その男、一隻眼につき。おまけ
僕を育てた人は中国人だった。彼はある組織に所属していた。その組織は日本のとある組織と対立していて、彼は毎日のように戦いに明け暮れていた。
妖を意のままに操り使い捨てる組織と、妖と手を組み共存を目指す組織。妖に家族を奪われ、仇なす力を求める者たちと、妖に命を救われ、共に生きる術を求める者たち。どちらが客観的に支持されるべき思想かは、初めから前者に与していた僕にはわからない。僕の正義は僕のいる場所にしか定義できないのだから。
何年かして彼が死んで、僕の行き場は無くなった。ずっと彼の庇護下にあった僕には大した力も無くて、組織の役に立つことはできなかった。だけど、そんな僕に力をくれたのが「彼」だった。「彼」はただの人間の僕に、「取り込む力」を分け与えてくれた。この力さえうまく使えれば僕だって強くなれる、組織の役に立てる、彼の意思を継いで戦える。だから手始めに、「彼」を取り込んだ。
今となっては、僕が「彼」の身体を取り込んだのか、「彼」が僕の意識を取り込んだのかわからない。僕という証は空色の瞳しか残されていなかったから。だけどもうどうでもよくなっていた。強くなれればそれでいい、強くなれればそれでいい、強くなれればそれでいい。僕から彼を奪った妖や守護八家の連中を潰す力が手に入れられれば、それでいい。