ウサギとカメ その四
日曜の元気なご挨拶。
パロディ昔話第百十二弾です。
今回は前回に引き続き、『ウサギとカメ』で書かせていただきました。
前回のものより若干教訓めいた話になっております。
どうぞお楽しみください。
昔々、あるところにウサギがいました。
ウサギは足の速さを自慢にするばかりに、足の遅い動物をいつもバカにしていました。
ある日カメを見つけたウサギは、いつものようにからかい始めました。
「やぁカメさん! そんな遅い動きでどこに行くのかな?」
「ウサギさん?」
「世界で一番遅いんじゃないのー? どうしてそんなに遅いんだろうねー!」
「それは僕達のご先祖が昔、海に生きていたからだよ」
「え?」
戸惑うウサギに、カメは静かに話を続けます。
「僕達のご先祖は陸で生まれ、海に住むようになって甲羅を身に付けたと考えられているんだ」
「そ、そうなの……?」
「海の中では下から襲われる事が多いから、お腹に甲羅を作った。その甲羅が背中をも覆うようになったみたいなんだ。多少重くても海の中なら問題ないからね」
「へぇ……」
「そしてそのうち、再び陸に戻ったご先祖がいた。それが僕達リクガメになったとされている」
「ど、どうして……? 甲羅は陸だと重いんでしょ?」
「それはわからない。偶然か、環境の変化か……。でもその結果、僕達はこうして陸で生きているんだ」
「……そうなんだ……」
ウサギはしみじみと頷きました。
「君達ウサギのように、素早く動く事に特化した生き物もいれば、僕達のように頑丈な甲羅で身を守って生き延びた生き物もいる」
「うん」
「だからどちらがすごいとか、どちらが駄目なんて事はないと思うんだ。それぞれがご先祖から受け継いだ『生きる力』を大切にしていけばいいんだよ」
「わかった! ……あ」
頷いたウサギは、自分のさっきの言葉を思い出して、耳をしゅんと垂れさせました。
「……あの、遅いなんて言ってごめんね」
「いや、わかってくれればそれでいいよ」
「ありがとう!」
こうしてウサギとカメは仲良しになりましたとさ。
めでたしめでたし。
読了ありがとうございます。
カメの進化は本当に興味深いです。
百年くらい経ったら、トゲのついた甲羅に火を吐くカメが生まれるかも……。
ヒゲの配管工を呼ばなきゃ……。
次回は『一寸法師』でお送りしたいと思います。
よろしくお願いいたします。