その10~今日もどこかで炎上~
ま~た始まった。炎上だ。
蟹だと思ったら
人だった
その10
最近やたらと捏造やら批判やらがあちこちで飛び交っている。
ある場所ではコンビニの冷蔵庫に押し入り、それを捉えた写真をインターネットのコミュニケーションツールに載せ、瞬く間に世界中にその姿が晒され、批判と罵声のコメントが寄せられる。
このような集中砲火的に蔑みのコメントが当人に集中して投下されることを、巷では「炎上」と呼んでいる。
「あ~あ、また炎上してるよ」
真田はそういった情報の収集に事欠かない。
「そんな情報集めてる暇があるなら、職でも探したらどうだ?」
いつもの件を自分はまた口にする。
「そのうち決まるから大丈夫」
傍にあったポテトチップスの袋に手を伸ばし、おもむろに開け、口に運ぶ。
「お前、今日ポテチ何袋目だ」
「え、まだ5袋くらいだよ」
口の周りにポテトチップスのカスをビッシリ付着させ、ニッコリ笑顔を浮かべる。
「汚い。口拭け」
自分は真田にティッシュを差し出す。しかし拭くことを拒否したため、自分は強制的に口の周りの汚物を取り除こうと、無理矢理ティッシュを真田の口の周りに当て、ゴシゴシと強い力で擦り落とした。
「いやっ・・・・・・ダメ・・・・・・痛いよ」
必死に抵抗する真田を押さえ付け、綺麗に油で汚れた口辺を拭う。何故が真田の声が妖艶になっていることには、あえて触れないことにする。
「ほら、こんなに取れた」
自分は真田に、油とカスが一緒くたに付着したティッシュを見せつける。真田はゴキブリを発見したときのような驚愕した表情を浮かべる。
「うわっ、ちょっと、そんなの見せないでよ!」
「ほーらほーら」
段々二人の距離が詰まっていく、そんな時。
突然玄関のドアが凄まじい音を立てて開いた。それに驚いて汚物ティッシュが舞い散り、真田に直撃する。
「ちょっと、何?!」
飛んできたティッシュを振り払う真田。
「大変だ!俺がネットで炎上してる!!」
稲田が声を荒げ、物凄い形相で自分を見つめてくる。肩を大きく上下に揺らし、額には玉のような汗がビッシリと浮き出ている。
「一体何をやらかしたんだ?」
「それがさ・・・・・・バイト中に骸骨の覆面して工事しているところの写真をネットにアップしたら、『ゴミクズ』とか、『ハロウィンから出てきたニート』とか、『誰も出来ないことやってるオレカッケーとか思ってるんじゃ無いの?○ねよ』とか、そんなコメントばっかりで・・・・・・」
稲田から差し出された携帯電話には、SNS「トギッター」に投稿されている稲田のあられも無い姿が晒されていた。
「うわぁ、DQNかよ」
「DQNで悪かったな!」
「自覚あるのかよ」
「あ、もしかしてこれ?」
真田が偶然先程から開いていたものが、まさに稲田のパーフェクトファイヤー画像であった。
「さっき言ってた、また炎上、ってのはのはこれのことなのか」
「そうだよ。またやらかしたのマー君?」
「すいません」
「ってことは、前にも何かやらかしてたのか?」
「はい」
その言葉を吐いた瞬間、自分は居ても立っても居られなくなり、稲田の胸ぐらを掴んだ。が、タンクトップがが搾れる程の汗を溜め込んでいたので、すぐに離した。
「前は何をやらかしたんだ?」
「前は、レストランで、ニンジンを舐め回した挙句、冷蔵庫に入り、裸になって魚の振りをした動画を晒して炎上しました。それで損害賠償になりニコニコローンに借金を・・・・・・」
「おい!損害賠償の支払金、借金してたのかよ!宝くじが当たってて良かったな・・・・・・じゃねえよ!なんで言わなかったんだよ!」
「いや、言えば家追い出されるかなと思って」
「まあ、言わないより言った方がいいよな」
「確かに」
その後、稲田は会社にこの件がバレて、会社をクビになった。
そして稲田のアカウントで謝罪を行った後、記事を削除した。
「あ~あ、またクビになっちゃった。でも次の職がきっと見つかる!アルバイトだし」
「いい加減にしろ」
稲田は一ヶ月の謹慎となった。
「私はまだ謹慎のままで良いよね」
「お前は早く働け」
真田はまだ職を探さず、動画サイトとネトゲを往復する日々を送っていた。




