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第1話 その名はガウちゃん

 私の名前はリディア。


 職業は魔法研究及び魔道具研究者。


 性別は女。


 高名な魔女であるお祖母ちゃんの孫であり、同じくそこそこ有名な魔法使いであるお父さん。そして、そこそこその界隈では有名な魔法研究者のお母さんの子供である。


 私?私は特に有名じゃないと思うよ。


 年齢はヒミツ。


 昔母の魔法の研究を手伝った事を切欠で魔法研究にドハマリし、現在までお父さんに呆れられるほどの研究を続けている。


 よく研究関係で知り合った人から今も母の手伝いをしていると思われているようだけど、それは昔の話で今は別々で研究をしている。


 そもそも顔を合わせて話でもしない限り、お互いの研究内容なんて知らないと思う。


 つまり私が今やっている研究は私以外誰も知らない私独自で行っているものだ。


 仕事の内容を具体的に言うと、要は新しい魔法の開発や既存の魔法を効率よく発動させる為の研究と言えば分かりやすいかな?


 普段は実家の一室で研究に没頭しているんだけど、流石に一人では出来ない事もあるから助手達と一緒に日々作業をこなしているの。


 え?助手達って誰かって?


 そうね。今紹介できるのはここに幸せそうな顔をして寝ている猫。名前はガウちゃん。性別は♂。

 灰色の毛に黒い縦線いくつも入っている猫ちゃんで、サバトラとか言われている種類。キリッとした顔つきが特徴。


 お父さんが昔拾ってきてくれて、そのまま私のペット兼使い魔にしているの。


 元々はどこかの世界の魔王だったとからしいけど、ボロボロになっていたところを助けられたみたい。


 今では研究をする時人型の姿に変身して手伝ってくれる大変便利な存在です。


 ほら、起きて!


バシバシ。


「うぐ……。もう少し丁寧に起こせ……」


 全く。見た目は可愛いのに、なんでこんなにおっさんみたいな渋い声なのかしら。気に入らないなぁ。


「え?何故我輩は寝起き早々、こんなに辛辣な批判をされているの?」


 まぁ、それはともかく今日も楽しい実験よ!


「別に研究は楽しくはないのだが。……それよりも飯をくれ。朝飯を所望する」


 はいはい。ほら、そこにキャットフードがあるでしょ?


「わーい。カリカリだぁ」


ガツガツガツ。ハッハッハ。ウ"ーウ"ーウ"ー。


 キモい……。はぁ。魔法で声を変えようかしら。


「ウ"ーウ"ーウ"ー。んん??まて、それだけは止めてくれ。もう前の姿から残された特徴は声しかないのだ!」


 なら、もうちょっと可愛くなる努力をしなさい。


「うん。分かった(裏声)」


 キモい……。


「え?我輩常に罵倒されなきゃいけないの?」


 はいはい。食べ終わったらさっさと魔法の研究よ!


「う……うむ。分かっておるわい。先に水を飲ませてくれぃ」


 はいはい。


「うむ。ご苦労である」

 

ピチャピチャ。






「して、今日は何の研究をするのだ?昨日までやっていた実験はもう成果を纏め上げたのだろう?」


 えぇ、そうね。あれはもう発表するだけ……。今日から新しい研究……というか実験をしようと思うの。


「ふむ。そうかそうか。それで、我輩を起こしたという事は、何か我輩が手伝うことがあるのか?」


 勿論。この実験はガウちゃんが居ないと始まらないのよ。


「ほほう?」


 それでね?その実験というのは前々からやってみたかった事なんだけど……。


「ふむ。ではその前々からやってみたいことを今日から始めるのだな?かねてからの願いを実現させるというのは良いことだ……。我輩も昔……」


 その話長くなるならまた今度聞くね。


「むぅ……なんとも話しがいが無い娘よ」


 ガウちゃんの昔話は置いといて、今日は『猫の姿に変えられた元魔王の去勢手術』が魔法でできるか。っていう実験をしようと思うの。


「ふぉぉぉぉぉおおおおおおお!?なんじゃそのピンポイントな実験は!なんでそれが研究に繋がるのだ!!」


 いやぁねぇ。ちゃんとした研究であり、実験よ?こういった事例をちゃんと作っておかなくちゃ今後去勢手術が必要な猫になった魔王が出てきたら大変でしょ?


「そんな事例は滅多に無い!!」


 まぁ、でも必要な事例がここに居るから…。


「なんでじゃ!我輩にそんな手術は必要ないわい!!」


 いや~、でもガウちゃん。近所のメス猫と最近イチャイチャしてるじゃない?ほら、猫と猫魔王とのハーフが出来ても大変だからさぁ~。


「いや、あれは違うから!ミーちゃんとはそういう関係ではないから!あっ!やめっ、魔法で拘束とか卑怯者―――」


 ふぅ。全く手こずらせてくれる……。大体私に彼氏が未だにできないってのに使い魔の分際でイチャついているとか許せないんだよねぇ。


「うわぁ完全にリア充に対する妬みだぁ!それに絶対我輩関係ない!」


 まぁいいや。大人しく去勢されちゃって?


「イヤァァァアアアアアア!!行動理由が不純であり横暴だぁぁああああ!!!道徳心が無いのか貴様ぁぁあああ!!誰かぁぁあああああ!助けてぇぇぇえええええ!!!」


 ちょっ!あんまり大声出さないでよ!!


バンバン!!


「おい、うるせーぞ!朝っぱらから!!」


 あ、お父さんが扉の向こうで怒ってらっしゃる。


 ってか、お父さん帰ってきてたんだ。


「パパ殿ぉぉおお!!パパ殿ぉぉおお!!助けてくだされぇ!!タマタマ取られちゃうぅぅぅううう!!」


「はぁ!?おい、リディア!何をやってんだ!開けろ!!」


 ……はぁい。







「それで?お前はガウ公の去勢をしようとしていたのか?」


 はい……。


「ううぇーん。パパ殿ぉ~。怖かったよぉ~」


「全く……魔王をむやみに虐待しちゃいけないとあれほど言っただろ?」


 はい……。


「パパ殿?魔王って本来虐待されるような存在ではないのだよ?」


「ガウ公は黙ってろ。後、リディアは念話じゃなくて自分の声を出しなさい」


「う"え"?あ"、はい"…あ、じばらく―――声出じでながった―――がら、出じ方―――忘れでた」


「はぁ……どうして家の家族は皆引きこもりばかりなんだ……。おいガウ公。お前には娘を外に連れ出すようにしろと言っていたはずだろ?ご近所で妻子に出て行かれたんじゃないかって心配されたんだからな!?」


「うん!?あ、あぁ。実はこれでも外に出るようにはなったのだぞ?庭先ぐらいだが……」


「はぁ……。もういい。とにかくガウの去勢は禁止だ。俺が性欲抑える魔法を掛けとくから」


「え!?パパ殿!?」


「はぁ~い"。ゴホンッゴホンッ!」


「動物虐待反対!!後生です、パパ殿後生ですからぁ!」


「まぁ有る意味現在進行形で後生だよなお前。……そらよ」


「いやぁあぁぁぁぁぁぁ」








 ようやくお父さん部屋から出て行ったわね……。邪魔してくれちゃって。


「グスン。もうお婿に行けない……」


 なんかガウちゃんが私のベッドでぐったりしながら泣いている。まるで死にかけの猫ね。


 ガウちゃん?ガウちゃんはここに来る前沢山お嫁さんが居たんでしょ?今更お婿さんとかないでしょう?


「それはそれ……これはこれ……。男にはプライドというものがあるのだよ……。女の貴様には分かるまい……」


 なんか女を馬鹿にされている気がするなぁ。

 私、そういうのはいけないと思うよ?


 まぁいいや。報復として別の実験でもしてみましょうかしら。


「今、報復って言った!?」



 こうして私の日常は今日も過ぎて行く。





リディア:この物語はこのように心温まる平和なお話です。


ガウ:「どこが平和だ!動物虐待として訴えられるぞ!」


リディア:魔王が猫に変化しているだけだからセーフ、セーフ。


ガウ:「魔王保護団体のみなさーん。ここに魔王を虐待をする飼い主がいまーす」


リディア:残念ながら世の中は『のじゃロリババア』の魔王しか保護対象として見ていないのよ?


ガウ:「なんとも歪んだ世界なのじゃ!(裏声)」

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