなを呼んでくる!」
ほっぺを包む両手がなんだか熱い。
ミアは、幼児を装う言葉をすっかり忘れたのだった。
♢
あぁ、閉じ込めたい。
ずっと僕だけを見るように。
ずっと僕だけしか見えないように。
なんて、ドロドロした感情を渦巻いていたら、お肉に夢中だったミアが急に振り向いた。
溢れ落ちそうなピンクの瞳がさらに大きくなって、
王族はみな金眼なのに、母上そっくりのこの碧眼を素敵だと言ってくれた。
宝石みたいだと言ってくれた。
恋をしただけなのに、言葉の重みが全然違う。
胸にストンと落ちて、気分がスッとして、コンプレックスがたった一言で変わった。
こんなに嬉しかったことは、今までにない。
感激のあまり抱きしめたいって気持ちが沸いて、そんな邪な気持ちになった自分が恥ずかしくて、この顔を見られたくなくて、火照った顔を必死に隠す。
恋する相手には、常にカッコつけたいし、紳士だって思って欲しい。
そうだ、お礼に僕の瞳と同じ碧の何かをプレゼントしてあげよう。
ミアはまだ小さいから、ペンダントのほうがいいかな。
ジンがベル嬢のリボンを自慢してきた気持ちが、今ならよくわかる。
お互いの瞳の色で指輪を作って、交換するのもいいね。
はっ!
まずは、腕のいい鍛冶職人を探さなくっちゃ!
気持ちすら伝えていないのに、すでに想い合っている前提で妄想が膨らむギルバードなのだった。
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