EP003『抗えない血』
信じることって、いったいなんなんだろう。
生きることを諦めることになったとしても、信じることを貫き通すことは正しいのだろうか。
それは俺にはきっと、ずっと、難しい問題だ。
夢の中にいるのがわかった。
母さんと父さんが現れて、どこか納得した様子で笑っていた。妹だけは苦しそうな表情で――自分の運命を受け入れられないという表情で、俺を見つめている。何度も名前を呼ばれた。お兄ちゃん、いかないで。お兄ちゃん。
妹の悲痛な叫びが聞こえた瞬間、目の前が急に白く弾けた。ゆっくりと目を開けるとやけに騒がしい往来の真ん中にいた。
赤く染まったコンクリートの上で、俺だけが立っている。何かを見下ろしている。
あれは母さんだ。隣に父さんがいて、俺の足元には妹が――。
全員、血が足りない。輸血しなければ、俺の前からいなくなってしまう。それなのに俺は磔に遭っているかのように体が動かせない。血を求めるために声を上げたいのに、声帯が潰れたように震えない。どうして、なんで。それは許されないことだとでも言うのか。
誰か、助けて。大切な人たちを助けたいだけなのに、助けて。助けて――!
「ユータくん、起きてください」
「みゃー!」
聞き馴染みのある声で夢から呼び戻されて、飛び起きる。いつもの様子で俺を覗き込むマスターは、しかしどこか心配そうに眉尻を下げている。そして、布団の上から少し怒った様子のモカに踏みつけられていた。
「わ、モカ痛い! 踏むのやめてー!」
「みゃう! んみゃう!」
さっきの心配そうな表情はどこへやら。マスターがそれを見てくすくすと笑っている。笑わないでくださいよ、と拗ねると、すみません、と返ってきた。
時計を見ると時刻は午前10時過ぎ。まさかマスターに起こされる日が来るなんて。
「珍しいこともあるんですね、ユータくんが寝坊なんて」
今日はお店が休みの日。だから手の込んだ朝ご飯でも作ろうと思っていたのにな。というよりも、マスターが休みの日にこんなこと――俺を起こすなんてことがあるのか?
あるとしたら、この人まさか。
「マスター、徹夜しましたね?」
「していませんよ?」
「ウソです。そんなきっちり朝から着込まないでしょ、あなたは」
「……ユータくんにウソは吐けませんねえ」
この人はとにかく店とインクの調合とモカのこと以外はからっきしだ。ご飯を作らせればお米と水の量を間違えて炊くし、お茶を淹れさせればそのことを忘れて他のことに熱中するし、服のボタンは掛け違えて着る。俺がこの店でお世話になるまで、この人はどうやって生きてきたんだろうと思ってしまう。
この間はたまごを電子レンジに入れて爆発させていた。そのくせお客さんの対応は完璧なのだから憎めない。
「ところでユータくん、お腹が空きました」
自分の身支度をして、まずモカに朝ごはんをあげる。マスターはモカに呼ばれて朝になっていることに気づいたんだろうな。いつもそうだ。多分新しいインクの調合方法だとか配色を調べていたんだろうけど……健康のためにも徹夜は控えようって約束したのに。
とりあえずそのまま台所へ向かう。お腹が満たされて機嫌を良くしたモカが満足げに鳴くのを聞きながら、パンを二枚取り出した。どうせブランチの時間だし軽くで良いだろう。フライパンに軽くオリーブオイル、そこに粉チーズを薄めにでもたっぷり振りかける。その上にハムとパンを一枚乗せて、弱火でしばらく待つ。ひっくり返したくなるのを耐えて、いよいよ表に返せば、こんがりしたパンの上に乗るカリカリの粉チーズとハム。裏面を焼くためにまた少し待てば、粉チーズで簡単にできるカリカリ粉チーズハムトーストの出来上がり。
同じ用量で二枚目を焼いていく。適当な野菜をサラダとしてお皿に乗せて、トーストもそこへ。飲み物は徹夜の胃にも優しいようにミルク多めのコーヒー。それを持ってリビングへ行くと、椅子に座っているマスターの膝の上でモカが気持ちよさそうに眠っていた。調理中に鳴き声がしなくなったと思ったらこんなところにいたのか。
「お待たせしました」
「ありがとうございます。……うん、香ばしいパンのにおいがして美味しそうですね」
いただきます。手を合わせて二人で食べ始める。カリッ、サクッ、そんな音が部屋に響く。
「それで、マスターはまたいつもの実験ですか?」
「ええ。没頭していたら徹夜していました」
「しないって約束したじゃないですか」
「次は気をつけますよ。……本当ですって」
信用ならないなあと思いながら食べ進める。彼は昨日着ていたのと同じ袖の長い黒いワイシャツとスラックス。全身真っ黒の服装で、少し長い青漆のような色をした髪の毛を緩く結んで横に流していた。いつも掛けている胡散臭そうな丸眼鏡も変わらない。
持ち上げたカップの中、そのミルクコーヒーの水面にぼやけて映る自分の顔。それをじぃっと見つめて少し固まる。さっき見た夢は、やっぱり昨日の依頼のことを引きずってしまったのだろうか。
この店ーー望月洋墨店ーーは、表向きは普通の文房具店だ。主力は万年筆やそのインク。通常の文具類も扱っている。しかし実際は特殊なお客さんが多い。それがこの店の本来の姿。
マスターだけが調合できる願いが叶うインク、願墨。それを求めて、日々依頼人がやってくる。本当に願いが叶うのかどうかは断言できないけれど、真実だということを俺は少なくとも信じている。
マスターは願墨について多くを語らないから、俺が知っているのもそこまで多くはない。自分の名前すら必要以上に口外しないくらいなのだから、俺がすべてを知ることができるのはかなり遠い日なんだろうな。
「あの、マスター」
「なんですか?」
胸の中につっかえているものがある。こういうのは早くトゲ抜きしたほうがいいのだ。だから、思い切って聞いてみることにした。
「行き過ぎた信仰は、悪になるんでしょうか」
「ああ、昨日の依頼のことでーーもしかしてそれでうなされていたんですか?」
「え、俺うなされてましたか」
「ええ。それでモカが起きて、私のところに来たんです」
家族の夢を見てしまって。そう言うと、マスターの表情が真剣なものに変わった。それは彼が俺の家族を『知っている』から、だろう。
俺の家族は父と母、そして四つ下の妹がいた。その日は家族で出かけていて、父の運転で県道を走っていた。帰り道だった。トランクには妹が買った服がたくさん詰まっていて、あとは父が新調した趣味の釣り道具。俺と母は二人の買い物の付き添いで、疲れたけど楽しい一日。それで終わるはずで、それでよかったのに。全部、なくなった。
信号無視をしたトラックに真横から追突された俺達の車は、そのまま大破。衝撃で意識を失い、粉々になった窓ガラスや車の破片に突き刺され、全部なくなってしまった。
俺はその犯人の顔も名前も知らない。最期に見たのは、苦しそうな妹の表情だけ。そのあとの俺は意識を失ってーー。
「ユータくん……ユータくん!」
ハッと意識を戻す。ダメだ。最近はこんなこと少なくなっていたのに、突然思い出すなんて。
吸って、吐いて。目の前にあるテーブルに触れる。俺は今、生きている。
「すみません、俺また」
「謝らなくていいんですよ。おかえりなさい、ユータくん」
ふわりと笑ったマスターは、そのままパンにかじりつく。そうしてちょっとだけ覚悟したようにサラダを見たあと、レタスをフォークに突き刺して食べて、ほんのちょっとだけ嫌な顔をした。この人野菜苦手だもんなあ。
皿の上のパンとサラダを食べ終えてコーヒーを飲みながら、マスターはゆっくり話し始めた。
「悪になり得るんじゃないでしょうか。行き過ぎたものはなんだって。コーヒーだって飲みすぎれば悪ですし、パンだって食べ過ぎれば悪です。野菜は元から」
「悪ではないです。ちゃんと食べてください」
「……食べたじゃないですか」
「褒めませんからね、当然です」
不服そうだが放って置く。俺はその話を自分の分を食べ進めながら聞くことにした。
「店にある文房具だって買いすぎれば散財のもと。人によっては悪になります。願墨もそうです。願いの行き過ぎは悪になると私は思っています」
「そう、ですね。……昨日のお客さんは、どうなんでしょか。彼の信仰は悪なんでしょうか」
「少なくとも、私たちが何を言っても、彼があの信仰をやめる、なんてことはないでしょうね。だからそれが正しい、とも言えません。信仰は人によっては救いにもなりますから」
昨日のお客さん――津久田文則さん――のことを思い出す。津久田さんはお母さんを救いたいという願いを吐き出した。
彼のお母さんは輸血が必要になる可能性が高い状態で、普通ならばすぐに手術に入る。しかし、手術は行われてはいなかった。それは医者の怠慢でも、適合する血がないわけでもなく、たったひとつの『信仰』によるものだった。
とある宗教。それを彼のお母さんは信仰している。息子である津久田さんもまた、その信者。
それは血を崇拝するもので、血縁や血液そのものを聖なるものとしていた。神にも流れる血を我らが勝手に扱うなど言語道断だとかなんとか。
そのため、健康診断も血液検査だけは禁止する徹底ぶり。それが一時期社会問題にもなっていた……とマスターは語った。
真剣に教義を守る津久田親子は、その中の一つである輸血の禁止に向き合った結果、手術に踏み切ることをやめた。とはいえ、そのままでは死んでしまう。
医者からは早ければ明日か明後日には手術をしないといけないと言われている、けれど輸血はできない。
そんな迷いの中、浅い眠りの中で文則さんが見た夢に、この店が出てきたようだった。
*
「夢の中で、ネコが喋ったんです。この店に来れば願いが叶うって。道も案内してくれて。それで朝起きて、変な夢見たなって思って母さんの見舞いに行こうと外に出たら、夢の中のネコが歩いてたんですよ。そう、眼の前にいるその子です。そのまま、誘われるようにここに来ていました」
「モカは散歩が好きですからね。夢の中のネコと同じだったのは偶然でしょうけれど。――――ですが、夢の中のお話は本当ですよ」
よく晴れた土曜日の午前中、津久田さんは店を訪ねてきた。夢の中と同じ光景がそこにあるということを受け入れられていない様子できょろきょろと周囲を見回している。
マスターに案内されるがまま合言葉を唱え店の奥へと進んだ津久田さんは、その願いを吐露した。
「津久田さん。貴方の願いはわかりました。そのうえで一つ、お伝えしなければいけないことがあります」
「なんでしょうか?」
「願いを叶えるインクーー願墨は、その願いを叶える本人の血液か涙を調合の際に必要とします」
「血はダメです!」
津久田さんは声を荒げて叫ぶ。願墨の調合にはマスターの言った通り、使用者の血液か涙が必要となる。そうしないと、誰が使ってもいいものになってしまう、らしい。そうなると乱用が起こる。それを防ぐために、この店の初代店長が考案したそうだ。
お客さんの中でも、血液を提供する人は少ない。指先に針を指してほんの少し採血するのだが、やはり抵抗があるらしい。俺だって採血は苦手だし、そりゃそうだ。だから涙を、となる人は多いのだが……ここまで拒絶する人は初めてだった。
彼の場合は、信仰による拒絶なのだけれど。
「……承知の上で、お伝えしたまでです。どちらを選んだからと言って、願いの叶いやすさが変わるだとか、そういったことはございませんので、その点はご安心ください」
「それなら、よかったです」
マスターの言葉に少し安心したらしい津久田さんは、ソファから立ち上がろうとすらしていた勢いを落ち着けて、改めて深くそこへ座り直した。とはいえ、涙だってすぐに出るものではない。泣きながら話すお客さんは多いけれど、彼はそういった素振りがない。マスターもそれを思ったようだ。
「しかし津久田さん。……ここで、泣けますか?」
「泣く、ですか。ええ、おそらくは」
そうは言うものの、数分経っても涙が出る気配はない。役者でもないのだ。泣けと言われて泣ける人なんてそうそういない。
俺が淹れた緑茶を一口飲んで、津久田さんは思い切ったように話し始めた。
「すみません。泣くのにも時間がかかると思います。母さんに泣くなと言われて育ってきたもので」
「お母様に、ですか。失礼ですが、お二人だけで暮らしているのですか?」
「はい。幼い頃に父さんが失血死したんです。リストカットで。それ以来母さんと俺は今の宗教に救われてきました。父さんが失血死したことは一族の恥です。神はそんなことをお赦しにならない。もっと早く入信していれば、父さんが死ぬ前に知っていれば、俺と母さんは父さんを救えたかもしれないと思うとーー」
太腿の上で握りしめられた拳が震えている。それだけ苦しかったのだろう。神が流した血は信者に流れ、それは信者たちには勝手に扱えないもの。その教義さえ知っていれば、父は救われていたと、そう信じているからこその震えだった。
「俺と母さんは本当に必死に、神のために信仰を守ってきました。それなのにどうして、どうして輸血が必要な状態になんかなるんでしょう。神は母さんを試しているのでしょうか」
「ひとつの教えをずっと守り続けて来られたのはすごいことです。そこは、誰にも咎められません」
「ええ、ええ! わかってくださるんですね! 正直、俺は神以外に願いを叶えてもらうなんていけないと思っていました。それにこの店のことも、信じていいのかわかりませんでした。ですが、あなたはわかってくださるんですね!」
津久田さんは、ずっとひとりきりだったという。
正確には母親とふたりだったのだけれど、新興宗教の信者ということから周囲からは距離を置かれていた。成人しても仕事をして稼いだお金で献金していた。友人のない彼は、誰の理解も得られなかった。母親は宗教のために身を捧げており、息子である文則さんには宗教のこと以外での話はしない。けれどそんな母親のことを文則さんは尊敬しているらしかった。
自分も神のために、母のように身を捧げたいと、本当に思っている、と。
わかってほしかったんです、と小さく津久田さんが呟くと同時に、はた、と涙がこぼれた。ぽた、ぽたと目から溢れる涙を拭う津久田さんの指先からは、透明な涙がまるで血液のようにつぅと流れていた。
すぐにその涙を採取したマスターは、津久田さんが落ち着くのを待ってから誓約書を交わした。
調合をしている間、津久田さんは自分が泣いたことが信じられない様子で、けれどどこかすっきりとしたような顔をしていた。
「お待たせしました。津久田さん、貴方の願いを叶えるインクです。ーー――もう一度、願いを教えて下さい」
「俺の願いは、母さんを救いたい。それがどんな方法でも」
「偽りは、ありませんね」
「はい、神に誓って」
津久田さんはそうして、店を後にした。乾いた涙で光る手で、大事そうに願墨を持ちながら。
*
「ユータくん」
「はい」
食器を洗い終わり、リビングに置かれたダイニングテーブルの椅子に座る。飲み物のおかわりを要求されたので、今度は普通のコーヒーを淹れた。マグカップを二つテーブルに置いて渡すと、マスターがネコのようにちろっと舌を出してコーヒーを啜ろうとしたのが見えた。この人猫舌なのに大丈夫なのかなと思ったら案の定だったらしく、舌を火傷しましたと拗ねられた。
「自業自得です。淹れたてをすぐに飲もうとするから」
「熱いうちが美味しいと言うじゃないですか」
「猫舌には厳しいかと」
「今世界中の猫舌を敵に回しましたよ。ねえ、モカ」
「モカはまだ寝てるじゃないですか」
気持ちよさそうにマスターの膝の上で眠るモカは、ぐるりと丸まって起きる気配がない。
「津久田さん、ですけど」
「ええ」
マスターに尋ねるかを躊躇う。輸血でしか助けられないと医者が言ったことが、願墨で覆るのか。
津久田さんは本当に輸血を選ばないで母親を救えるのか。
疑問が浮かんでは、増えていく。けれど、聞いてはいけない気がした。答えが出ているような気がしたのだ。
「お母さん、助かるといいですね」
「ええ。そう願わずにはいられませんね」
真剣な表情でマスターは答える。どんなお客さんにだって、その願いは叶ってほしいと思う。けれど、命がかかるものは特に、そう強く思う。
ときにユータくん、と言われて返事をする。そこにはまだ真剣そうな表情のマスターがいた。
「フラッシュバックが強そうでしたけど、もう、平気ですか」
フラッシュバック。そう、俺はなにかをきっかけにして、あの日のことを思い出してしまう。家族との記憶。事故の記憶。トリガーはいろいろで、交通事故のニュースはもちろん、あの日買った……釣り竿だとか、そういったもの。ときには夢の中でそのトリガーが引かれることもある。
事故直後は頻繁にあったが、しばらく経った今ではその頻度は減っている。とはいえ、完全にないわけではない。今日みたいなこともある。
あの日、事故のあと。意識を失った俺が見たのは病院の天井と心配そうな見知らぬ男の顔だった。青漆の髪に丸い眼鏡の男ーーマスターだ。
買い物に出かけている中偶然事故現場に居合わせたマスターは、発見者として救急車に同乗してくれたという。本当に、現場の真ん前で、それを見たらしかった。
家族の中で生存者は俺だけだった。それに同情したのか、それともなにかの気まぐれか。生活能力が一切ないこの人は、俺を店で預かると言ってくれたのだ。そのあたりは本人に聞いてもはぐらかされるけれど、マスターなりに思うところがあったんだろうなと、勝手に考える。
ちなみに大事故だったにも関わらず無傷だったらしい。相当な幸運だったんだろう。すぐに退院できた。悲しさを思う間もなく家族の葬儀だとかをした記憶がある。家族で住んでいたマンションは引き払い、もぬけの殻になった部屋を見て泣いた記憶もある。なのに、全部靄がかかっている。
母方の親戚が事故のことは処理してくれた。なんでも犯人は俺の家族同様に事故の衝撃でショック死しており、しかも身寄りがなかったらしい。裁判にはできず、保険金だけが手元に入った。
親戚もマスターも、そのお金はユータが使いなさいというが……家族が死んで入ってきた金と思うと使う気持ちには一切なれず、いつかのためにと貯金だけしている状態だ。
そんなことがあったというのをマスターは知っている。なんなら親戚よりも、俺の家族の死を目の当たりにしているからか真剣になってくれた気もする。だから、今日はもう、きっと。
「うーん。ちょっと不安はありますけど。でもなんか、大丈夫な気がします」
「曖昧ですね」
「そんなもんですよ、この症状はいっつも」
うららかな正午。今日はモカを撫でて過ごすのも、いいかもしれない。
*
午後、マスターの膝の上から飛び出したモカは、日課の散歩へと出かけていた。
ぽふっ、ぽふっ、と音が聞こえそうな音で駆け回っていると、小さな城が見えてくる。変わったデザインのその城は一軒家の真横に建っていて、異質さを放っている。その城には庭があった。モカがその庭に入っていくと、大きな声が飛び交っているのがわかった。
「あの裏切り者親子! 輸血で助かろうとしやがって!」
「今度あの母親のほうが生きて会合に顔出したらぶん殴ってやれ! 散々チヤホヤしてやったのにこれだ!」
「息子はどうする? ありゃいい金蔓だぞ」
「金毟り取って反省させりゃいい!」
モカはそっと、その庭と城から離れていったーー。




