64.自信作
衝撃の事実を知ったことで、俺は明確な目的を得た。
ミコトが、何を考えているのかはわからないが。どうにかしてこの状況から上手く脱し、クラスメイト達にこの話を伝えなければならない。
あわよくば、彼女から帰還する方法についてのヒントを得る事ができればより完璧ではなかろうか。
具体的な方法でも提示しない限り、連中に合流できたとしても説得するのは難しいだろう。
兎に角ハーウェが俺たち召喚者を帰す気がないのであれば、悠長に闇の帝王の討伐なんてしている場合じゃない。帰還する方法を見つけるために、一刻も早く動き出さねばならないのだ。
ミコトが、自分の方から「帰る事はできたのかい?」と訊ねてきたくらいなのだから、帰還する方法が全く無いというわけでもないような気はする。
目の前にいる亜神は、何かしらの方法を知っている可能性が高い。
「兎に角いろいろと興味深い話を聞けて、とても有意義な時間を過ごす事ができたよ。ところでカケルは、ずっと傷の事が気になって仕方がないようだね?」
これから、こちらの聞きたい事を訊ねる番だと意気込んでいたが。ミコトは、急に話を切り上げて俺の傷に対して気遣いをみせる。
亜神ならば腕の一本や二本、簡単に再生してくれるのではなかろうか。そんな淡い期待を抱くも、彼女が次に発した言葉は想像の斜め上をいくものだった。
「片腕じゃこの先とても不便だろうし、もしカケルさえそれで問題なければ良い義手を用意できるよ」
義手だって? アムでさえ本来の力を行使できるなら、再生くらい可能なような話をしていた。それなのに彼女も恐れるほどの亜神が、そんな物理的な方法で問題を解決しようとでも言うのか。
「気遣いをしてくれるのは嬉しいが、あれだけのとんでもない力を持っているのなら、ちゃちゃっと腕を再生させるくらいできるんじゃないのか?」
「そうして欲しいならそれでも構わないけどさ。だとしたら少し残念だよ……ボクの中では最高傑作の一つと言っていい程の出来なんだけどね」
言い方から察して、その義手とはミコトが自ら作った物だということか。亜神が作った最高傑作なんて話を聞いたら、どうしても厨二心がくすぐられて仕方がない。しかも、腕を再生させる事が、まるで容易いと言わんばかりの口ぶりである。
「そこまでしてもらうのに、我が儘いっているようで申し訳ないとは思うが。実物を見せてもらって、それで判断するって事じゃ駄目なのか?」
俺の申し出を受けたミコトは、満面の笑みを浮かべながら両手を上に向けた状態でテーブルの上に差し出す。
次の瞬間、手のひらから光が溢れだし、それが消えると同時にミコトは見事な出来の義手を抱えていた。
それは期待していた物と違い、本物の腕と見分けがつかないほど精巧に作られた普通の義手だった。
機械仕掛けのレッグアーマー的な物を想像していただけに、この見た目は少しガッカリである。こんな普通の義手を付けてもらうくらいなら、綺麗に腕を再生してもらった方がいい。
そんな風に考えていた俺だったが、次にミコトによって語られた説明により、その考えを改めさせられる事となる。
「この義手は、一見すると至って普通の物に見えるよね? でも、戦闘モードに切り替える事で、様々な武装を発動させる事ができる優れものなんだ。例えば、音速を超える弾丸を発射する機能なんてものもあったりするよ」
ミコトは、そう説明し終えると義手をテーブルの上に置く。すると、何かしらの念を送るアクションでも起こしたのか、途端に義手は変形し始め一瞬で俺が想像していた物に近い姿に形を変えた。
「どうだい? これなら気に入ってもらえるかな?」
厨二心をくすぐるその形状を、この俺が気に入らないわけがなかった。
それだけの機能が付いた物を装着するとなると、面倒だったり苦痛を伴う事もあるかもしれない。しかし、目の前にある義手の誘惑は、そんな危惧さえ忘れさせるには十分すぎるものだった。




