十七
この糞女苛々させやがって…!こんな事なら助けてやるんじゃなかったぜ…!
…冷静になれ。苛立って良い事なんざ有りゃしねぇ…行動が単調になる、振りも大きくなる。冷静に状況を把握しろ、散々それで痛い目見て来ただろうが
魔物はレイラの一撃を貰ってその威力を思い知ったらしい、警戒して掛かる事を躊躇していやがる
そりゃそうだ、あの重そうな大剣を軽々持って走り回れる程の腕力を持った一撃をまともに受けりゃあそうもなる
…不気味なのは吸収したであろう水魔法の効果が表立って出ていない事だ。まさかあの水の光線だけって訳じゃねぇだろう
「…おい、どう考える」
「…分からない。だからこそ迂闊に手が出せないわね」
隣で構えるレイラに訊いたが…こいつも同じか。見ただけじゃ何も分からねぇ、前の炎を纏ったようにあからさまに変化が分かりゃあ良かったんだが…
…どうする。またイザベラに魔法を使わせるか?恐らく魔物は魔法の攻撃なら防御も回避もせず受け入れるだろう。それで様子を…
…いや……本当にそれで良いのか?この魔物が吸収して発現するのは一つの属性ずつなのか?炎と水の相性が悪い所為で一つだけ発現させているだけで、もしかすると既にこいつに二つの属性を付与させちまってるんじゃねぇか?
だとするならこれ以上他の属性魔法を使わせる訳にはいかねぇ、どんどん自分達の首を絞める事になる
どちらにしろこのままじゃ埒が空かねぇ、危険では有るが先のようにこっちから仕掛けるしかねぇな
「レイラ、俺が攻める。てめぇは魔物がどう変わってるか目ぇ凝らして確認しろ」
「ちょっと…大丈夫なの?」
「さぁな。とちって死んじまったらてめぇ等二人で何とかしろ」
「…そんな事言わない。貴方が死んだら悲しむ人が居るんだから」
「…はっ。生憎そんな奴居ねぇよ!!」
「カーズ!!」
魔物へと突っ込み剣を振りかぶる。さあどう出やがる…!
何だ…構えねぇ…?回避も防御もしねぇつもりか…!?
こいつ…!俺の攻撃はそれをするにすら値しねぇってか…!?舐めやがって…!それなら望み通りに思いっ切り叩き込んでやるよ!!
「おらぁっ!!」
力任せに振るった剣は魔物を斬り裂いた。袈裟を斬って分かれた魔物の半身が地面に落ちる
…ざまぁみやがれ。俺の事を見縊りやがって…!
…斬れたのか?本当に
俺が初手に魔物に入れた一撃は魔物の皮膚を斬り裂けなかった。幾ら無防備だったとはいえこんな簡単に斬り裂けるか?
違う、斬れてねぇ。感触が違った
剣が肉を裂く感触、骨を断ち切る感触…いつも手に残る感触がまるで無かった。まるで虚空を斬ったような…殆ど抵抗の無い感触だった
「カーズ!!危ないわ!!逃げてぇっ!!」
「!!」
イザベラがこちらへ走りながら叫んでいる。危ねぇだと?一体何が…
…足元の魔物の身体が溶けている……分かれた方と残った方両方が。直ぐにその場から離れ様子を窺う
どろどろと溶けたそれは分かれた方と混ざり合い…形成を始める。二つに分かれた筈の魔物の元の形へと
…畜生が、これが水魔法を吸収した効果だってのか?自分の身体を水と同じように出来るってのかよ
そういう事か…!だから斬った感触が無かったのか…!
……おいおい…だとしたら尚更まずいじゃねぇか…!今のこいつは剣が効かねぇ!!




