3日目 12時から16時 新たなスキル習得
「えっと、アキラ様、それはいったい何をなさっているのですか?」
「新たなスキルを作れないかなと思ってね」
俺が一生懸命右手で丸を書きながら、左手で三角を描いているのを見てエリノスが首を傾げている。はたから見ているとさっぱりわからないだろう。
十分なジョギングを終え昼食をはさんで俺は、別の訓練を開始することにしたのだ。
ルセオン戦での最後の瞬間、すべての動きがスローモーションに感じられた。その感覚がわかってきたのだ。あの時は火事場のバカ力的に発動したけども、それを任意に出せないかと試行錯誤を繰り返した。スキルとして顕現している以上、それは可能のはずだったがエリノスにもセシルにもない能力のためコツを聞くことができたなかった。
しかし、考えてみればわかることだった。パソコンのCPUのクロック周波数を上げれば処理能力が上がるように、脳の処理能力を上げてやれば相対的に世界の動きが遅く感じられる。どうすればいいのかといろいろ考えてみたが、早い話が身体強化を脳みそにも適用すればいいと気がついた。
で、それを理解して実行したらうまくいった。
ただし、膨大な魔力の消費量だということにも気付いたわけだが。
さらにもう一つのことにも気がついた。パソコンの性能を上げるにはクロック周波数以外にもコアの数というものがあるということに気がついたわけだ。
つまりは情報の並列処理。
スキルというのはレベルの上昇以外にも、何らかのきっかけで発現するらしい。それは思考加速が死にそうになった瞬間の脳の限界突破で生まれたように。
思考の並列化、それを可能とするために右手と左手で違うことをやるというのを試している。俺はそもそもマルチタスク型の人間だ。
膨大な量の仕事を振られ、それを処理するためにはたくさんのことを同時に進行できなければとてもじゃないが間に合わなかった。必然的にそういったことができるようになっていた。
客先と電話をしながら、全く関係ない資料を作ったりなんてのは基本中の基本。
無断欠勤となった俺は早々にクビになっているだろうが、そのツケを上司が払っているのかと思えば少しばかり胸がすぅっとする。
丸と三角程度では簡単すぎるので難易度を上げて、右手で嫁の好きなところベストテンを書きながら、左手で生まれてくる子供の将来設計を描いてみる。
さすがに文章となると難しいが、ゆっくりでもいいからと頑張ってやり続けていたらある瞬間を境にさらさらと二つの文章を同時に掛けるようになっていた。
「よし」
「へ、えっと、これは……」
「おそらくスキルが手に入った」
「そ、そんな。スキルはこんなに簡単に手に入るものではありませんよ」
「いやいや、簡単じゃなかったさ。これも偏に愛の力だな」
唖然としているエリノスに向かって頑張ったことを伝えると、なぜか顔を赤らめていた。右手に嫁への愛を、左手で娘への愛を表現したが、参ったな。もう一人子供が生まれたらどうしようか、三人を同時に愛するにはどうすればいい。
。右手で妻への愛を、左手で娘への愛を表現してみた。でも、この先どうしたらいいんだ。二人目の子供が生まれたらどうしたらいいんだろうな」
「アキラ様?」
エリノスがきょとんとしている。




