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媛西電車  作者: Hankyu3058
17/29

⑰小松駅「桜の動揺」

⑰小松駅

12時集合って言ってたのに小松駅には誰もいない.

さっきの急行にも3人は乗っていなかったし,どうしちゃったのかなぁ.

忘れられたってことはないよね

せっかく早起きして慣れない電車に乗ってきたのに…

切符買うのに苦労したのに…

いくらなんでも遅すぎる.予定の電車からもう3本は別の電車を見ている.

小松についてすぐ買ったお茶だってもう空っぽだ.

トイレに行くついでにもう1本何か買ってこよう.

今日は暑い…こんな日にいい加減にしてよね~.

ホームに誰もいないだけでも怖いってのに真上は高速道路だよ~.

…そういえばこれがあったわ.

もうすっかり腕時計化してて,本来の機能を忘れていたスマホ.

綾奈ちゃんにメールする.

『今どこ?』

おかしいな~,10分たっても返事が返ってこない.

何やってるんだ?

死んでないよね. やだな~縁起でもない.

そんなことを考えていたら,不意にこの駅に似合わないメロディとアナウンスがまたなった.

『まもなく普通,鳴門行きが到着します.白線の内側に下がって…』

これ聞くの何回目だろう.

もういっそのこと乗っちゃう?

西宮で待つことにする?

普通に乗ってれば着くんだっけ?

駄目駄目,どれがどこに行くのかもわからないのに,そんなことしたら余計に会えなくなる.早くぅ~.

と,ドアが開き,3人が降りてきた.

「ごめん. 桜ちゃん,お待たせしました」

綾ちゃんがかしこまって言う.

「お待たせしましたじゃない! 遅いよ,もう13時過ぎ! 1時間遅刻~.

一体どうしたんよ~.」

「ちょっとね.」

綾奈ちゃんがにやにやしながら近づいてきて言った.

「ひとつ前の駅で二人の願いが叶ったから許してやって」

意味わからないんだけど.一個前の駅?

駅名表を見たら桜三里とある.

地味に自分の名前が入っていて嫌な駅だ.

そんな駅で何があったっての?

二人の願いって何?

その前に二人ってどの二人? 組み合わせパターン3通り.

綾奈ちゃん&美波ちゃん

綾奈ちゃん&桜川

美波ちゃん&桜川

…綾奈が”許してやって”って言うんだから正解は3番だな…

ってそんなんいちいち考えなくてもわかりそうなのに…私,暑さでやられたかな.

で,二人の願いってなに?(2回目)

綾奈ちゃんが刑事みたいな顔して囁いた.

「あの二人,どうやら友達以上になったらしいです.」

「ええ―――っ!」

驚きのあまりかなり大きな声を出してしまったらしく

周りの山に自分の声が響いた.

「どうしたの桜」

「えぇーっ!?」

再びさけんでしまった.

桜川,今,私のこと呼んだ?桜って呼び捨てにした?

しかも超ナチュラルに!!

たしかに今治でふざけて下で呼んでいたけど

まだ続いていたの!?

おまけにいま気付いたけど,桜川と美波ちゃんの周りになんとな~く漂う

はずかしそうなハッピー感!

「桜ちゃん,鼻膨らんでる~. わろたーっ」

綾奈ちゃんが肩をぽんぽんする.

「美波ちゃんと桜川,付き合い始めたの?」

「うん」

二人で同時に答える.

人を待たせて,1時間も待たせて,あんたたち何してんだ~.

落ち着け.頭を整理しよう.

一個前の駅で二人はつきあうことを決めた.松山から3人で出てきてるのに何で桜三里で急につきあうことになったんだ?

草食系桜川から?鉄ヲタ美波から?

想像できんな~.

「ねぇ,お茶買いにいかない?のど渇いた.」

「行く.泣きすぎて喉がからから」

へ?泣いた?喉が渇くほど?

つきあうのに号泣して喉が渇いたん?さっぱりわからない.

自販機に向かおうと背を向けた二人.

あれ?なんで二人とも背中が汚れてるの?

しかも桜川はさびっぽい色ついてるし.

ま,まさか桜川が美波を無理矢理…

いやいやいや,綾奈ちゃんだっていたんやし,ないないない.

「桜ちゃんもお茶いる?」

「桜~,聞いてる?お茶どうする?あれ?桜がかたまってる」

桜川,ほんとうに桜川なん?

雰囲気変わりすぎやろ…

「桜川ぁーっ一体何が…?」

「桜こそ,さっきからどうしたの?叫んだり,固まったり,百面相してるんだけど.」

桜川はにこにこ笑っている.

…なんか心の中でしゃべりすぎてのどの渇きが増したかも.

2リットルペットボトル要るかも…

「お茶どうする?ジュースがいい?」

「とりあえず買っといて飲みまわす?」

飲みまわす!?

なんて不衛生な!

いやそんなんどうでもいいって.

私の返事を聞かずに3人は自販機の前に到着していた.

「とりあえず買っとくよ. おーいお茶」

「それともこっちのほうが好み?」

「十六茶もあるよ.」

「あ,静岡茶もある.」

「冷たいのか暖かいのか」

いや何でもいいよ. っていうかいつか強制的にメニュー選んだ奴はだれだ!

なんでいまこんなに優しくお茶の種類を聞いてくれるんよ.

「買っとくよ おーいお茶」

「まって桜ちゃんはこういうの強いこだわりがあったような気がするから」

「レモンで.」

「ほらやっぱり. お茶じゃなくてレモンティーを選ぶでしょ?」

何でだよ!レモンティーじゃなくてほっとレモンだよ!

間違えた.優しいんじゃないわ.

いろいろ考えてくれてるわりに好み全然違ってるし.

桜三里で一体なにが!そもそも松山で何が!

「あっ,電車来た.やばいよ. あの電車乗り遅れたら20分待ち~」

「桜ちゃん,行くよ!」

頭を整理するどころか,何がなんだかわからないまま到着した急行に乗り込んだ.

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