九
流石に気付かれた。地面を破壊しながら走るもんだから音まで消す事は出来ない…こちらを向いたゴブリンは持っていた大きめの剣で袈裟斬りを仕掛ける
だが、それは無意味だった。組み合うつもりで剣の軌道に合わせて振った俺の大剣はその剣を折り、そのままゴブリンを肩口から斜めに両断した
「………すご…」
勢い付いてたし、スキルに加えて大剣の重さもあるから力比べは負ける訳無いと思ってたけどまさかそのまま武器ごと断ち切れるとは思ってなかった。
これ相手からしたらたまったもんじゃないな。武器での防御が貫通するとか……この大剣ならこういう闘い方も出来るのか
助けた女の人と共に怪我をした女の子の元へ行くと、二人は泣きながら互いを抱きしめ合って俺に感謝の言葉を送ってくれた
避難するように促そうとしたが、女の子は足を怪我してしまっていて歩けないでいる。この子を抱えて逃げたんじゃゴブリンに見つかったら絶対に逃げ切れないだろう
…なら方法はこれしかないよな
「お兄ちゃんすっごい力持ちなんだね!」
「んー?そう…かなぁ?」
「お、重くないですか…?」
「全然!」
女の子を腕に抱え、女の子の姉さんを背負った状態で先を目指す事にした
隠れてもらう事も考えたが、見つかってしまった時のリスクも考えるとこうして近くで護った方が確実に助けられる
闘う時は流石に下りて貰わなきゃいけないけど、この程度なら走る分には全く問題無い。怪力様々だ
「あの…」
「ん?どうかした?」
「私、見たんです。ゴブリンが街に来る所を……ただ、その先頭にいたのはゴブリンではなくて…私達と同じ人間でした」
「えっ…!?」
「遠目だったので何を話したのかは分かりませんでしたが、ゴブリン達に命令していたように見えました」
俺達と同じ人間がゴブリンを従えて城を襲ったって事か?何でそんな事を…いや、まず人間が魔物を使役する事なんて出来るのか?
でもこの子が嘘を言っているようには見えない…。なら、俺達が斃さなきゃいけないのはその人間って事になる
「お兄ちゃん前!」
「!」
ゴブリンが二体飛び掛かりながら襲い掛かってくる。でも、女の子が知らせてくれたお陰で対処が遅れる事は無かった
二人を抱えたまま大剣を振って二体を一気に弾き飛ばし、消滅させる
「お兄ちゃんすっごい強いんだね!」
「いやぁ…俺はそんな強くないんだけどね…」
スキルと大剣の性能と重さが上手く噛み合ってるお陰で俺の戦闘経験の無さをカバーしてくれてるだけで、まだまだ俺は弱い。早く皆と肩を並べられるように強くならないといけない
強くならなきゃあの門番の様になる。この世界はそういう世界なんだ…生きれるのが当たり前なんて事は絶対に無い
…そして、強くなきゃ誰かを救う事も出来ない。俺がスキルを持っていなければ此処に来る事も出来なかった。俺達が来れなければ助けられる人も助けられない…現にこの二人を助ける事も出来なかった筈だ
強くなろう。剣の使い方を覚えて、スキルの使い方をもっと知ろう
「零也!」
遠くの前方からオルガが俺に声を掛ける。オルガを先頭に街の人達が十数名走って来ているのが見える
そのオルガの前を複数のゴブリン達が遮ろうとしていたのだが、皆一撃で四方にぶっ飛ばされ鮮やかな返り討ちに遭っていた
…そう、体術なら今のオルガのように無駄の無い動きで攻撃が出来るように。剣技なら唯やルーギアスさんのように
目の前まで来るとオルガは一拍置いて苦々しく口を開く
「助けられたのは後ろを付いてくる人間達だけだ。こちらの方は人が密集していた所為で犠牲になった人間が多かった。ただ、そこにいた塵屑共は皆消してやった」
「…そっか……何体くらいいたか覚えてるか?」
「何体いたか…?二、三十くらいだった筈だが…」
たまたま…なんだろうか。俺の方にいたゴブリンは十もいなかった…そしてオルガの方には倍以上のゴブリンがいた。
街の構造を把握していればどこにどのくらいの人がいるかは見当が付く。それに合わせてゴブリン達を放っていたのか…?




