73 ある母親の愚痴。
私、高橋明美と申しまして、烈貴の母でございます。
高橋家に於いて。
私は唯一の秩序として、良妻賢母を目指し日々邁進して来たつもりでした。
ですが、その努力の甲斐も無く。
長男の烈貴は、本来の希望とは真逆の方向へと成長しようとしています。
勉強はおざなり、口は利かない、たまに口を開くと思えば
(こんな子に育てた覚えはない)
と思える程の汚い言葉で口答えするばかり。
それよりも、もっと懸念すべきなのは
"女遊び”です。
元来、学生風情の然るべき男女交際の姿とは、基本的に"グループ交際”に尽きるかと。
更には身体の直接的接触など論外、極力避けるべきです。
当然です!
"間違い”が有っては、決してなりません!
それを烈貴は………
長女の茉莉からの報告によれば、よりによって体臭の移る程の接触をしていると言うではありませんか!?
私は………目眩さえ、いたしました。
どこを、どう間違ってしまったのか!?
本当に、こんな子に育てた覚えはありません。
このような色情狂に烈貴を仕立て上げようとしているのは何を隠そう、夫の正和です。
私の大切な長男に隙あらば、あること無いこと悪習を吹き込み、間違った道へと進ませようとしている張本人です。
烈貴は、私の子です!
私が、お腹を痛めて産んだ、私の子供です!!
それなのに夫の行動には、親としての自覚が全く見られません。
更に輪をかけて許せないのが、我が息子を色仕掛けでそそのかし、たぶらかすアバズレ女です!
繰り返し申し上げますが、烈貴は私の大事な息子です。
その大事な息子を、どこの馬の骨かもわからないアバズレに………泥棒ネコとも言いますが………手出しされるのを黙って見ているわけには参りません。
そのような危険から我が子を守りきるのは、母親としての当然の役目です。
息子が成人し、良き職を持ち、良き婚約者を得、良き家庭を築くまでは決して気を抜いてはならないと、親としての責任を考えています。
時折、ママ友の皆さんとのティータイムでお話を聞かせて頂く機会がございますが。
息子さんと仲睦まじく手を繋いでショッピングにお出かけ……といったことを聞いたり、息子さんと仲良くツーショットの写真を見せられたりすると、本当に、心より羨ましく思います。
中には
「ママが居てくれれば、カノジョなんて要らない」
なんて、思わず涙が出そうな程嬉しいことを言われた方も居て。
それに引きかえ、我が家は………………と、現実に打ちのめされそうになります。
こんな話を夫にすると
「そんなの、タダのマザコンだ」
などと言われますが。
とんでもありません!
お母さんが恋しくない子供なんて、どこにいますか!?
どの国でも、どの世界でも、やっぱり、お母さんが一番なんですッ!!
たとえ息子が歳をとっても、母と子の関係は変わりません。
この関係を壊すものは、是が非でも許してはなりません!
息子………烈貴は私が時折苦言を呈する理由を、まだわかっていないようですが。
全ては烈貴の為、烈貴の将来を憂いてのことなのです!
母親としての当然の責任、当然の愛情に他ならないのです!!
親の言う事さえ聞いていれば間違い無いのは、申し上げるまでもありません。
皆様。
どうか、烈貴が懲りずに"女遊び”をしているところを見つけたりしましたら、随時御報告ください。
この私が飛んで行って、"アバズレな泥棒ネコ”から守らなくてはなりませんので。
ウチの大事な息子の嫁に相応しいのは、清楚であり、礼儀正しく、何事にも優秀な娘さんだけですッ!!
続く
〈ある母親の愚痴・完〉




