113.始まりの村
アイシャの住んでいた集落を出た俺たちは魔女の森を抜け、かつてクラスメイト達と共にベースキャンプを張っていた村にやってきていた。
途中、ミコトと出会った場所で指輪を探してみたが。結局、見つける事はできず諦めるしかなかった。
初めてきた樹海の外の村に、アイシャは興味津々である。
女神の使徒ではない樹海の民の中には、希に交易の目的などで外界に出る者もいるようだが。使徒には聖地を守るという使命があるため、基本的に彼らが樹海の外に出るような事はない。したがって、商人などが使徒に護衛を頼むとしても、行動を共にできるのは魔女の森に入る手前までである。
そういった事情から、今回アイシャが旅に出るのを許されたのはかなり異例の事だった。
後から聞いた話によると、族長のガルフ自体は意外とあっさり了承してくれていたようである。
しかし、途中で割って入ってきたヴァンのせいで、話はかなり紛糾したみたいだ。
告白されたアイシャは、その場ではっきりと断ったが。ヴァンは、それでも俺の事を倒して認めさせてやると言って聞かなかったため、最終的には青い大竜の件を持ち出して説得にあたったらしい。
ソロで火竜の上位種を倒したという話を聞かせ、ようやく彼を怖じ気づかせる事に成功したようだ。
村の名は、テペと言う。ここでは帝国の新兵が森で訓練をおこなう際に、よくベースキャンプが置かれる。また、魔女の森での依頼が頻繁に有るため、多くの冒険者も訪れる村だ。そういった事情からか、村と言ってもかなり栄えた感じである。
そのままこの村を拠点にする冒険者も多く。そのためか、ここには冒険者ギルドの支部が置かれていた。
「確かここには、冒険者ギルドの支部が置かれていたよな。支部でも冒険者の登録ってできるのか?」
「どうだろうね? ボクは冒険者の登録なんてした事ないから、その辺の事情は全くわからないよ。取りあえずそこに行って、訊いてみれば良いんじゃないかな?」
先に宿を取った俺たちは、ミコトの提案を受け冒険者ギルドに向かう事にした。
帝都の本部を一度見学していた事もあり、クラスメイト達と共にベースキャンプを張っていた際にそこに行くことはなかった。
そのときは、どうせ支部なんてよくある感じのアレだろう、くらいにしか思ってなかったが。実際その場にきてみると、やはりそこは想像していたとおりの場所であった。
俺たちは、酒場が併設されているフロアを抜け、二つしかない窓口の方へと真っ直ぐ向かう。
見慣れない四人組のこちらに対し、厳つい顔をした冒険者たちの視線が一斉に集まる。そんな状況のなか、俺は一番手前のツインテールの受付嬢に声をかけた。
「冒険者登録をしたいんだが」
「はい、それではこちらの用紙にご記入ください」
受付嬢はそう言いながら、すぐに用紙を五枚こちらに手渡してくる。手際の良さからして、見るからに俺たちが新規登録者だと思い、身構えていたのだろうか。
「獣人族の女の子がいるパーティーなんて、珍しいですね? 可愛らしい女の子もいて……ってこの子、背中に翼が生えてるみたいですけど本物なんですか?」
いちいち適当に誤魔化すのも面倒だった俺は、受付嬢に苦笑いだけを向けさっさと空いている席に移動する。
絡まれたりやしないかと心配したが、意外とそんな事もなく。周りの冒険者たちはチラチラとこちらを見るものの、誰も声をかけてくるような事はなかった。
用紙に記入する内容は、至って簡単なものでしかないようだ。名前と年齢、使える魔法の種類。その他は得意なものの内容や、これまでの経歴を記入するだけだった。
四人なのに紙が一枚多かった理由は、それがパーティー登録の用紙だったからである。
他の三人にも用紙を渡し、記入をはじめる俺たちだったが。経歴のところで悩んでいると、隣の席に座っている男たちが気になる事を話し始めた。




