空想質量①
突然の襲撃。
いくらここにいるのが警備の屈強な連中でも、パニックは避けられなかった。
ここまでが第一段階だ。
おそらくだがこの後、結界が展開される、俺たちを絶対に逃がさないために。
走る、走る、ばれないように。
この町にある四棟の古びたマンション。
そしてそれらを使って、警備を欺く算段。
これらを考えたのは、新入りの、メルドという男だった。
彼は、とても頭がキレる。
いま、隠れて進んでいるルートも、すべて彼が考えたものだ。
警備の目をかいくぐり、次の作戦に移る。
スイッチを押して、先ほどいたマンションを爆発させた。
それを見届けてから、目標地点まで走った。
ここまではいい、ここまでは良かった。
「ッッ!!」
曲がり角を曲がった瞬間、頭がぶつかった。
ぶつかってしまった非を詫びようとしたが、少し考え、やめた。
ここは、人がほとんど住んでいない。
そしてこの町は、過去にも犯罪が起こりまくっている。
先ほどの銃声と爆発音で、外に出る馬鹿もきっといないだろう。
相手の顔を見て、疑問は確信に変わった、先ほど、あの場にいたやつだ。
心配そうに近寄ってきている、チャンスだ。
殺す勢いで、力を籠め、殴りかかった。
力の方向が、重なる、重ねる。
骨が砕けた音が、そのあたりに広がった。
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少し前……
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〈ミドリ〉
「とりあえず、合流じゃない?」
現場はパニックになっている。
流れ弾をもらってしまう前に、早くここから離れたかった。
〈レーナ〉
「そうだね、あっちのほうも心配だし」
良かった、どっちも同じ意見だった。
僕らは歩く、狭い路地を抜け、集合場所の公園についた。
…ちょっと理解に苦しむ光景があった。
〈ミドリ〉〈レーナ〉
((何やってんだあいつら))
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バッターボックスの土を均す。
一度、二度、足で均してから、ピッチャーのほうを向く。
息を整え、フォームを作った。
一球目。
アウトローに、ズバッと効いたストレート。
大丈夫、初球から打ちに行く球じゃない。
二球目、三球目は外に少しそれたカーブだった。
さっきちょっと教えただけなのに、もうコツをつかんでいる。
四球目。
外に逃げる、変化量の大きいスライダーだった。
ギリギリ手を出さなかったので、スリーボールワンストライクになった。
勝負は次、五球目だ。
セレちゃんの手から、ボールが離れていく。
アウトコースギリギリ。
私は、四球をもぎ取った。
さてと、第四打席に移り
〈ミドリ〉
「はいストップ~~」
〈レーナ〉
「暇だからって、野球するか普通?」
私は肩を落とした。
あ、ほら、セレちゃんも肩を落としてる。
〈ミーヤ〉
「今いいとこだったのに~~」
〈レーナ〉
「うっせ、作戦はもう始まってんだぞ」
〈ミドリ〉
「てか、あそこまで引っ張ったらホームランでしょ」
それもそうか。
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〈ミーヤ〉
「いやぁ~未経験で投げれんのすごいね〜」
〈セレ〉
「まぁ、運動はできるほうなんで」
他愛のない談笑、尚、仕事中である。
今僕たちは、ジャスティスの所まで移動している。
会話を聞きながら、ふと僕は上を見上げた。
…さっきは気づかなかったが、マンションの中層階あたりに、通路のような物が伸びていた。
先程襲撃を仕掛けて来た奴も、ここを通っている可能性がある。
〈シャル〉
「…確かに、上は警戒したほうが良さそうだ」
シャルさんもそれに気付く。
二人でまた、見上げた時。
無機質な窓の羅列、その一箇所が光った。




