4日目 20時から21時 交代
「はぁ、こんな戦闘狂の付き合いとかマジで勘弁してほしいんだけど」
「誰が戦闘狂だよ」
「うっわ、自覚ないとかマジ最悪」
イーナがそこらの女子高生並みの言葉遣いになっていた。エリアスのような丁寧過ぎるのもどうかと思うが、もう少しまともにしゃべれないのだろうか。
本人が言うように天才かどうかはともかくとして、宮廷魔導士の一員であるくらいにはエリートのはずなのだが。
そもそも、どう勘違いすれば俺が戦闘狂に見えるのだろうか。闘争心がないとは言わないが、日本にいたころは喧嘩一つしたことがない。インフェルノに続いて新たな魔法を試していたら、思いのほかサクサクと魔物が倒せてしまっていたので、交代の時間をうっかり忘れていただけである。
「ゆっくり休めたのか?」
「あのねー、いきなり寝ろっていわれて昼間から眠れるわけないよ。ほんの二・三時間くらいだよ」
「そうか。6時間くらい付き合ってくれればいいさ」
「それでも日付を超えてしまうんですけど」
「とりあえずさっきは岩石地帯の方に行ったけど、北の方に沼地があるんだろ。今度はそっちを目指してみようか」
「そしてガン無視!!」
「休ませたんだからいいだろうが」
「そもそもボクは勇者とダンジョン攻略はしないって言ったのに」
「……いいから行くぞ」
北に向かって二人で歩き出す。
若者はすぐ文句を言う、というほど老けてないつもりだったが、イーナといると一気に年を感じてしまう。実際のところ、この世界で30近い年齢というのはかなり上なんだろうが。ケガや病気を治せる魔法のある世界だが、平均寿命は低いらしい。
「『マジックギャザリング』を使ってくれ」
「いやだ」
「いいだろ。今は歩いているだけなんだし」
魔力は回復しつつも消費していたので、結局まだ半分以下しか残っていない。だから戦闘がない間に回復しておきたいと思うのだ。
「便利な魔法だけどダンジョンの中はやめた方がいい。ここがどうやってできるのか王女様に聞いたよね。魔力の流れが普通とは違う。ここであんな魔法を使えば何が起こるかわからない」
「そういうものか」
「そういうものよ。天才魔導士のボクが言っているんだから信じてよ」
天才かどうかはともかく一理あるだろう。
「それに魔物のお出ましだよ。勇者様の大好きな戦闘の時間でしょ」
「だから、俺は戦闘狂じゃないって」
右手前方にオークの群れが見えていた。数は8頭と大した数ではない。インフェルノで遠距離から倒すか、それとも剣で直接倒すか。どちらでやっても簡単に倒せることは目に見えている。
だったらもう少し難易度を上げてしまおう。
そうだな。
すべてをカウンターで返してみるのはどうだろうか。
オームの群れに突っ込んでいきながら、俺の耳にどこからか笑い声が聞こえてきていた。




