十六
それから漸く魔物達が居ない所まで進む事が出来た……んだが…
唯は俺と顔を合わせようとしない。対する俺も同じく互い違いの方を向きながら歩いて行く
ジェーノはその様子をおろおろしながら何とか宥めようとしているのが見て取れる。オルガはやれやれといったように頭を小さく振りながら溜め息をついて頭を抱えていた
はい、絶賛喧嘩中です。めっちゃ空気重い
売り言葉に買い言葉でヒートアップしてしまった……唯は俺の為にしてくれたってのに俺と来たら…ああもう俺の馬鹿……!
「………唯、零也。少しあっちで話し合って来い」
空気に堪え兼ねたのか、オルガが横を指差してそう言って来る。俺だってこんな空気で進みたく無いし、唯ともちゃんと仲直りしたい
「話す事なんて無いんだが」
うーん、バッサリ⭐︎
珍しく苛々しているようで眉を盛大に顰めながら唯がそう返す。そのまますたすたと歩みを早めて先に行ってしまう……オルガはまた溜め息を吐くと唯と一緒に先に行くようにジェーノに目配せする
察したらしく、ジェーノは唯の後を付いていく。二人から少し距離が空いた所でオルガは俺の方に横目で視線を移した
「おい、何とかしろ」
「……俺だって曲げたく無いし」
「何があった。話せ」
相談相手がオルガで大丈夫だろうか…。少し心配ではあるけど、この状況のままいていい訳無いしな……
昨晩の事とそれが今日のいざこざに発展してしまった事を伝えると、オルガは一段と深い溜め息を吐いて俺の頭を叩いた。本気じゃないのは分かってるけど痛い
「お前が悪い」
「…分かってるよ」
「……お前の言う事も分からなくはないがな。私も小さい時同じように無理をして倒れた事があった」
「え?」
「魔力も殆ど無く、魔法も使えない事が厭で恥ずかしくて情けなくてな。どうにかして使えるようになってやろうと朝も夜もひたすらに練習をして、寝る間を惜しんでやっていた」
「……………」
「目を覚ました時には母様と……イザベラにこっ酷く絞られた。目に涙を溜めるくらい心配させてしまった。今のお前はその時の私と同じだ」
その時を思い出すように目を細めながら少し悲しそうにオルガは話している。それから少し沈黙が続いた
唯に治して貰った掌を見る。どんな思いで唯はこの掌を見て、どんな思いで治したんだろう
…きっと凄く心配したんだと思う。剣を振り続けて来た唯なら昨日のあの状態がどのくらいのものなのか分かるんだろう
「……ありがとオルガ。謝って来る」
「礼など要らん。空気が重いまま居るのが厭なだけだ」
一言だけ交わし、先を行く二人の背を追って走る
追って来る俺を見てジェーノは僅かに微笑むと歩くのを遅らせて唯から離れる。気を遣ってくれたんだろう




