1パート
「あの頃のおもちゃもかっこいい!」
健太は帰りの車の中で興奮しながら言った。
「お姉ちゃんも一緒に遊ぶの?」
「ううん。一緒にじゃなくてお姉ちゃんが欲しくて買ってる。」
愛はアイドル好きと特撮好きというのはなんとなく思っていたがおもちゃまで買うとは。しかし、そんな愛も過去で真美の本当の思いを知った。
「お姉ちゃん、おばあちゃんと仲直りしたんだよ。」
「そうか。30年後でついに母さんとの絆を取り戻したか。愛ちゃんもすごいな。未来の娘にまで遅れをとるとはな。」
「なんか遅れたの?」
「うん。俺は父さんとか母さんとかと比べて立派とは程遠い人間だし、しかも未来の娘はすごい人なのに俺は全然すごくない。ほんと嫌になるよ。」
「ふーん。誰が言ったの?だめだって。」
「いや、まだ誰からも言われてないけど言われるようになる。」
「なんでわかるの?」
「なんでだろう。タイムスリップしたのかな?」
「なんだ、わかんないんじゃん。」
たしかに、健太の言う通りである。誰かに面と向かってだめだと言われたわけではない。
でも、自分の事は自分がよくわかる。何も残せて来てはいない。
家に着いた。久々の我が家である。懐かしかった。またしばらくはここの厄介になりそうだ。
唐突に優が出て来た。
「お、お父さん。」
「おお、帰ってきたか。この男の子は・・・なんだ、こんなちっこい子とデートか。お前もやるな。まぁ、否定はしないさ。気にするな家に入れ。」
いつもの優である。人の話を全く聞いてない。いつもの父のパワーにおされペースに乗せられる。
「んで、少年。名前は?」
「健太です。」
「今日はオムライスを拓人が作ってくれるぞー!」
「ほんとー!わーい!」
何も聞いていない。ポカーンとする拓人に優はいつものテンションで言った。
「だそうだ。まぁ健太がどうしてもというんだから作るしかないな。作り方は教えてやる。」
もうむちゃくちゃである。でももういいか。練習したかったし。こう思うと父さんと一緒に料理するのって初めてかもしれない。