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1日目 22時から23時 これから

イーナ視点

ちょっと長くなりました。

 私は天才魔導士のイーナ。

 王命に従って勇者の魔法に関する教育係兼従者となったんだけど、この勇者絶対頭おかしいでしょ。休憩もまともに取らないし、普通夕食といえば一時間くらいかけるものなのに、この勇者ときたらたったの十分よ。十分。

 大体、今日は王城で豪華なディナーが食べれるはずだったのに、王女様の作ったサンドイッチだけって。

 確かに勇者として実力があることは認めるよ。

 魔法なんていきなり詠唱なしの発動句のみなんて、天才の私ですらできないことをやってのけるし、それにレベル1からスタートしたくせに僅か5時間ほどでボスまで倒すなんて滅茶苦茶にもほどがあるわ。

 まあ、無茶苦茶遅くなったけど、これでようやく帰れそうでよかった。今日は王宮のお風呂にゆっくりつかって眠ろう。もう、へとへとだよ。


「さて、無事に入り口まで戻ってきたところだが次に向かうべきダンジョンはどこにあるんだ?」

「そうですね。手近なところですとミレーネ湿原の奥にあるレグザントの地下迷宮あたりだと思いますが、まずは一度城に戻りましょう」

「何のために?」

「「「!!?」」」


 は? このアホ勇者はいまなんって言った。


「アキラ様。今日はダンジョンで何時間も連戦をしたのです。しっかりと休憩を取らなければ明日に差し支えます」

「それはそうだが、地下迷宮っていうのはどこにあるんだ」

「ここから馬車で1日半と言ったところでしょうか」

「結構遠いな。だとしたらなおのこと、今から移動を開始したほうがいいだろう」

「い、今からですか!!」

「ちょっと、ちょっと。アキラ様無茶苦茶だよ。私たちも限界だけど、馬だってそんなには走れないって」

「街で馬を繋ぎなおせばいいだろ。休憩は馬車の中で十分だろ。さすがは王家の馬車というか、かなり広々していたし」

 

 バカなの? 私も初めて乗った馬車が無駄に広いなって思ったけど、だからってそこで寝ようなんて思わないわよ。ダメだ。この勇者イカレテル。

 王女様もそう思うよね。

 さっきからちょっと勇者の肩持ってるのが怖いんですけど!!


「アキラ殿。夜の行軍は危険を伴います。昼と違い街道沿いにも魔物の類は出ますので」

「それはレベルアップに都合がいいんじゃないのか。道中、俺たちに対応できないような魔物が出る可能性があるのか」

「それは……ございませんが」

「だったら、問題ないだろ」

「しかし、アキラ様、夕食の時間にも戻らなかったこともありますし、きっと城の者たちも心配しておられます」

「そんなものは伝令を送れば済むだろう。ここに来るまでだって馬車一台で来たわけじゃなかっただろ」

 

 ダメだ。この勇者話が通じない。なんでそこまでレベル上げたいのよ。

 意味が分からない。


「アキラ様もはやる気持ちはわかりますが、いくら何でもこのような無茶はお控えくださいまし。アキラ様にもしものことがあれば……」

「俺のことは心配しなくていい。何度も言ったが大切な家族が待っているんだ。無茶をする気はない。まだまだ余裕があると感じてるからやるまでのこと。気が進まないというのならこうしようか。ダンジョンの中でも話した通り、俺の提案に乗れる人員の手配を行ってほしい。二組体制でも三組体制でも構わない。それだけの人間を要してくれ。ここから王城まで片道一時間弱。人の手配の時間を含めても往復で二時間ちょっとってところか。それくらいなら待ってるから」


 意地でも前に進むんだ、このイカレ勇者。

 もう、これは手を引こう。引いてもいいよね。勇者も誰でもいいってそう言ってるんだし。


「エリノス殿下。悪いけど私は降りるよ。これ以上は無理。付き合いきれません」

「うむ。私も近衛騎士団の一員として王命に逆らうことはできませぬが、このような無茶には断固として異議を申し立てるであります」

「そんな、二人とも……」

「やる気のない人間とは一緒にしご……一緒にはいられないな。俺も無理をさせたいとは思わないから、さっき言った通り代わりの人員をよういしてくれ」

「アキラ様……わかりました」


 うわっ、王女様、説得諦めちゃったよ。まあ、私は帰るからいいけどね。


「じゃあ、伝令と新しい人出が来るまで俺はダンジョンで消えておくから」

「へっ? そ、そんな。アキラ様、それは危険です」

「大丈夫だろ。二階層以上に進まないから安心してくれ」

「そういう問題では……ちょ、待ってください――――」


 王女に背を向け勇者がダンジョンに舞い戻っていった。

 そのあとを王女が追いかける。

 え、マジですか。


「すみません。イーナさん、ボーグさん。お城への伝言をお願いします」

「は!」


 副団長が最敬礼をして、王女の背中を見送った後、私と目を見合わせた。


「あれは無いよね」

「そうですな」


 それでいいのか近衛騎士団と思わなくもないけど、あれは無理でしょ。ついてく王女様もたぶん変態だよきっと。

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