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神様と作ろう新世界 〜ケモミミ世界で純愛ラブコメ異世界リアルサバイバル〜  作者: 河合 翔太
第1章 改訂前作品(改訂終わったら消します)
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第83話 休みらしくない休みと鈴さん鍛冶道具

【異世界生活 66日 4:00】


「起きてきたね、流司りゅうじ。本格的に日が昇る前に海の家つくるよ」

俺が明日乃あすのと一緒に起きてくると、先に起きていたすずさんがそう言う。


「おはよう、すずさん、みんな。どうしたの? そんなに慌てて」

明日乃あすのが不思議そうにすずさんにそう聞く。


「今日はみんなで海水浴するんでしょ? 日が昇って暑くなる前に流司りゅうじと海岸に日陰を作ろうかなって」

すずがそう言って待てないように立ち上がる。


すずさん、竹、全部使っちゃわないでね。琉生るうもニワトリさんの庭広げたいからね」

琉生るうが少し不満そうに言う。


「わかってるよ。全部は使わないし、明日あたり流司りゅうじと竹の補充いってくるしさ」

すずさんが琉生るうに申し訳なさそうな顔でそう言う。


「オレ達が竹採ってくる」

レオがそう言い、ココとシロも頷く。


「お前たちもたまには休めよ。俺がブラック企業の社長か? って責められそうだしな」

俺がそう言うが、眷属達にはブラック企業の意味は分からなかったようだ。

 みんなも眷属達に同情するように休め休めと同情する。


「私が休むと、麗美れいみに絡まれるだけだから、仕事していた方が気も楽にゃん」

ココがそう言う。

 なんか別の意味で可哀想になってくる。

 レオも頷く。レオは多分、一角いずみのおもちゃになるのだろう。


「じゃあ、私はパパのお仕事が終わったらお休みするね」

シロは逆に俺に絡む気満々だ。行動が主の明日乃あすのの魂に引っ張られているのだろうか?


 そんな感じでとりあえず、俺とすずさんは朝飯も食べずに海岸に海水浴用の小屋を作る作業に。眷属達は竹を切りに行く。

 琉生るうはニワトリの世話と畑仕事を、明日乃あすのは朝食の下ごしらえをするらしい。

 一角いずみ真望まもは休みと聞いて寝坊することに決めたのだろう起きてきていない。

 

「砂に竹の柱を立てても倒れちゃうだろうから、石を集めてきて柱のまわりに埋めよう」

すずさんはそう言って、まずは背負子を背負って河原で石を拾ってくる作業を始める。俺もそれに従う。


 海岸に石を持って着くと、

「あれ? 海の家作ってたんじゃないの? せっかく手伝いに来たのに」

麗美れいみさんと一角いずみが遅れて起きてきて俺達を追いかけてきたようだ。竹を持ってきてくれたらしい。


「ちょうどいいところにきてくれたよ。いまから、砂浜を深く掘って竹の柱を立てて、岩を埋めて固定するんだ。変幻自在の武器をシャベルにしてどんどん砂浜を掘ってくれると助かるよ」

すずさんがそう言う。

 とりあえず、俺の変幻自在の武器はすずさんに貸して、すずさんと麗美れいみさんが砂浜を掘って海の家の柱を立てる作業、俺と一角いずみは拠点から竹を運ぶ作業に専念する。

 

流司りゅうじ、海の家づくりが終わって、朝食を食べたら、私に付き合いなさいよね。私、午前中でかるくはた織り機の試運転してみたいのよ。流司りゅうじは試運転立ち合いたかったでしょ?」

拠点に竹を取りに行く途中、遅く起きてきた真望まもが俺にそう声をかけてくる。


「休みの日まで、麻布作りしたら休みにならないだろ?」

俺はそう言って心配する。


「別に、手芸や裁縫は私の趣味みたいなものだし、元の世界は、逆に休みの日に趣味で手芸や裁縫やってたんだし、おかしくなくない?」

真望まもがそう言うが、意味不明だ。


 真望まもは手芸や裁縫が趣味だし、琉生るうは農業や動物を育てるのが趣味だし、すずさんももの作りは好きだしな。

 こっちの世界と向こうの世界の生活が違いすぎて、仕事と趣味の境界線がよく分からなくなってきているな。

 まあ、本人たちがやって楽しいなら任せればいいか。


「それに、午後からは海水浴に参加するし。流司りゅうじだって、私の水着姿みたいでしょ?」

真望まもがそう言って少し照れる。

 ああ、そういえば、みんな水着になるのか。ちょっと期待してしまう。


「もう、流司りゅうじのエッチ。顔がエロくなってる」

真望まもがそう言って俺を冷やかすが、エロいことを言い出したのが真望まもだろ? って突っ込み返したくなったが、避けておく。


 というか、彼女たちの中では普段下着として布製の水着を着ているという設定になっているらしい。

 下着と水着の境界線も良く分からなくなっていた。

 本人たちが水着だと言えば水着なのだ。そう言うことにしておこう。俺の履いている布製のトランクスも水着らしいしな。 


 そんな感じで、みんなで協力して作ったおかげで砂浜に少し大き目の小屋が立つ。日差しを避けるためのテントやパラソル替わりの小屋だ。

 床もちゃんと竹でできていて、毛皮の毛布をひけばゴロゴロできそうだ。


すずさん、今から真望まもがはた織機の試運転するらしいんだけど、一緒に来る?」

俺は小屋作りが一段落したのですずさんにそう聞く。


「ああ、私が作ったものだし、ちゃんと動くか興味あるし、参加するよ。麗美れいみさんと一角いずみはどうする?」

すずさんはそう答え、麗美れいみさんや一角いずみも誘う。


「ああ、私たちは、朝食食べたら岩場で貝拾いをするわ。お昼は貝と魚でバーベキューの予定だし」

麗美れいみさんがそう答え、一角いずみも頷く。


 とりあえず、拠点に帰ると、明日乃あすのが朝食の下ごしらえをして待っていた。

 それと、熊の油を煮る作業をしてくれていたようだ。


「みんな、海の家できたみたいだね。遅くなったけど朝ごはん食べるでしょ?」

そう言って、朝食を作り出す明日乃あすの

 真望まもも俺も熊の油の事をすっかり忘れていた。


「ごめんね、明日乃あすのちゃん。熊の油作らせちゃってたんだね」

真望まもがそう言って謝る。


「どうするんだ、はた織機の試運転は辞めて熊の油づくりをするか?」

俺は気になって真望まもにそう聞く。


「いいよ、真望まもちゃん。熊の油は煮るだけだし、私がやっておくから、はた織機の試運転やってみなよ。楽しみにしてるんでしょ?」

明日乃あすのがそう言ってくれるので、俺と真望まもすずさんは、はた織り機の試運転に専念できることになった。

 

「おなか減ったねぇ~」

俺達の声が聞こえたのか、そう言って琉生るうもニワトリ小屋から帰ってくる。


 朝食は明日乃あすのの新メニュークマ肉と大根の煮物。ネギと大根で熊肉の臭みが消えていて、大根の苦みと熊肉の脂の甘味が絶妙にマッチして美味しかった。

 まあ、明日乃あすのは料理が上手いからバランスがとれているのだろう。同じ材料で料理が苦手な真望まもが作ったらこうはいかなかったかもしれない。


「大根、美味いな。ちょっとよく煮ただいこんがおでんの大根みたいで懐かしい気持ちになった」

一角いずみがそう言って、熊の出汁が少し染み込んだ大根をしみじみと味わっている。

 猪肉だったら豚バラ大根みたいでさらに美味しかったかもしれないが、熊肉でも十分旨かった。


 遅い朝食後、明日乃あすのは熊の脂身を煮る作業、俺と真望まもすずさんは、はた織機の試運転を、一角いずみ麗美れいみさんは海水浴がてら岩場で貝拾いを始める。琉生るうは畑作業とニワトリの世話の続きをするらしい。

 うん、休みだと言っているのに誰も休んでいる雰囲気がない。無人島の日常だ。


 とりあえず、俺とすずさんは真望まものツリーハウス兼、裁縫工房にお邪魔する。


「なんかおしゃれな部屋だな」

俺は初めて入った真望まもの部屋をきょろきょろと観察してしまう。

 ダンジョンで拾った3色のウサギの毛皮を使った毛布やタペストリーで部屋を飾っていたり、いつの間にか作ったウサギの皮製のぬいぐるみがあったりして女の子らしい部屋になっていた。


「結構やりたい放題ね」

すずさんが呆れ顔でそう言う。


「もう! いいでしょ? 暇な時間で、趣味で作ったものなんだし。それと、流司りゅうじ、女の子の部屋じろじろ観察しない」

真望まもが恥ずかしそうにそう言う。


「悪い悪い。まあ、手芸が好きな女の子らしい可愛い部屋だった」

俺はそう感想を漏らす。

 異世界で無人島の中でも、真望まもは色々工夫して自分のスペースを作ってたんだな。


 真望まものプライベートスペースの反対側にはた織機が設置されている。

 糸車をこのツリーハウスの上まで上げる作業もしないといけないな。いまだに糸車は鍛冶工房に置かれている。


「じゃあ、さっそく試運転を始めるわよ」

真望まもがそう言ってはた織機を動かすための準備を始める。なんか楽しそうだ。

 

 そして、実際作業をしてみると地味な作業だった。

 ひたすら縦糸を300本、青銅製の小さなリングに通して、1ミリ間隔の竹ひごの間も通して、ローター、できた布を巻き上げる丸い木の棒に結び付けていく。

 地味な作業な上に糸を通す場所を間違えたり入れ違ったりしてはダメという慎重さも必要な作業だった。


「これ、今まで通り、木枠に縦糸張って手作業で横糸をジグザク通していく作り方の方が楽なんじゃないか?」

俺は地道な準備にそう言っていちゃもんをつける。


「絶対、機織り機の方が早いんだって。上糸と下糸をワンタッチで入れ替えられて、横糸をまっすぐ通すだけで布が織れていくんだよ? 作業効率は格段に上がるし、大きな布も作れるようになるわ」

真望まもがそう言って俺の意見を否定する。

 下準備は大変だが、それさえ終わればそこからは楽になるそうだ。


 俺はそれを信じて、上糸と下糸を入れ替える装置、糸に丸い金具がついたパーツに1本1本、糸を通していく。それが300本、3人で割っても1人100本だ。

 すずさんは自分が作った作品が動くのが楽しみのようで笑顔でこの単純作業を進めていく。

 そして何とか縦糸300本の準備ができる。


「さあ、それじゃあ、本格的に動かすわよ」

真望まもがそう言って、丸椅子に座り、上糸と下糸を入れ替える足踏みペダルを踏む。確かに、一瞬で二組の縦糸の上下が入れ替わる。


「いい感じだね」

すずさんもその動きに満足そうにそう漏らす。


「じゃあ、行くわよ」

真望まもはそう言って、ペダルを踏んで上糸と下糸の間に空間を作り、そこに横糸を通す。

 そしてピンと張ると、竹ひごがいっぱいついた格子上のパーツを動かして、「とんとん」と横糸を手前に寄せる。

 その後、足踏みペダルを右足で踏んで、左足はそれに引っ張られるように持ち上げられる。そして入れ替わる縦糸の上下。

 2組の縦糸同士が上下入れ替わったあと、さっきと同じように今度は反対側から横糸を通していく、

 この繰り返しで、ほんの指の太さほどの布だが出来上がる。


 すずさんや真望まもが事前に言っていた通り布に使う糸は太めで布の目は少し荒いがちゃんとした布ができていく。

 しかも、作っているときはよく分からなかった構造もそれぞれ上手いこと機能して布を作っているのがわかる。


「はた織り機ってやつはすごいな」

俺は改めてすずさんが作った道具に感心する。


「でしょ? これで布作るペースはかなり上がるわ」

真望まもが嬉しそうにそう言う。


「もう少し改良して、もう少し布の目が細かいものが作れるようにしたいのよね」

すずさんが難しい顔をしてそう言う。


「ここの部分よね。竹ひごじゃ限界あるもんね」

真望まもがそう言って、俺が作った、横糸をとんとん叩いて手前に押し込み布にしていく櫛のお化けみたいな部分を指し示す。


「火箸と金床、金槌が手に入れば青銅の薄い金属板が作れるようになるからそうなったら改良かな」

すずさんが真望まもにそう言う。


「そういえば、お祈りポイント貯まったんじゃない?」

真望まもがそう言う。


「79750ポイントもあるじゃない!! あと250ポイントで、鍛冶道具が2つもらえる」

すずさんが興奮する。


「そりゃ、70000ポイント貯めるまで鍛冶道具はお預けって話だったしな。お祈りポイントゼロになって魔法使えなくなるとヤバいし」

俺はそう言う約束だったことを再確認させる。


「ね、ねえ。今日のお祈りポイントで80000ポイント越えるから、火箸と金床交換できないかな? 金槌はとりあえず青銅の鋳物で我慢するから、2つ貰ったらダメかな? はた織り機が大分いい物になると思うよ」

すずさんが俺にそうお願いしてくる。

 はた織機が改良されると聞いて真望まもも少し乗り気になる。


「しかも、その2つがあれば、変幻自在の武器を金槌にして自分で鋼鉄製の金槌とかも作れちゃうから40000ポイントのお祈りポイント節約になるよ?」

すずさんが畳みかけてくる。


「他のメンバーの許可がもらえたらな。特に、一角いずみあたりは魔物狩りが遅れてるから、お祈りポイントにはシビアだぞ」

俺はすずさんにそう答える。


「だったらそれこそ、金槌は自分で作らないと。金槌を自分で作れれば1週間早く魔物狩りを再開できるし、いいことだらけだ」

すずさんの鼻息が少し荒くなってきた。

 まあ、そのあたりの交渉はすずさんに任せよう。


 とりあえず、真望まももはた織り体験をして満足したようなのでツリーハウスを下りて、熊の脂身を煮ていた明日乃あすのと合流する。

 そして、すずさんが明日乃あすのの説得を始め、明日乃あすのが根負けして鍛冶道具の件を承諾させられた。


明日乃あすの、昼御飯はどうする? なんか、一角いずみ麗美れいみさんが貝と魚をとってきてバーベキューするって言ってたけど」

俺は気になって聞いてみる。


「熊の油を煮詰める作業、もう少しかかりそうだし、誰か火の番しないといけないし困ったね」

明日乃あすのが悩む。

  

「私が代わるわ。料理しなくちゃいけないんでしょ? レオ君達来たら代わってもらうし」

真望まもがそう言う。


「レオ達も休ませたいんだけどな」

俺はそう言って笑う。


「レオは働きたがるし、ココちゃんは麗美れいみさんの猫可愛がりから逃げてるからね」

明日乃あすのがしょうがないなって顔で笑う。


 とりあえず、熊の油は真望まもに任せて、明日乃あすのはバーベキュー用に切った野菜と火種代わりの火のついた薪を、俺は鉄板代わりの平らな石を、すずさんは薪を持って、海岸に向かう。


「余裕ができたら、青銅で鉄板でも作るよ」

すずさんが俺の運ぶ平らな石を運びながらそう言う。


 とりあえず、海の家のそばにたき火を起こし、

 平らな石を温める。


「私はちょっと海に入ってくるよ。水浴びしてないし、匂ったらちょっと恥ずかしいしね」

すずさんは作業が終わるとそう言って、服を脱ぎ、水着姿になって海岸に向かう。

 俺も実は結構水浴びしていないことに気づき、明日乃あすのに目配せして、服を脱ぐとパンツ一丁で俺も海に向かう。真望まも曰く海パン兼下着らしいが、どう見てもただの白いトランクスだ。


 海で体を洗って匂いが気にならなくなったのか、すずさんにちょっかいを出される。横から海水をかけられた。俺もすずさんに海水をかけ返し、海水のかけっこになる。

 

すずさんだけ、ズルいよ」

明日乃あすのもしびれを切らして水着姿で海に飛び込んでくる。

 3人で海水をかけあったり、泳いだりして海水浴を楽しむ。


 存分に海を楽しんだ後、海の家に戻ると、シロが戻ってきていた。


「パパ、ママ、ただいま」

シロがそう言って俺に抱きついてくる。

 真望まも琉生るうと一緒に海岸に来たようだ。


「なんか、流司りゅうじ達だけズルい」

真望まもがそう言って少しふくれる。


「竹は沢山切れたか?」

俺はシロにそう聞いて頭を撫でる。


「レオやココたちも頑張ったみたいで竹をいっぱい持ってきてくれたよ」

琉生るうが嬉しそうにそう言う。


「あと、熊の油の番もしてくれて、油を煮終わって冷めたら呼びに来てくれるって」

真望まもが少し申し訳なさそうにそう言う。


 眷属達は献身的に無償で一生懸命働いてくれる故に扱いが難しいな。

 人より休まなくていいし、人より食べなくていい、感情も半分、精霊と人間の中間、見かけも動物と人間の中間という存在がお互い理解できない障害になっているのかもな。

 俺は比較的素直なシロを膝に座らせて頭を撫でる。


「あとで、レオは私が甘やかしてあげるわね」

明日乃あすのが俺の表情を見て気持ちが伝わったのかそう言う。

 一角いずみ麗美れいみさんではやりすぎなところがあるからな。


 真望まも琉生るうも水着になって海に向かう。二人で遊ぶようだ。


「お、もう準備できてるのか? 今日も大量だぞ」

そう言って二人と入れ替えに一角いずみが大量の貝と魚を持って帰ってくる。麗美れいみさんもたくさんの貝が入った土器を抱えている。


一角いずみ、魚をとりすぎだ。今日は食べる分だけでいいんだぞ?」

俺は一角いずみの抱えている魚の多さに呆れる。


「とりあえず、食べきらなそうな魚は塩水に浸けて干さないとね」

明日乃あすのがそう言って笑う。

 俺と明日乃あすのは急いで一角いずみ達がとってきた魚を捌く。

 一角いずみは採ってきたアワビやサザエやカキを適当に鉄板代わりの平らな石にぶちまける。


「こら!! 一角いずみ! 貝は毒がないか鑑定してから焼かないとあたるだろ! あと貝は焼く向きとか順番が決まってるんだからな」

俺はそう言って一角いずみを叱る。

 岩ガキはものによっては貝毒、細菌を含んでいることがあるし、他の貝だって貝毒はゼロじゃない。そして、焼く向きを間違えると折角のエキスの詰まった煮汁がこぼれてしまうのだ。


 俺は魚を捌くのを明日乃あすのに任せて、一角いずみがぶちまけた貝を綺麗に並べ直す。

一応鑑定で毒がないか確認をしながら。


「面倒臭い奴だな。とりあえず、土器に海水くんでくるぞ」

一角いずみはそう言って、さっきまで貝が入っていて、今は空になった土器を持って海岸に向かう。


 すずさんは何か作りたいらしく、拠点に竹を取りに行く。

 麗美れいみさんは貝拾いで疲れたのか、小屋に入ってゴロゴロしている。


 なんかみんなフリーダムだな。まあ、休日だしいいか。

 俺はそう思いながら貝を焼いたり、捌いた魚にくしを通したり、たき火で焼く作業をする。


 シロはさっきから俺にひっついて離れないが、それで、日ごろの疲れが解消されるならまあ、いいだろう。俺はシロを背中に乗せたまま料理を続ける。

 明日乃あすのも余った魚を海水に浸け終わったみたいで、切ったナスやピーマンやタマネギ、そしてキャベツを熱した石の空いたスペースで焼いていく。

 一角いずみは飽きたのか、琉生るう真望まもの方に遊びに行ってしまう。


「なんか、明日乃あすのも料理とか働かせてばかりで悪いな」

俺は明日乃あすのに謝る。


「何言ってるの? それを言ったらりゅう君だって一緒じゃない」

明日乃あすのはそう言って笑う。

 まあ、言われてみるとそうだな。


 貝や魚が焼けたので、琉生るう真望まも一角いずみを呼び戻し、みんなでお昼ご飯を食べる。アワビやカキ、サザエといった、元の世界では高級食材を腹いっぱい食べる。


 そして、午後からはみんな自由に休日を楽しんでもらう。

 海の家でゴロゴロしてもよし、海に入って泳ぐもよし、自分の好きな事をしてもらう。

 なんか、すずさんは竹でビーチベッドを作っているらしいが、できるころには海水浴が半分終わっているんじゃないか? 俺はそう思ったが、本人が楽しそうに作っているので言わないでおこう。


 途中でレオが熊の油が冷めたと呼びに来てくれたので、俺と明日乃あすの真望まもで拠点に戻り、熊の油を布で濾す作業をする。油が濾し終えたら、粗熱をとって、固めて、不純物をとって、油の部分を水でもう一度煮る。この繰り返しだ。

 俺と真望まもで油を処理し、明日乃あすのはレオを甘やかす役だ。たまには甘やかしてやらないとな。レオは明日乃あすのには素直だしな。

 ココも寂しくなったのか俺の膝に座る。まあ、あんまりしつこくすると嫌がられそうなのでココに任せる感じで放置する。まあ、猫はこのくらいの方がいいのかもな。


 そんな感じで、レオとココも甘やかし、油を濾す作業を終えて、海岸に戻る。


 俺は琉生るう真望まもともうひと泳ぎする。明日乃あすのは小屋でゆっくりするようだ。うん、真望まもの狐のしっぽは水にぬれると残念な感じ満載だ。


真望まも、お前の尻尾、濡れるとダメダメだな」

俺は真望まもの濡れぼそった尻尾を見ながらそう言う。


「私だってわかっているわよ。そう思うなら見ないでよ」

真望まもが恥ずかしそうに尻尾を隠す。

 そして、琉生るうのふわふわのリスの尻尾も水に濡れると残念な感じだった。

 ふわふわな尻尾は水に濡れてはいけない。俺は新たに学んだ。


【異世界生活 66日 15:00】


 とりあえず、15時くらいで海水浴は終了。あとかたづけをして拠点に戻り、交代で水浴びに行く。海水で体がべとべとだしな。

 俺と明日乃あすのは拠点で留守番して、他のメンバーは一角いずみに水浴びに行く。レオとココは強制連行されていった。シロは琉生るうとノリノリで水浴びに行く。



「なんか、俺と明日乃あすのが留守番させられたのって作為的だよな?」

俺は明日乃あすのにそう言ってちょっと照れる。


「多分、みんな、変に気を使ってるよね?」

明日乃あすのも二人っきりになって照れながら言う。


「シロも別行動って時点でそうだろうな」

俺はそう答える。シロまで気を使ってくれているって事か。


 そんな感じで、少し変な空気が流れつつ、塩水に浸けた魚を一夜干し籠で干す作業をしながら明日乃あすのと会話を楽しみ、1時間半ほどで、みんなが帰ってくる。

 入れ替わりで、俺と明日乃あすのが水浴びに行く。明らかに変な、生暖かい視線を感じる。


 まあ、久しぶりの二人きりだし、会話を楽しみながら泉に向かう。


「ね、今日は二人っきりだし、一緒に水浴びしよ?」

泉に着いたところで、明日乃あすのが恥ずかしそうにそう言う。


「そうだな。たまにはいいな」

俺は断るのも何なので、明日乃あすのの誘いを受ける。

 久しぶりにみる、明日乃あすのの生まれたままの姿。やっぱりきれいだ。


「もう、りゅう君のエッチ。見過ぎだよ」

明日乃あすのがそう言って、胸を隠すように俺に抱き着く。

 見えなくはなったけど、明日乃あすのの双丘が俺の胸に触れてさらにエッチな気分になる。

 

「ねえ、りゅう君」

明日乃あすのが潤んだ上目遣いで俺を見つめ、そして目をつむる。

 俺は明日乃あすのの可愛らしい唇に吸い寄せられてしまう。



☆☆☆☆☆☆



【異世界生活 66日 18:00】


 俺達は、暗くなるギリギリくらいに拠点に帰りつく。

 なんか、みんなが、微妙に目をそらし、会話も少ない。なんか微妙な空気だ。みんな気を使いすぎだろ? 俺も明日乃あすのも逆に恥ずかしくなってしまう。


流司りゅうじお兄ちゃん、明日乃あすのお姉ちゃん、夕食作っておいたよ」

そんな空気を打ち消すように琉生るうが元気よく声をかけてくれる。


「ありがとう、琉生るう。それじゃあ、夕食を食べるか」

俺はそう言ってたき火のまわりに座る。

 そして一人ホクホク顔のすずさん。

 もしやと思ってお祈りポイントを見ると250ポイントしかなくなっている。

 40000ポイント×2で鍛冶道具2個を神様からもらったな?


すずさん、やりやがったな」

俺はジト目で鈴さんを見ながらそう言う。


「いやいや、みんなに許可貰ったよ。一角いずみちゃんだって、金槌の分お祈りポイント節約できるならOKって言ってくれたし、琉生るうちゃんだって、新しい農具や千歯こきをつくってあげられるって言ったら喜んでくれたし、麗美れいみさんだって鋼の武器が早く作れるようになるかもっていったらOKしてくれたし、みんな了承してくれたんだよ?」

すずさんがそう言って弁明する。

 すずさんはやましい事があると、名前にちゃん付けする癖があるから分かりやすい。


 とりあえず、お祈りポイントで交換した火箸と金床を確認して、お祈りポイント250はさすがに危険なので、みんなで今日のお祈りをして5750まで回復。すずさんに当分、お祈りポイント使用禁止の刑に処すことにした。

 まあ、欲しい物ほとんど手に入れたし、さらにお祈りポイント使いたいとは言ってこないだろう。


 そんな感じで、半日ほどだったが、海水浴を楽しみ、それぞれ休憩や気分転換もでき、すずさんは目的の鍛冶道具も手に入れられた。

 あとはお祈りポイントを回復させつつ、2つ目の魔物の島の魔物を減らし、お祈りポイントが回復し次第、魔物の島の攻略を再開することになる。


 次話に続く。


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[一言] 鈴さんwせっかくだから限界まで借金しても良かったのに…嘘ついた時の癖って自分では分からないのが大変ですよね〜
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