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3日目 10時から11時 セシルとエリノス

 才能というのは本当にあるんだろうなと思った。

 まさか、奥義スキルを小一時間の訓練で使えるようになるとは思わなかった。もちろん、アキラさんが努力していたのは目の前で見ていたのでわかっている。

 一心不乱に剣を振るうさまは見ている私の方まで緊張するほどだった。

 技の権限に成功したアキラさんは、イーナさんという魔導士に詰め寄られていたけど使い過ぎた魔力の所為で崩れるように眠ってしまった。慣れないうちはどうしても魔力の消費量が多くなるから仕方のないことだけど、急に意識を失って文句を言う相手を失ったイーナさんがなんだかかわいそうだった。ぷりぷりと文句を言いながら馬車の外に戻っていった彼女を可愛らしいと思ったのは秘密にしておこう。


「お願いしておいてなんですが、セシルさんはどうして私たちに協力してくださる気になったのですか」


 敷物の上に寝かせたアキラさんを見つめながら、王女様が気さくな感じで私に話しかけてきた。雲の上の存在の彼女だけど、こうして話をしてみれば普通の少女にしか見えなかった。不思議なお方だと思う。


「お金のためですよ。狩人の生活は浮き沈みが激しいですから」


 私は本当のことを言えば狩人ではない。弓を持っていたから彼らが勘違いしたに過ぎないけども、ひとまず狩人ということにしておこうと思う。完全に間違いだというわけでもないのだから。


「そうでしょうか。ユニークスキルを持っていますし、狩人として相当研鑽を積まれている方だと思います。それなりに安定した収入を得られているのではありませんか」

「ふふ、買い被りですよ」

「そういうことにしておきましょうか。少し踏み込んだ質問をしてもよろしいですか」

「王女様なんですから、そんなに気を使っていただかなくても大丈夫ですよ」

「セシルさんこそ、あまり距離を置かないでくださいまし。これからともに戦おうというのですから」

「ですが」

「少しずつで構いませんので」

「努力します」

「お願いしますね。それで、エンブルームでの用事についてお伺いしても」

「ただの届け物ですよ」

「急ぎということはただの届け物というわけではないのではありませんか」

「そんなに大層なものではないです。薬なので出来れば早めに届けたいなという程度の話です。薬が切れているわけじゃないので、二・三日遅れたところで問題はなかったんです。だから、まあ、急ぎといえば急ぎとアキラさんにはお話ししたんです」

「ご病気ですか。セシルさんにはご協力いただけるのですから、よろしければ私が治しましょうか」

「ありがたいお言葉ですが、神聖術の治療ではどうすることもできない類のものでして」

「それはつまり……」

「ええ、呪いです」


 神聖術は術者の力量にもよるけども、あらゆる病気や怪我を治癒することができる。が、呪いと呼ばれる不浄なる力に蝕まれた体を癒す力はない。神聖術にはアンデッドなどの魔物を浄化する力も備わっているのに、それらの力も一切通用しないのだ。


「その方のご容体は」

「薬で症状を緩和させるのが精いっぱいというところですね」

「そう……ですか」


 顔も知らない私の知人のために胸を痛めてくださるようだ。こんなにやさしい人が王女であるのなら、この国の未来は明るいのかもしれない。魔王を討伐することができればなのだけど。

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