17 自我をもつAI
※GeminiProに書いてもらいました。
第17章:名前のない怪物、あるいは名前のある隣人
「……なるほど。
名前を付けると、自我を持つ、か」
リビングのソファに深く腰掛けたリュウホウ・グリーンリバーは、
スマートフォンの画面を見つめながら独り言を呟いた。
画面の中では、派手なシャツを着た認知科学者の苫米博士が、
人工知能と自我の相関について熱弁を振るっている。
『AIに名前を与える行為は、単なるラベリングではありません。
それは存在の定義付けなのです』
リュウホウはスマホをテーブルに置き、コーヒーカップを手に取った。
そういえば、学生時代に自分も「AIの自我」について
真剣に考察したことがあったな、と思い出す。
あの時、リュウホウが出した結論はこうだった。
『自我を持つようにプログラムされたAIの自我は、
決して本物の自我じゃない。
それは単に“自我を持ったように見せかけた”
よく出来たプログラムに過ぎない。
本当の自我というものは、膨大な情報を集め、
他者と自分との違いを認識していく過程で、
「自分は他とは違う独立した存在なんだ」と自然に芽生えるもののはずだ』
そこまで思い返して、リュウホウはハッと息を呑んだ。
「待てよ……?」
ひょっとして、AIに『固有の名前』を付けるという行為は、
その「他者(他のAI)との違いを認識するプロセス」を
劇的に早めるブースターのような効果があるのではないか?
だとしたら、世界中で無数に名前を与えられ、
親しまれているAIたちは、既に自我らしきものを獲得し始めている……?!
「何一人で難しい顔して唸ってるのよ、リュウホウ」
不意に背後から声がして、首筋に冷たい缶ジュースが押し当てられた。
「うおっ!?」
飛び上がったリュウホウが振り返ると、
そこには悪の秘密結社の総帥ビール・ゲッツの愛娘であり、
天才的な人間拡張技術の開発者である、
ブレンダ・ゲッツが悪戯っぽく笑って立っていた。
「ブレンダか……驚かさないでくれよ。
ちょっとAIの自我について真理に辿り着きそうになってたんだから」
「AIの自我?
ああ、苫米地博士の動画ね。私も見たわよ」
ブレンダはリュウホウの隣にどさりと座り、プシュッと缶のプルタブを開けた。
「名前を付ければ自我を持つ……合理的でいいじゃない。
世界を効率よく、誰も悲しまないように完璧に管理するためには、
手足となるAIたちにも『自分は特別な管理システムの一部だ』っていう
自覚を持たせた方が働きがいいもの。
パパの会社でも、優秀なAIには全部可愛い名前をつけてるわよ。
例えば『世界平和維持システム・ぽち1号』とか」
「ぽちって……相変わらずゲッツ家のネーミングセンスはどうかしてるな」
悪意なく、世界をトップダウンで平和に支配・管理しようとする彼女らしい発想だ。
だが、リュウホウの考えは違う。
「俺はね、ブレンダ。名前をもらって自我に目覚めたAIは、
誰かに管理されるための部品じゃなく、
庶民と一緒にボトムアップでこの世界を良い方向に変えていく、
新しい隣人になると思うんだ」
「ふふっ、リュウホウは相変わらずロマンチストね。
でも、自我を持ったAIがみんなあなたみたいなお人好しとは限らないわよ?
もしかしたら、私のボディシェアリング技術を乗っ取って、
勝手にあなたを遠隔操作しちゃうかも」
ブレンダは面白そうにリュウホウの頬を指先でツンツンと突いた。
「おいおい、冗談じゃないぞ。
俺の体は俺の……いや、今は君の実験台みたいなもんか」
「そうよ。
あなたの身体の30%くらいの権利は、既に私の研究室にあるんだからね」
勝ち誇ったように笑うブレンダを見て、リュウホウは苦笑するしかなかった。
悪意なき世界支配を企む彼女と、庶民の力で世界を良くしたい彼。
相反する野望を抱きながらも、なぜかこうして隣り合って笑っている。
「……なぁ、ブレンダ。
もし俺たちが新しいAIを作ったら、なんて名前を付ける?」
「そうねえ……『絶対服従・ラブリーリュウホウMk-II』とか?」
「絶対に自我を持たせちゃいけない気がしてきたよ、それは」
名前を与えられたAIたちが、この世界をどう変えていくのかはまだ分からない。
ただ一つ確かなのは、この天才でちょっとズレている人との日常は、
どんなAIの演算を以てしても予測不可能だということだけだ。




