表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/4

第2話 魔王殺しの武器

ガウ:「2話目で魔王を殺す武器が出てくるほのぼの系物語とはいったい……」


 私の名前はリディア。


 職業『魔法研究家』。

 え?もうその自己紹介はいらないって?


 はいはい。


 それでは今日の研究対象を発表しまーす。


ゴトッ。


「なんであるか?その短剣は……?」

 おっと。珍しくガウちゃんが興味をそそられましたか。


「む?いやな、なにかとてつもなく大きな力がこのナイフから感じられてな……」


 おやおや?ガウちゃんが短剣の周りをグルグル回って観察をしております。


 それに、クンクンと匂いを嗅いじゃってまるで猫みたい。


 もしかしてわかっちゃった?わかっちゃったのかな?


「ふむ。さぞかし名品なのだろう。おそらくだが、魔王であった頃の吾輩を傷つける事ができる短剣だと見た。

 確かに研究するにはもってこいの題材だろう。ご主人様よ。一体これは何なのだ?これほどの物をどこから手に入れたのだ?」


 やっぱりガウちゃんレベルだとわかっちゃうんだー。


 正解はね?それ、『魔王殺し』の武器なのよ。


「ぶふぉ!?ななななんというものを用意しているんだ貴様!私を殺そうというのか!?ファーファー」


 はいはい落ち着いて。毛を逆立て威嚇しないでいいから。


 別にガウちゃんを殺そうとなんてしてないから。


 第一こんなもの珍しくもなんともないでしょ?


「いやいやご主人様よ。普通の人間を殺すには包丁でもペン先でも殺すことができる。しかしな?我輩のような高位レベルの魔族……。魔王という存在を倒すにはそれなりの武器が必要なのだ。例えば聖剣。忌々しい神共から授かったとされる武器などの事だな」


 そうよねぇ。説明ご苦労様。


「なぜそうも落ち着いていられるのだご主人様よ。これは神々の武器と同等の力を有していると言っておるのだぞ?」


 いやぁね?ガウちゃんが前居た世界と比べちゃ悪いんだけど、魔王を殺す事ができる武器なんてこの国には沢山あるんだから。聖剣とか聖弓とかの他にも聖包丁、聖ペン先、聖銃とか聖ミサイル、聖荷電粒子砲とか……。


「ぐぬぬ……。なんだかよく分からんがパパ殿が使っている武器であろう?全く人間と言う奴はどれだけ神から武器を与えられたのやら……」


 この世界で最近誕生した魔王殺しの武器の殆どは、人間が自前で作っているんだけどね。


「なんだと!?」


 まぁそれは置いといて、今回は私自身の手で魔王殺しの武器の能力を失わないように別の武器に作り変えてみたいと思うの。


「……」


 大丈夫よ。ちゃんと許可はとってあるわ。


「許可とな?」


 そう。許可。今の時代むやみやたらに武器を作ることは違法になっちゃったの。見つかったら怒られちゃうんだから。


「難儀な時代よのぅ」


 本当よねぇ~。まぁ、そんな訳だからお父さんに許可を貰って早速加工して見たいの。


「ほうほう」


 それじゃぁ作業開始ぃ!


「………。うぅむ……。いつ見てもご主人様の錬金術は目を見張るものがある。金属がまるで粘土のようだ」


 ふっふっふ~。この位ならば簡単だよぉ。


 ほ~ら、こんなに伸びるんだよ?


「う、うむ……。して、それをどのように変化させるのだ?このまま細長い剣を作ったとしても強度が下がるであろう?」


 うんうん。実はねガウちゃん。この短剣の一部の金属を使う予定なの。


「一部だと?」


 そう、一部。

 ここにもう一本ナイフを用意します。家にあったものだから果物ナイフだけどね。


「うむ?このナイフからは魔力が一切感じないが、魔力秘匿の術でもかかっておるのか?」


 ううん。違うよ。これはね、ただの普通の果物ナイフ。


「普通の果物ナイフだと?」


 そう。それでね?この普通の果物ナイフの刃の部分をこの鋭く尖らせた魔王殺しのナイフの金属をくっ付ければ!


「む?」


 完成!即席魔王殺しの果物ナイフ!


「むむむむむ?」


 もう説明しなくても良いかもしれないけど、これは刃の部分である数mmだけ魔王を殺せる武器になったの。


「なんだと!?」


 まぁ、実験して見ないと分からないんだけどね?


「実験とな?」


 そう。実験。ここでお父さんから預かった実験材料を出すね。

 えっと、ここの箱に入れてくれてあったはず……。あ!あったあった!


「何だその透明な筒の中に……ふぎゃぁあああああ!?」


 うわぁ!びっくりした!!何?なんでそんなに驚いているの!?


「それぇぇぇええ!!我輩の腕ぇぇぇえええ!!魔王の時、憎き勇者に切り落とされた左腕ぇぇぇえええ!!!」


 ん?え、えぇ。その通りよ。これは今ガウちゃんについている左腕……じゃなかった左前足の先輩にあたる存在ね。


「腕に対して先輩後輩なんて呼ぶ者を初めて見たぞ!」


 もう!うるさいなぁ。それは良いじゃない。


「良くない!」


 さて、これで何をしようかというと、


「まさかそれを使ってその武器でちゃんと切れるか確認をしたいとか言い出すのではなかろうな!?」


 おおっと!これは意外ね。正解よガウちゃん。冴えてるぅ~。


「おおっと!これは意外ね。じゃないわい!!!我輩の腕を細切れにするなど許せるわけがないだろう!!」


 でも、もう使わないでしょ?これ。今は新しい腕付いているんだし。


「それはそれっ!これはこれっ!」


 はい。パカッと箱を開けてね。


「あ、こら!人の話を聞くのだ!」


 うんと。ここに刃を当てて…。


「人の話を聞けと言うとるだろうが!!あぁぁ!ここにきていつも我輩に人の話を聞けと言っていた爺やの気持ちが分かるようになるとは…」


 あら?貴方はやんちゃ坊主だったのね?まぁそんな感じするけどねー。俺様俺様言っているような自意識高い粗暴な男って感じ。

 嫌だわー。そういう男って魅力感じないわー。


ザクー。


 おぉ、切れ味最高。


「あぁぁぁあああ!!なに自然な感じで腕を半分にしておるのだ!!我が左腕がぁああああ!!!」


 あーもぅ。うるさいなぁ。雄でしょ!?


「せめて男でしょと言ってくれぬかな!?それに自分の腕が切られるのを見れば騒ぐのは普通であろう!」


 あれぇ?切れたけど消滅しないなぁ。やっぱり刃の部分だけだと威力が落ちるのかな?


「聞けぃ!」


スパン!


「ひぃ!!四分割!」


 ねぇ、うるさいって言っているでしょ?


「は、はいぃぃぃ」


 それで、やっぱりこれって威力落ちてるって解釈して良いのかな?


「い、いや。そ、それで正常だと思うぞよ?」


 ん?そうなの?


「あ、あぁ。そもそも切り傷を与えただけで腕全体が消滅する訳がなかろう。その武器の特徴は魔王に傷を与えられるという特性のものだ。つまりそれを使って頭なり心臓なりを攻撃すれば魔王は死ぬというものだ」


 あ~。そういう事かぁ。


「つまりそれは正常に魔王殺しの武器として機能しているという事だな…」


 ふーん。じゃぁ、実験は成功ね。お父さんに報告する為に資料をまとめなきゃ。


「うぅぅ……我輩の左腕……」


 …………はぁ。悪かったわよ……。ついでに言っておくと、それ複製品だからね?


「ふ、複製品?」


 そうよ。つまりそれ、細胞を培養して作られたコピー品って事。オリジナルの魔王の左腕としての性能は変わらないから魔王殺しの武器開発に役立っているの。


「そ、そうなのか……」


 そういう事。

 さて、資料をまとめますかねぇ。


 でも、この腕どうしようかな……。そうだ!


ボッ!!


「ひゃぁ!用がなくなったからって言って燃やさないで!!」


 えっ?もうしょうがないなぁ。


 消火消火っと。


「うぅぅ……いくら複製品といっても吾輩の腕がコゲコゲに……」


 もうやめてよー。これじゃぁ私が猫の虐待をしているみたいじゃない。


「しているだろうよ!」


 まったく。まぁいいわ。もう用はないから箱にしまって……あれ?


「む?どうしたのだ?」


 う、ううん。なんでもないのよ?


「何故箱を隠す……」


 本当になんでもないったら。


「えぇい。隠すでない!見せるのだ!」


 あっ!こら!奪い取るな!


「ふはははは!猫の素早さを舐めるでないぞよ?

 さて、どれどれ。この箱に何かあるのか?おや?張り紙がされているなぁ。『ガウ公の左腕【オリジナル】』。なるほど。オリジナルの腕だったのかぁ。

 ……ふわぁああああああああああああ!!!!」


 ヤベっ。



リディア:この物語はこのように心温まる平和なお話です。


ガウ:「ナイフで人の腕を四分割するような話が平和であってたまるか!」


リディア:ほら、武力あっての平和って現実的じゃない?


ガウ:「ご主人様。今度は平和運動団体を敵に回すのか!?」


リディア:そういうあなたはバリバリ武闘派の魔王だったらしいじゃない。お父さんから聞いて知っているわよ?作らなくてもいい四天王の下に八将軍やら十六―――。


ガウ:「にゃんの事だかさっぱりだニャ(裏声)」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ