第82話 ニワトリ小屋を作ってから、はた織り機を作ろう。
【異世界生活 65日 5:00】
昨日は熊肉の処理と魚の処理で寝るのが遅くなってしまい、1時間遅く起きる俺達。
干し肉にできなかった脂身の多いクマ肉をクマ鍋にして朝食として食べる。
琉生がニワトリたちに早く鳥小屋を作ってあげたいと、日課の剣道教室を後回しにして鳥小屋づくりをすることになりそうだ。
一角もニワトリが気になるようで、魔物狩りを午後に回し、鳥小屋を作るそうだ。
なんか、琉生と鈴さんは朝食を食べながら、鳥小屋の設計図を地面に書いて議論している。
俺と明日乃と真望は昨日、塩を入れた海水に浸けておいた熊肉の薄切りを、一夜干し籠に入れて吊るす作業をする。
琉生と一角、麗美さんと眷属3人は鳥小屋を作る材料、竹を竹林に取りに行く。
鈴さんはツリーハウス作りで残った竹を鳥小屋の設計図を参考に切る作業のようだ。
竹を切りに行ったメンバーが帰ってくるころには熊肉を干す作業を終え、俺もニワトリ小屋作りに加わる。
麗美さんと一角は竹林で竹を切り続けているらしいので、俺は琉生と眷属達と一緒に竹を運ぶ作業をする。
なんか、琉生としては鳥を遊ばせる庭も作るらしく、強固な柵を作りたいらしい。一角と麗美さんは午前中いっぱい竹を切り、眷属達は切った竹を1日かけて運ぶらしい。
明日乃と真望は水浴びがしたいらしく、麗美さん達竹を切るチームについていく。
とりあえず、竹を持って戻ってきた俺と琉生は鈴さんと合流して鳥小屋の製作に入る。場所は拠点の北の端、臭いが出るのでツリーハウスから少し離れ、海風を考えて風下になる位置に建てる。拠点の柵の中に作るそうだが将来的には柵を広げて、ニワトリ用の大きな庭を作るそうだ。
鳥小屋だが、基本的にはツリーハウスと同じ構造。小さいツリーハウスを作る感じだ。オオカミなどに襲われないように高床式にして、スロープをつけてニワトリが出入りできるように、夜の間はスロープを外して獣を寄せ付けない設計にするらしい。まあ、世話をする作業が面倒になるのであくまでも胸の高さくらいの床の高さだ。
最初に竹の柱を四角く何本も立てて、横の梁をかけ、梁の上に4分の1に割った竹を敷いて床を作り、屋根と壁はツリーハウスと一緒。半分に割った竹を交互に汲んで、雨風をしのげるようにする。
最後に扉をつけて出来上がり。
残った竹で柵を作り、竹を編んで目の荒い籠の様にしたものを網として柵に取り付ける。簡単な檻だ。
小さい庭と、立派な鳥小屋が出来上がる。
将来的には琉生がこの柵と竹かごの様な網をたくさん作って庭を広げていくらしい。
「すごいな、もうできたのか」
一角がニワトリ用の小さい庭と小屋を見て感心してそう呟く
お昼近くになり一角と麗美さんが竹を持って帰ってくる。
「ニワトリさん達、狭い竹かごの中じゃかわいそうだから移してあげないとね」
琉生はそう言って、小屋に枯草を敷き、高床の下あたりにも枯草を敷く。
「あ、餌箱と水飲み用の容器も作らないと」
琉生が足りない物に気づきそう言う。
「とりあえず、丸太でもくり抜いて水飲み容器と餌箱も作ってあげるよ」
鈴さんがそう言い琉生が喜ぶ。
お昼まで、琉生と俺と一角は拠点のそばでニワトリが好きな雑草を集めてくる。
鈴さんと麗美さんは糸車とはた織り機作りで余った丸太を半分に割って、中をくり抜き餌箱と水飲み容器を作ってくれたようだ。
餌箱に採ってきた雑草を細かく切って入れ、顔を洗ったり、歯を磨いたりするときに使う、水瓶に入った日常用水から水を分けてもらい、水飲み容器に入れる。
餌にはタンパク源として魚の干物をほぐした身も少し入れてやる。
「よし、ニワトリたちを放してやるか」
一角が楽しそうにそう言って、竹かごを被せて逃げないようにしていたニワトリを出すと掴んで庭に放していく。琉生や俺も同じようにニワトリを移動させる。
最初はパニック起こしていたが、エサや水を見つけると落ち着きだし、最後は落ち着く場所を見つけたのか、小屋の下にひいた枯草のあたりに集まって落ちついたようだ。
「うん、ニワトリたちも気に入ったようだね」
琉生は安心した顔でそう言う。
柵も高いから、獣に襲われることはなさそうだし、ニワトリも飛んで逃げられなそうだし、大丈夫かな?
とりあえず、お昼になったので、たき火の方に戻って昼食にする。
いつも集まるたき火の位置からも鳥小屋が見えるし、鳥が騒げば聞こえる位置だ。大丈夫だろう。
昼食後、一角と麗美さんは魔物狩りに行くそうだ。
琉生は、鳥小屋の手入れと庭の拡張をめざした作業をするらしい。
俺は、鈴さんと真望と明日乃の4人で機織り機の組み立てをする。
鈴さんは木製の土台の部分を作る作業、俺と真望と明日乃は、縦糸の間を横糸が交互に入るようにする仕組み作り、言葉で説明するのは難しいが、縦糸を1本ずつ交互に上と下に分けて、それを一瞬で上と下入れ替える仕組みを作る作業をする。
もっと簡単にいうと金属製の輪に糸を2本結んで、それを大量に作り、上下の木のパーツに結んでいく作業、上手く説明できないがそんな作業を何十本もの糸で行う。
はた織り機の仕組み(簡略図)
「はぁぁ、面倒臭え。同じような丸い金具に糸を通して結んで、木の棒に打ち付けた釘に結ぶ。この繰り返しを150回もするのか」
俺は細かい作業の繰り返しにため息と愚痴を吐く。
で60センチ強の木の棒に1ミリの太さ糸を3ミリ間隔を開けて150本結ぶ。それを上下の木の棒でやる。これを2セット作れば60センチ幅の布ができる麻布ができるらしい。地味でキリがない作業だな。
「3人でやればすぐ終わるよ。それに鈴さんの本体の組み立てなんてもっと大変そうだよ」
明日乃が仕方なさそうな顔で俺にそう言う。
鈴さんを見ると、鈴さんは鈴さんで楽しそうな顔で夢中になって木材パーツを組み立てている。
うん、人には得手不得手、好き嫌いがあるという事が分かったよ。
「このはた織り機ができれば布がもっと簡単に、早くできるようになるんだから頑張って」
真望がそう言って一生懸命機織り機の部品を作っている。
「鈴さん、もう少し木工作業っぽい物ないかな?」
俺は、今の作業の地味さに音をあげて他の作業がないか聞いてみる。糸を結ぶ作業は真望や明日乃の方が上手くて足手まといっぽいしな。
「ああ、それじゃあ、こっちの作業をお願い。これで、横糸をトントンと寄せると布ができる部品で縦糸を絡まないように誘導する大事な部品でもあるのよ」
鈴さんはそう言って、粘土板でできた設計図を見せてくれて、たくさんの竹ひごと木材のパーツがまとめてある場所を指さす。
「木材にキリで穴開けてあるから、あとは松脂の接着剤で、竹ひごを1本1本穴に差し込んで接着してね。片方が終わったら反対側もね。竹ひごがクロスしたりしないように、全部平行に並ぶように気を付けてね」
鈴さんがさらに注意事項を俺に言う。
うわー、さらに地味で根気のいる作業だよ。
まあ、小さい金属の輪に麻糸通す作業よりはマシか。木材加工っぽいしな。
俺は少し木工作業寄りなその作業をすることにする。なんか、鈴さんが言った通り横糸をとんとんして布にする装置だそうだ。よく分からないけど、設計図通りに作っていく。
60センチ強の木の棒に1ミリの太さの竹ひごを300本、1ミリの間隔をあけて接着する。それを上下。もう、何をしているのか分からなくなってきた。
そんな感じで、半日かけて、それぞれのパーツを分担して組み立て、最後にそれを一つに組み上げる。最後のくみ上げは、昨日できたばかりの真望の家、兼、裁縫小屋のツリーハウスにパーツを持ち込み組み上げる。出来上がってからツリーハウスに上げるのは面倒臭いからな。
そして、日が暮れるころ、はた織り機が完成する。
真望が感動で少し目が潤んでいる。
「凄いよ、理想通り、いや、理想以上のできよ」
真望が出来上がったはた織り機をみて感動の言葉を漏らす。
「もう少し精密な構造にすれば、目の細かいきれいな布が作れるんだけどね。今後要改良だね」
鈴さんがそういうが、これ以上細かい構造は俺達がついていけない。
とりあえず、現段階のはた織り機だと織り目が少し荒い布ができるらしい。
「細い麻糸で目の細かい布を作るなら、今までの木枠を使って手作業って感じかな。下着とかはそっちの作り方の方がいいかもね」
明日乃がそう言う。
目が細かくて小さい布なら今までの木枠を使った麻布作りを手作業でする。目が粗くて大きい布を作るならはた織機って感じらしい。
鈴さんはそこを改良して目の細かい布もはた織機で作れるようにしたいらしい。
要は俺がやった竹ひごの作業を竹ひごを半分の太さで半分の間隔で倍の数を接着すれば目の細かい布ができるらしい。明日乃や真望がやった糸を結ぶ作業も倍になる。
うん、当分はやりたくないな。
「まあ、動かすのに細かい準備もいるから、試運転は明日かな? 縦糸を張るだけでも結構な作業だし、真っ暗になったら効率悪いしね」
鈴さんがそう言って、今にも使い始めそうな真望の気持ちを押さえる。
「そ、そうよね。こんな暗くちゃ、下準備もできないもんね。明日明るくなったら試運転しましょ」
真望はそう言って、満足そうな顔で、ツリーハウスを下りる。俺達もそれに続き、たき火の方に歩いていく。
たき火のそばには一角と麗美さんが帰ってきていて、琉生も満足そうな顔で休憩していた。
「お帰り、一角、麗美さん。帰ってきてたんだね。魔物狩りは順調?」
俺はそう言って二人に挨拶をする。
「ただいま、みんな。魔物狩りの方はぼちぼちって感じだな。ハーピーは空飛ぶし、高いところから石を投げてくるし、結界で私たちには当たらないのは分かってはいるんだけど、結構ストレスなんだよな。反射的に石を避けようとしちゃうし」
一角がそう言って、疲れた顔をする。
「そうね、頭の上で結構大きな石が結界にはじかれるのを見るのは気持ち悪いわね。頭から離れていても、嫌な感じよ」
麗美さんもそう言って疲れた顔をする。
二人の話だと、結界は島を丸く囲んだ球体って感じより、若干、底が少し深めなお皿をひっくり返した構造に近いみたいだな。白い橋の先の方まで行くと頭の上をハーピーが飛び回るそうだ。
「琉生、ニワトリの方は落ち着いたか?」
俺はニワトリの世話で楽しそうな琉生に聞いておく。
「うん、ニワトリ小屋も気に入ったみたいで日が暮れたら勝手に入ってくれたよ。あれだけ丈夫な小屋なら、クマでも来ない限りニワトリ食べられちゃうことはなさそうだね」
琉生が満足そうな顔でそう言う。
明日乃が夕食を作り出すので、俺と琉生も手伝う。
料理を作り始めると、眷属達が竹を担いで帰ってくる。シロが光魔法を使えるからギリギリまで作業できるのか。
「レオ君、シロちゃん、ココちゃんありがとうね。竹が沢山増えたから、ニワトリ小屋拡張できそうだよ」
琉生がそう言ってみんなを褒める。
「ありがとうな、みんな。こんな暗くなるまで」
俺も眷属3人を褒める。
シロが抱き着いてくるので今日は無条件で褒めてやる。頭をぐりぐり撫でながら。
「はあ、やっと仕事も一段落ついたから、明日は水浴びに行ってこようかな」
鈴さんがそう言う。
「だったら、明日は一日お休みにして、海で海水浴でもするか。で、夕方みんなで泉で海水落として一日ゆっくりする。どうだ?」
俺はそう提案する。
「海水で仮洗いか。悪くはないな。そのままだとべとべとで気持ち悪いが、夕方泉に行けば問題ないし」
鈴さんがそう言って海水浴に乗り気になる。
「海水浴はいいけど、日陰がないのがちょっとね」
麗美さんが残念そうにそう言う。
「だったら、海岸に日陰ができるコテージ、いや、海の家を作ろう」
鈴さんがそう言ってやる気になる。
「それじゃあ、お休みになってないよ」
明日乃がそう言い、みんなも笑う。
「確かに気軽に海水浴ができる日陰、海の家はいいかもしれないな」
俺はぼそりとそう呟く。
「柱を砂浜に立てて屋根着けるだけだから簡単にできると思うよ」
鈴さんがそう言う。
琉生がニワトリ小屋の庭を拡張するのに使う予定の竹を流用する気だな。
琉生もそれに気づいて微妙な顔をする。海水浴が終わったら、竹を採ってきてやろう。
「でも、流司、クマの油どうするのよ?そろそろ作らないと腐るわよ」
真望が不機嫌そうにそう言う。
「そうだった。何か忘れていると思ったら、それか」
俺はそう言って困った顔をする。
せっかく休みにするっていったのにやる事が山積みだ。
それと、真望は熊の油の石鹸で頭がいっぱいなのかはた織機の試運転の事も忘れている。まあ、試運転はいつでもできるし。言わないでおこう。
「みんなで、交代しながら、海水浴すればいいんじゃない? クマの油も煮込む作業のはそれほどやることないし、火を見てるだけでいいし、海岸もそばだから交代も楽でしょ?」
明日乃がそう言う。
「それいいかもね。私も午前中は農作業とかニワトリの世話とかしたいからお昼くらいから海水浴に参加してゆっくりするっていうのもありかも」
琉生がそう言う。
琉生はニワトリの世話に夢中だな。
「じゃあ、私も午前中は魔物狩りを、」
「それは却下だ。たまにはゆっくりしろ。麗美さんが可哀想だろ?」
一角が魔物狩りとか言いだしそうになったので俺はすかさず止める。そこまで言い出したら誰も休まなくなりそうだしな。あくまでも軽作業のみだ。
一角が不服そうな顔をするが、麗美さんがなだめる。
「一角、だったら、海水浴ついでにまた貝を拾ってきてよ。で、お昼は貝を焼いてバーベキュー。残った貝殻は石鹸の材料になる。いい案じゃない?」
鈴さんがそう言う。
もう、休暇じゃなくて軽作業しまくりじゃないか。
「貝か。それもありだな。久しぶりにアワビやサザエが食べたくなった」
一角が独り言のようにそう言う。
そんな感じで明日は休暇で海水浴と言いつつ、各自いろんな作業をだらだらする日みたいな微妙なお休みに決まってしまった。
とりあえず、色々一段落ついたから、夕食を食べたら、お祈りをして、早めに寝てゆっくりしよう。
休みが明けたらまた忙しくなるしな。
次話に続く。
今週もリアルが多忙の為更新が遅れそうです。年が明けたら仕事も落ち着くと思います。




