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その9~夢のペニオク生活~

『やった~!私こ~んなブランドバッグ35円で落札しちゃった!てへぺろ』

有名なアイドルタレントがクッチのキンキラキンのバッグと一緒に満面の笑みを浮かべた写真がブログに載せられている。

「わ~いいな~」

真田が物欲しげな目でこちらを見てくる。

「そんな目で見られても、職就かない限り、そんなの買えないよ」

「いやいやいや、今の時代は進んでるんだよ~!」

鼻高々に、パソコンのホームページを指さす。

なるほど、最近話題のペニーオークションか。

最初は1円など信じられないような安さで出品がなされ、欲しい人がワンクリックで入札出来る。だが希望する値段で入札は出来ず、その代わり1円づつ値段が上がっていくシステムとなっている。その入札をする度手数料を取り、それで利益を出すオークションである。

「私もこれくらいの値段なら買えそうな気がする」

「いやいや、お前金持って無いだろ」

「大丈夫!500円ある」

「・・・・・・」

確かペニオクはだいたいの物が独自通貨になっていて、ワンコイン105円とかそんなもんではなかったか?一度入札する度に1枚コインが消費される。いわばこれが手数料になる。そして落札された金額を支払って見事購入というわけだ。まあ、手数料で商品が買えてしまうなんて状況もそうそう珍しくない、ギャンブル性の高いオークションである。

そうすると、真田がコインを買えてもそれで終わりだ。そんな数じゃ競り落とせないような気がする。

・・・・・・まあ、一度やらせば諦めがつくだろう。

「いいよ。金出してやる」

「ほんと?やった!」

社会勉強させるということで、2000円ぶち込んでやった。カード決済か。すげぇな・・・・・・


早速真田はペニオクサイト「ウキウキオークション」にて、PXPという携帯ゲーム機を競り落とそうと試みることとした。楽しげなサルのキャラクターが所狭しと飾られている。さながらサル軍団だ。

最初の価格は1円。残り時間は3分。

誰も手を付ける様子が見られないので、取りあえず入札する。

すると、直ぐさま誰かが入札してきた。価格は3円に。

「お、誰だ?この私に挑もうとするのは?」

真田は速攻で入札ボタンを再びクリックする。それに呼応するかのようにまた入札される。

先程と同じ人物であった。ニックネームは「goriate」。

「なんだよ!ゴリアテって・・・・・・畜生!!!」

追い打ちをかけるように、入札が覆い被さる。「goriate」だけでは無い。他の入札者の名前もチラホラ見受けられる。

「みんな寄ってたかって、もう!」

頬を膨らませながら、また入札。しかしそれで決着が付くことは無く、あっという間に178円までつり上がった。

既に420円投入したんだ、絶対に入札してやる!

残り3秒となった。今入札すれば、誰も手を付けないはず。

運命のクリック。全ての希望をマウスの左ボタンに託した。すると・・・・・・

「あれ、時間が延びてる」

終了間際に同じように駆け込みで入札してきた奴がいたのだ。制限時間が15秒延びている。

「うわぁ」

嘆息が漏れる。ここからは一騎打ち。兵糧が尽きた方が負けだ。

クリックが加速する。15秒間の攻防が続く。まだいける。

価格はみるみるうちに上がっていく。相手は私が入札すると同時に入札してくる。

これでは勝ち目が無いかも知れない。いや、相手だって人間だ。諦めて別の商品に目標を移すかも知れない。


遂に兵糧が尽きた。だが、相手は入札の手を緩めることは無かった。

「ダメだ・・・・・・落札できない」

真田はパソコンの前に突っ伏した。

「まあ、仕方無いさ、諦めろ」

自分は肩を優しく叩く。

「取りあえず金擦ったことはお咎め無しにしてやるから、今度からやろうとするなよ?」

「はい」

諦めがついたのか、真田はパソコンから離れ、TVの電源を点ける。

すると、先程真田と見ていたブログの有名人がバラエティ番組で泣きながら謝罪しているではないか!

『騙すつもりじゃなかったんです・・・・・・書くとお金が出るって言われて・・・・・・』

『君は詐欺に荷担したんだぞ!!!』

コメンテーターらしき人が、その芸能人に罵声を浴びせる。

何だか見苦しいので、自分は真田からリモコンを奪い、別のチャンネルにする。

そのチャンネルでは丁度ニュース番組をやっており、先程まで金を擦り続けていた「ウキウキオークション」の会社の役員が詐欺容疑で逮捕されているではないか。

「おいおい、本当かよ・・・・・・」

どうやらこのサイトでは、いわゆるサクラを使って入札があった物に対し張り付き、相手が降りるまで入札を繰り返し、落札出来ないようにしていたのだ。人を使わず機械でやっていたのだから、絶対に落札出来る訳が無い。まんまと芸能人とサイトの連携に自分達は騙されてしまったのだ。

「そうか、楽して物は買えないってことだね」

真田は独り合点した。

「『濡れ手に粟』みたいな話なんか世の中に沢山あっても、それは全部嘘さ。金は努力の対価。努力で手に入れていない金なんざ、持ったところで良いことなんか起こるわけないのさ」

そう言いつつ、自分がかつて宝くじに家賃代を託そうとしたことを思い出した。人の振り見て我が振り直せというが、どっちもどっちであった。









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