ここはどこわたしはだれ
彼は目覚めると人間になっていた。
しかも知らない場所、自分は元の姿とは全く違う毛色をしている。…っあ、にんげん?僕は人間になれたのか…。これではまた未練がましく、女々しくなってしまいそうだな…。
そう思ったが、あの人の名前も顔も、もう思い出せない。彼の中の未練は長い年月と慌ただしい主との生活で掻き消されていた。
あの子もきっといい人生を送れただろう。幸せになれただろう。巡り巡って良い恋だった。
今世は僕のために生きよう。主様と約束したから。僕が正しいと思うことをしてやりたいことをして、自由に。
しかしながら、彼は全く知らない場所、全く知らない人間になっていたのを思い出す。
そう、まさしく、ここはどこ、わたしはだれの状態であった。
ここは前世の来世ではない。自分の魂が、この子の体を乗っ取っている状態のように思われる。
うう、昔の自分が目に浮かぶ。最も、主様に善良であることをモットーに生きると誓っているし、元々自認善良なのだから、この子を悪いように動かそうなんて思っていない。
長い黒髪、藍色の目、日に当たったことのないのようなまっさらな白い肌。
この家は主様のおうちよりは小さいけれど、木造で頑丈な家をしている。
いいところのお嬢さんだろうか。
しかし、性別が変わってしまったな。まぁ、前世で化けていた時は女だったから、慣れてはいるのだが。さすがに自分のものではない体を見るのは如何なものか。
はぁ、とため息をついて、周りを見渡す。
物音はせず、人の気配も感じない。この子は一人でここに住んでいるのだろうか。
まだ16やそこらだと思うのだが。
ふと、他の部屋の方から窓から差し込んでいる太陽の光とはまた違う不思議な紫色の明かりが漏れ出ているのに気がついた。
寝台から降り、光のある部屋の方へ近づくとその明かりの下には机があり、書物と手紙のようなものが置かれていた。
「これは…」
まず手紙のような紙を開いてみる。
「あれ、何も書かれてない…」
するとぶぉんっという音とともに頭に音声が流れ込んでくる。
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おはようございます。よく眠れましたでしょうか。
私はこの世界で死と再生を担当しておりますイディリシスと申します。この世界はあなたのいた世界とは違う場所になります。あなたの世界にいらっしゃった神のお願いでこちらの世界に転生することになりました。
すこしばかりの祝福とこの世界を学ぶための書物を置いております。
この部屋、空間から退出される際は書物をよく読んで学んでからにしていただけると嬉しいです。
退出後戻ってくるときはこの手紙をにぎって帰宅とつぶやいていただけると戻ることが可能です。
……。それと、その体の持ち主はかつて私に代々仕えた者の末裔でした。その子は直系、末代の男児です。
生まれながらに女としてこの家に匿われて育てられていました。どうかこの子の第2の人生を楽しいものにしてあげてください。
「お、お…男…?」
…。それではステータスとつぶやいてください。
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「ステータス…?」
すると青白い光が浮かびあがり、文字の形に変化する。
「これは…」
そこにはいろいろな数字や文字が書かれていた。
ベルーナ・クラーク(男)
19歳
(レベル) 1
(体力) 100
(魔力) 100
(所持金)
金貨10枚
(スキル)
多言語理解
鑑定眼
修復
イディリシスの加護(状態異常無効・老化停止)
(適性)
月属性 無属性
刀 弓
これは、どういうことだろうか、
最初のは名前か。この体の持ち主はベルーナ・クラークというのか。
ベルーナは、名前で、クラークは苗字か?
外国の言葉のようだし、多分順番はそっちだろう。
匿われてと書いてあったな。多分苗字は隠しておいた方がいいだろう。
この国ではどうか分からないが、苗字のない人は過去にいた…はずだ。偽名でも使っておくべきか?
でも、レベルとか、魔力とか、スキルとかは全くもってわからない。
魔力…、妖力や神聖力とは違うのだろうか。
うーん、と首をひねって考えるがやっぱり理解できなかった。
諦めることも、人生には大切な時がありますし。
一息ついたところのを見計らったように、イディリシス様が再び話しかけてくる。
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レベルは魔法や体を使うことで上がります。特に戦いの場面で伸びやすい傾向にあります。
体力や魔力は0に近付くと眠気が押し寄せて眠ってしまうので注意です。0にならないように管理はきちんとおねがいしますね。魔力が100の場合はまあだいたい小さめの攻撃魔法10発分くらいでしょうか。
スキルや魔法はイメージが大切です。スキルや魔法を使いたいと思ったらそう念じたらできます。普段から自然とできている場合もあります。
魔術書や世界の仕組みに詳しく載っているのでよく読んでおいてください。
スキルはひとりひとり違うものを持っています。これは新たに獲得するのはかなりむずかしいです。様々なことに挑戦して研鑽を積んだり私たちのような存在から与えられる必要があります。
適性は変わりません。適性のないものはほとんど使えないですし、魔力や体力の消費が大きくなります。適性のあるものを伸ばすとよいでしょう。
お金と武器はは机の横においてある袋の中にはいっています。容量はあなたが2人分くらいだとおもってください。
食料は奥の部屋の保冷室にあるので調理して食べてください。
それではがんばってください。
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近くにあった本を並べてみると、
『歴史』『地理』『魔術書(上級編)』『世界のしくみ』
という教科書のような本ばかりだった。
「あれ、上級編か…。」
まぁ、イメージが大切っていってたし、大丈夫かなぁ?
まずは世界のしくみからだな
それからその日から、イディリシス様のいいつけを守り、ここにある本を読み切ることからはじめた。
他の部屋を散策していると、2階の窓際にちょうどいい高さのハンモックとテーブルがあったので、それを拝借して本を読む。
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この世界は現在、4つの大陸から形成されているようだ。
今は東の大陸にいるらしい。
ダンジョンと呼ばれる魔物の迷宮があり、そこで魔物を倒してでてきた物や、宝箱からでてきたものを売ることでお金を稼ぐことができるようだ。ダンジョンは敵をすべて倒してもだいたい2日ごとに再度現れるようだ。
またダンジョン以外にも、街の外れでは魔物が出ることがよくあるらしい。
新しいことだらけで頭がパンクしそうである。
気になっていた適性は
日、月、火、水、木、風、土、無の8つの属性があるようだ。
今いる国の貨幣は
白金貨 大金貨 金貨 銀貨 銅貨 鉄貨があり、
単位はリン
1リン=鉄貨1枚
10リン=銅貨1枚
100リン=銀貨1枚
1000リン=金貨1枚
10000リン=大金貨1枚
100000リン=白金貨1枚ということだ。
つまり今所持金は金貨10枚だから10000リン持っているということだ。
地理には
今どこにいるのかがかかれたページがあった。
とても便利だ。
今はリサンドセム皇国のウォード村とロペス村と呼ばれる村の間にある森にいるようだ。
リサンドセム皇国…聞いた事のない場所。
「うぐっ…、な、頭が…」
一瞬激しい側頭部の痛みに苛まれる。
数秒経つとそれはおさまった。
一体、なんだったのだろうか。
ちなみに権力者の地位は
皇帝 公爵 侯爵 伯爵 子爵 男爵 となっているようだ。
歴史書によると今皇国では権力争いが勃発しているようであった。
もしかすると、この子の生まれが関係しているのかもしれない。
イディリシス様にこの子の幸せをと頼まれたんだから、やっぱり名前はなるべく秘匿するべきだな。
魔術の本以外を読み終えたとき、ふと空腹感を覚え、なにもたべていなかったことを思い出す。
人間の体はお腹がすいたら作物や肉を食べる必要があるというのはよく知っている。
そのため、彼は食料の入っている部屋へ足を動かした。
保冷室へ続くドアを開けるとふわりと冷たい空気に触れた。
さっきまでいた部屋との寒暖差に驚きつつ中へ入ると大きな肉塊や魚、野菜などがおいてあった。
「あ、まって、僕、これ、料理できるの????」
彼 改め ベルは料理のことも彼は全く覚えていなかった。
なんとなく、火を通して、食べるというのが頭にあるだけだった。
人間の姿で人間の食事を食べたことはあれど、作ったことなど皆無ののだから。




