第73話 魔物の島のダンジョンに挑戦
【異世界生活 53日 5:58】
「そろそろ、ダンジョンが開くころだな」
俺はそう呟く。
俺たちは今、魔物が犇めく島、南の魔物の島にあるダンジョンを攻略しようと6時の開門を待っているところだ。
「まだは入れそうにないな」
一角がそう言って、ふにふに、と入り口に張られているバリアーのような魔法障壁を触る。
見かけは光でできたカーテンのようなのだが、感触はゴムっぽくて破壊も突破も不能な何かという不思議な魔法障壁だ。
しかも、日が変わって6時になると、このゴムみたいな障壁が最初に触れた人間とその仲間には通れるようになってしまう、ただの光のカーテンのようになってしまう不思議な魔法の障壁なのだ。
「でも、よかったよ。これでワーフロッグとも戦うことになっていたらお祈りポイントがさらに減ってダンジョン攻略も厳しくなったかもしれないね」
明日乃がほっとした顔でそう言う。
「そんなにお祈りポイント減ったのか?」
俺は今まであまり気にしていなかったお祈りポイントが気になり、ポイントを確認するステータスウインドウを開く。
表示は『15900』と表示されている。
「15900ポイント!? 今朝は40000ポイントちょっとあったよな? 25000ポイント近くどこへ行った?」
俺は慌ててみんなに聞く。
「うーん、実は結界魔法のかけ直しかな? 5~60回はかけ直したから300ポイント×60回で18000ポイント近く使ったんじゃないかな? あとは補助魔法と攻撃魔法?」
明日乃が申し訳なさそうにそう言う。
「マジか」
俺は茫然とする。
「まあ、そうでしょうね。魔物10体以上に囲まれて、10秒とか15秒に1回のペースで結界の耐久度ゼロになってたし、1分で4~6回、15分耐えるだけでも90回、私たちが魔物達を倒し続けたおかげで、ペースが落ちたけど、60回のかけ直しは妥当なところでしょうね」
麗美さんがそう言って残念そうな顔をする。
「本当にワーフロッグまで相手にしていたら大変なことになっていたな」
俺はこの世界のMP代わりであるお祈りポイントの消耗の激しさと残りの少なさに呆然とする。
「おい、ダンジョン、入れるようになったぞ。みんなとりあえず中に入ろう」
一角がそう言って、ダンジョンの魔法障壁からひょこっと顔を出す。
とりあえず、ダンジョンに入れば外の魔物からは襲われなくなるので、飛び込むように入る。
「構造は、私たちの住んでいる島のダンジョンと一緒だね」
明日乃がそう言う。
「ああ。ただ、南のエントランスと北のエントランスの関係は逆みたいだな。俺達の島のダンジョンは北に向かって廊下が伸びていたけど、この島のダンジョンは南に向かって廊下が伸びている。南北逆の構造だな」
俺はそう言ってマップについている方位を示す矢印を確認する。
「とりあえず、みんなで今日の分のお祈りしておかない? お祈りポイント足りなくてダンジョン攻略失敗とか悲しいし」
真望がそう言い、みんな頷く。
とりあえず、ここにいるみんなでお祈りをして4500ポイントのお祈りポイントが加算される。合計20400ポイントになった。
「できれば30000ポイントくらいはキープしておきたかったけど、こうなったら仕方ないな。それと、帰りにも魔物に囲まれる危険性はあるからなるべく温存で行くよ」
俺はみんなにそう言う。
「結構厳しい戦いになりそうね」
麗美さんがそう言う。
確かにお祈りポイントが少ないという事は補助魔法が思う存分使えないということ。格上の敵が出た場合退却を余儀なくされる。
「敵の強さが強すぎないことを祈るしかないな」
俺はそう言い、一応安全エリアであるエントランスと廊下、そして南側にあるエントランスも確認して、俺達の島のダンジョンと構造がだいたい一緒であることを確認してから、ダンジョンの攻略を開始する。
まずは第一階層。北のエントランスにある階段を降り、地下1階に。そしてウッドゴーレムが1体ずつ出るエリアから慎重に進む。
いつもの右手で壁を触って進む方式で少し余計にダンジョンを歩くが迷わない方法だ。
「いたぞ、敵だ」
一角がそう言い、目の前にはカエルの形をしたウッドゴーレムがいる。
「またウッドゴーレムか。今度はウサギじゃなくてカエルか」
俺はウッドゴーレムを見てそう言い、一応『鑑定』スキルでステータスを見る。
ツメガエル(ひっかき)
レベル 7
凶暴なカエル。飛び掛かって爪でひっかく。
平均的なステータスだが跳躍には注意。
それを模して神が作ったウッドゴーレム
額にある赤い核を壊すと停止する。
「うーん、1個目のダンジョンとほとんど一緒だな」
俺はそう言って少ししらける。
「そうだな。もう少し強い敵を想像していたんだが」
一角もがっかりする。
「そうは言っても5階のボスがレベル31とかになったら攻略厳しすぎるわよ」
麗美さんがそう言い、確かにそれはキツすぎるなと反省する。
「とりあえず、俺と麗美さんで動きを止めて、明日乃にとどめを刺させる感じかな?」
俺はそう麗美さんに相談する。
「そうね。最初は流司クンにお願いしていいかな? 盾も調子よさそうだし」
麗美さんがそう言い、1匹ずつ出るエリアでは俺が敵を止める役になることになった。
目の前にいるカエル型のウッドゴーレムに近づき、敵のいる部屋に入ると、ウッドゴーレムが動き出す。うん、普通のカエルと同じ動きだ。
大きさは大型犬かイノシシくらいか?飛び掛かられたら痛そうだ。
そう思っているそばからカエル型のウッドゴーレムが跳躍し、俺に飛び掛かる。
俺は冷静に左手で持った盾で受けるが、それだけの大きさの木の塊だ。重量があり、盾で受けるのが精いっぱいという感じだ。
カエルは跳び付きざま爪でひっかこうとするが青銅の盾で受け、ダメージはない。
「速度はそれほどないし、ウサギ型のゴーレムよりはやりやすそうだな」
俺はそう言いながら、カエル型ウッドゴーレムの首に一撃を食らわせる。
「ダメか、首を落とせると思ったんだけど、意外と硬くて太い首だな」
俺はそう言い盾を構え直す。
ウッドゴーレムは首にダメージを受けて少しの間動きが止まる。
「明日乃ちゃんがすぐ横にいて攻撃した方がよさそうね。コアを貫くだけなら槍の方がいいかも?」
麗美さんがそう言い、明日乃が慌てて、青銅の剣を腰の革製のさやに収めて、背中に背負ったリックに付けてあった木の槍を取り出す。
「あ~、そういえば、一昨日のレベル31のリザードマンが持っていた青銅製の両刃の斧? あれ持ってくればよかったな。あれならこのカエルの首落とせるかもしれない」
俺はそう言って後悔する。
青銅の斧は全部青銅製で見かけも格好良かったが、汎用性に欠けそうだったので拠点に置いてきてしまったのだ。
「ああ、言われてみるとそうね。あれはよさそうね」
そう言って、麗美さんは変幻自在の武器を斧に変化させる。
斧というより長柄斧?
そのまま麗美さんが動かなくなったカエル型ウッドゴーレムの首にハルバードを振り下ろし、首を刎ねる。
そして転がった首の核に明日乃がとどめを刺す。
「今の流れ、よかったな」
俺はそう言う。
「じゃあ、流司クンが盾で受け止めて、着地したところを私がウッドゴーレム首を刎ねて、明日乃ちゃんが額の核を壊してとどめを刺す。2体出るようになったら真望ちゃんも参加して盾でカエルを防ぐ感じでいいかな?」
麗美さんがそう言う。
「そうだな。2体になったら真望の方から優先して首を落としてくれよ」
俺は麗美さんの作戦に同意し、首を落とす順番も指示する。
「了解」
麗美さんがそう答え、ドロップ品を確認する。
「カエルの肉、これは要らないわね」
麗美さんの目の前にはカエルの後ろ足の皮を剥いた状態、クリスマスで食べるような鳥のモモ肉に似たかカエルの肉が落ちていた。しかも生だ。
「魔物達は食糧難みたいだからうれしいかもしれないけど、俺達の中で喜んで食べる奴は一角ぐらいだしな」
俺はそう言ってがっかりした気分になる。
まだ1個目のダンジョンのウサギ型のウッドゴーレムが落としたウサギの毛皮の方が利用価値あるしな。
「失礼だな。私は別に喜んで食べたわけじゃない。ただし、琉生は喜んで食べていたぞ」
一角はそう言う。
「うーん、琉生ちゃんの為に持ち替えるほどのものでもないしね」
明日乃も反応に困る。
「放置かな? 明日の朝になればダンジョンを管理する精霊がドロップアイテムも処理してくれるらしいし」
俺はそう言い、みんなも賛同、カエルの肉は放置することにした。
そんな感じで、カエルのウッドゴーレムは、俺が盾で受け、麗美さんがハルバードで首を落とし、明日乃が核にとどめを刺す。これの繰り返し。
ウッドゴーレムが2体になったら真望も加わり、3体になったら一角も加わる。
そんな感じで無難に1階を進んでいき、4体出るエリアに突入。
4体出ても流れは同じ、最初に麗美さんがカエルを叩き落し、首を刎ねとどめを明日乃が刺し、そこからは3体出た時の対処と同じ。問題なく進むことができる。
とりあえず、ドロップアイテムはカエルの肉だけではなく、カエルの爪、青銅製の爪を落とすようだ。このあたり、最初のダンジョンのツメウサギ型ウッドゴーレムと一緒だな。
そして途中で現れた、宝箱代わりの木箱も中身は一緒。粗悪な青銅製の斧という木の棒に槍の穂先みたいなものが着いた安っぽい武器だった。
「うーん、なんだか、最初のダンジョンと似すぎていてがっかりだな」
一角がそう言う。俺もちょっとがっかりだ。
そして、ボス部屋に到着。
ボス部屋はレベル7のカエル型ウッドゴーレム4体に、レベル10のトカゲ型ウッドゴーレムがボスとして登場。このレベルだと雑魚扱いだな。
そしてカエルとトカゲが並ぶと違和感しかない。
結局5体出ても流れは一緒、明日乃が戦闘に加わり、普通にカエルを避けて、明日乃一人でもカエルの核にとどめを刺す。そして、順番に麗美さんが首を落とし、明日乃がとどめを刺す。
ぶっちゃけ、首を落とす作業、要らなかったかもしれない。
それだけ明日乃も成長しているってことだ。
最後のボスは一応『鑑定』スキルで解説を見てから倒す。
ツメトカゲ(ひっかき、噛みつき)
レベル 10
凶暴なトカゲ。噛みつく上に爪でひっかく。
鱗が固くて防御力高め。動きは少し遅い。
それを模して神が作ったウッドゴーレム。
額にある赤い核を壊すと停止する。
外にいるオオトカゲと大して変わらないな。見た目も似た感じだ。爪がちょっと危なそうだけどな。
俺はトカゲの首を青銅の剣で攻撃するが太すぎて切断はできず、ただ、傷が増えると動きも遅くなるようで動きが悪くなったところを細い足、前後左右の足を切り落とし、明日乃を待つ。
「りゅう君、ちょっと可哀想だよ、それ」
明日乃が手足をもがれ地面で陸に打ち上げられた魚のように暴れているトカゲ型ウッドゴーレムを見てそう言う。
「いや、手足が細かったから結構剣でも斬れるなって試したらこうなった」
俺は申し訳なくなって謝るようにそう言う。
本物のトカゲでやったら、確かに動物虐待かもしれないな。
明日乃が申し訳なさそうに、動けなくなったトカゲ型ゴーレムにとどめを刺し、1階をクリアする。ドロップアイテムは青銅のツメ。木箱には粗悪な青銅の斧。俺達のレベルからしたらショボすぎる。
「どんどんいこう」
俺はそう言って、2階も攻略をめざす。
2階も結局、レベル7のカエル型ウッドゴーレムがレベル10のトカゲ型ウッドゴーレムになっただけ。首を落とすのが面倒になったが、麗美さんのハルバードの前にはカエルもトカゲも一緒だった。
1階と同じように進んでいき、明日乃を育成、難なくボス部屋に到達する。
2階のボスはワーフロッグを模したウッドゴーレムだ。レベルは15で、実際戦ったワーフロッグとスペック的にはほぼ一緒だな。武器も粗悪な青銅の槍だし。そして、防具は全身皮防具を装備している。残り4体はトカゲ型ゴーレムとカエルとトカゲが同居して1階のボス部屋同様違和感がある。
そして、木製のウッドゴーレムが皮鎧着ても意味ないんじゃないかという違和感もある。
2階のボスも1階のボス同様、明日乃一人でもトカゲゴーレムはとどめを刺せたので、順番にトカゲ型ゴーレムを倒していって、最後にワーフロッグ型のウッドゴーレム。
実はウッドゴーレムの方が本物のワーフロッグより強いかもしれない。首が太い上に木製で硬い。しかも頸動脈がないので首を切ったくらいじゃ倒れない。
まあ、額の核を破壊すれば倒せるので最初から核を狙えば弱いのだが。
うーん、明日乃の育成には向かないな。ワーフロッグ型のウッドゴーレム。
ドロップアイテムは皮の靴。新品がドロップするので明日乃が今履いている靴と履き替える。
まあ、拠点に皮の防具シリーズは在庫沢山あるので持ち帰るほどでもないな。
3階に関してもレベル15なので格下扱い。特に問題もなく倒していく。ただし、レベル11を超えると経験値がいきなり美味しくなるのは1個目のダンジョンと同じ、3階のボス部屋に行くころには明日乃がレベル22に上がり、一角はレベル23に上がった。
しかもワーフロッグ型のウッドゴーレム、首が太いので結構苦戦するかと思ったが、逆に足は細く、ひざの関節を青銅の剣で叩き切ると結構簡単に足が折れるのに気づき、両足叩き切り、地面を這うカエル型ウッドゴーレムを明日乃にとどめを刺させ、彼女の育成がどんどん進んでいったのだ。
ちなみにドロップアイテムはカエルの肉と皮の防具と粗悪な青銅の槍。明日乃の防具を上から下まで2セット集め、1セットは今着ている防具と着替え、1セットは一応持ち帰る。それ以外は放置だ。
粗悪な青銅の槍は穂先の青銅部分だけ取って持ち帰る。持ち帰れる重さも限りがあるので一定量たまったら、これも放置になる。カエルの肉はもちろん最初から放置だ。
順調すぎて怖いな。3個目のダンジョンが難しいとかありそうだしな。
「多分、リュウジ様達が1個目のダンジョンで慎重に進み過ぎたせいでこのダンジョンのバランスが崩れたのだと思います」
秘書子さんがそう言う。
ああ、テレビゲームのRPGでもよくあるな。序盤で慎重に進めすぎて、時間かけてレベルアップして挑んだら、序盤以外が楽勝になってしまった。みたいなゲーム。そんな感じかもしれない。
「なんか、秘書子さんの話では、俺達、1個目のダンジョンでレベル上げ過ぎたらしくて、このダンジョンの難易度が低すぎるらしいぞ」
俺は一応みんなに情報共有する。
「なんだ、そのクソゲーみたいなオチ。まあ、雑魚モンスターで時間をかけてレベル上げたらゲームが面白くなくなるみたいなやつか」
一角がそう言う。一角も経験があるみたいだな。
俺達は1個目のダンジョン攻略に時間をかけ過ぎたようだ。
「まあ、それならそれで、このダンジョンはさらっと流しましょ? ただし、5階だけは慎重にね」
麗美さんがそう言い、俺達もそう言う気持ちで進むことにした。
ボス部屋のボスはレベル18のマーマン型のウッドゴーレム。外の本物のマーマンが平均レベル15だったのでこっちの方が少し強いか。
ただ、マーマン型ウッドゴーレムも少し木が固いだけの平均的なステータスのようで、1個目のダンジョンで現れた素早さ特化のワーラビットと違い苦戦せずに倒せてしまう。
うん、ワ―ラビット型のウッドゴーレムは確実に神様の考えたゲームバランスが悪すぎたってことだな。敵の素早さ特化は危険とゲームを作る仕事をしている人に教えてあげたい。
なんか、補助魔法を使う事すらなく、3階もすらすらクリアしてしまった。
ただ、ここまで順調にき過ぎてしまい、5階がものすごく難しいんじゃないかと危機感を持ち出した俺達は、一旦、明日乃の育成はやめにして、麗美さんのレベル上げに専念する方向に変えることにした。俺のレベルは貢献度で分配する経験値だけでももう少しでレベルが上がりそうだし麗美さんを優先する。
俺のレベルを25にし、麗美さんをレベル24にして5階で強敵が現れた場合にも対処できるように準備することにしたいのだ。
4階のレベル18マーマン型ウッドゴーレムは麗美さんがとどめを刺す役で進む。
マーマンのドロップアイテムが魚の切り身なのだが、さすがに外にいるマーマンの顔を思い浮かべると誰も食べる気が起きず、このドロップアイテムも廃棄することになった。
魚の切り身以外にも皮の防具を落とすのだが、持てるだけ持って、他は破棄することにする。1個目のダンジョンと違い、小分けにして拠点に持ち帰ることもできないし、すでに拠点には皮の鎧の在庫が結構そろっているので持ち帰る理由もないのだ。
最終的に、麗美さんもとりあえず、皮の防具は新品の物と全部交換して、1セットだけ一応予備として持ち帰る。そんな感じにした。
4階のボス部屋に着くころには麗美さんのレベルも24に上がり、俺も貢献度による分配分でレベル25になった。
4階のボスはレベル20のリザードマン型ウッドゴーレム。装備も外の本物のリザードマンと一緒。皮の防具に粗悪な青銅の槍。レベルが本物たちよりちょっと高いくらいか。
うーん、ここら辺はもう、最初のダンジョンと難易度一緒だな。しかも素早さ特化ではない分、最初のダンジョンより易しいくらいだ。
完全にゲームバランス調整ミスだな。
俺達には2つ目のダンジョン攻略は簡単すぎて消化試合になりつつある。
ボス部屋もボスを俺が抑えつつ、明日乃もなんとかレベル18のマーマン型ウッドゴーレムを抑えながら麗美さんが順番に倒していく流れで、最後もボスを麗美さんに倒させて終了。
ドロップアイテムも拠点まで持ち帰れないので基本破棄になってしまう。
5階はレベル20のリザードマン型ウッドゴーレム。最初のうちは俺と麗美さんのレベルが高いので1体や2体で襲ってくるうちは二人で対応できた。
とりあえず、5階のボスを警戒して麗美さんをレベル25にすることをめざして麗美さんにとどめを刺させる作業をする。
ただ、3体以上出てくるエリアから苦戦しだし、明日乃の全体補助魔法をかけて、ボス部屋まで乗り越える。
ボス部屋前で何とか麗美さんがレベル25になり、明日乃もレベル23、真望もレベル24になる。レベルアップラッシュだ。
「とうとう、5階。最後のボス部屋だね」
俺は落ち着いて、みんなにそう声をかける。
「一応覗いてみる?」
麗美さんがそう言うので、ボス部屋の扉を少し開けてみんなで覗く。そして、一応、鑑定スキルでステータスをのぞき見。
ウォーターリザードマンリーダー
レベル 21
二足歩行のトカゲ。そこそこ知能がある。
全身に鱗が生えていて防御力が高い。
動きは遅いが力は強い。
噛みつきや尻尾で攻撃することもあるので注意が必要
水属性で水属性の魔法を使う事もある。
中級魔法まで使える
それを模して神が作ったウッドゴーレム。
額にある赤い核を壊すと停止する。
まあ、この間見たジェネラルウォーターリザードマンのステータスと同じような事しか書いてないな。レベル21だとリザードマンリーダーなのか。
「ヤバいわね。ボスのレベル21よ」
麗美さんがそう言う。
「つまり、俺達と同じ魔法を、中級魔法を使う可能性があるって事か」
一角がそう言う。
「水属性だから、多分私と同じ、氷の矢の5連発とか使うわよ。きっと」
麗美さんがそう言って嫌な顔をする。
「一人1発ずつならまだ耐えられるからいいけど、1人に集中して5発とか撃たれたら死人が出るぞ。まあ、演習ダンジョンだからHP1になったらダンジョンから追い出されるだけだろうけど」
俺はそう言う。
「さすが5連発を1体の敵に集中して当ててとどめを刺すという汚い手を思いついた流司の意見だ。逆に敵にやられたらいやな技だな」
一角が冷やかすように言う。
俺ができることなんだから敵もやる可能性があると考えるのが普通だしな。
「どうするの? りゅう君?」
明日乃が俺に聞く。
「足が遅いらしいから結界魔法かけて追っかけまわして角に寄せるとか?」
俺はそう提案する。
「そうね、魔法使われてもそれなら安心ね」
麗美さんがそう言う。
「取り巻きが囲んできた場合はそいつらから倒せばいいしな。その時間でボスに魔法撃たれても結界魔法張り直し続ければ問題ないだろうしな」
一角もその作戦で納得したようだ。
「最後だけは骨のありそうなやつが出てきたわね」
真望がそう言ってやる気になる。
「まあ、一昨日に倒したレベル31のリザードマンに比べたら可愛らしいけどね」
俺はそう言って余裕を見せるように笑う。
「まあ、今回は、魔法節約状態でしかも全員無傷で勝ちたいし、慎重に行きましょ?」
麗美さんがそう締めくくり、みんなも頷く。
「明日乃、全員に補助魔法と結界魔法をお願い。結界が張れたら、みんな、ボスに全力疾走な。ただし結界から出ないように注意しながらだぞ」
俺は明日乃にそう声をかけ、みんなにも声をかけ、戦闘態勢に入る。
「はあ、攻撃魔法使いたかったな」
一角がぼやく。
「今日は結界魔法でお祈りポイント使いすぎたから勘弁してくれ」
俺はそう言って一角に謝る。
「次は使わせろよ?」
一角がそう言うと、明日乃の結界魔法も完成する。
「いくぞ」
「ああ」
俺がかけ声をかけ、一角が返事をし、みんな頷いて、扉を開けて走り出す。
2つ目のダンジョン、最後の戦いが始まる。
次話に続く。
なんか神様がダンジョンの魔物の強さの調整ミスしたっぽいです。消化試合になってしまい申し訳ありません。AGI特化の魔物は危険と。しかもウッドゴーレムだったので木製、素で防御力が高いAGI特化になってしまい1つ目のダンジョンで主人公たちは苦労してしまい、レベルを予定以上に上げ過ぎてしまったようです。
このダンジョンも強くしてしまうと3つ目も強くしなくてはならず、どんどんインフレしていくという危険性もありまして、あえて弱いままにしました。
グダグダのダンジョン攻略になってしまい申し訳ありません。
ゲームバランスの調整って難しいですね。




