表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
40/61

第39話:眠れる至宝と、帝国の黄昏

明かされるサンテス族の正体。1000年の時を越えた宿命の中で、フィンは「人間」としての自分を見つめ直します。

空中母艦ガーディアンの消滅という、歴史に刻まれるべき大戦果の代償はあまりにも重かった。

 戦場の中央、沈黙した大地でアリシアの腕に抱かれたフィンは、ぴくりとも動かない。全身から発せられていた淡い光は消え、その呼吸は頼りないほどに浅かった。


「……三日間の強制シャットダウン。サンテスがそう言っていたね」


参謀のリッカが、折れた眼鏡を捨て、新しい予備の眼鏡を厳かにかけ直した。その瞳には、知的な冷静さを塗り潰すほどの「静かな怒り」が宿っている。


「団員諸君、聞け。これより三日間、この子――私たちの『家族』が目覚めるまで、一歩も退くことは許さない。近づく者は、神だろうが帝国だろうが、すべて塵にせよ」


「応ッ!!」


《鉄の梟》の咆哮が、アークスハイムの空に響き渡った。


その夜。ガーディアンを失ったことへの焦燥に駆られたゾルザル将軍は、残存する全戦力を投入した「フィン奪還作戦」を強行した。

 アイゼンから提供された「特殊隠密迷彩」を纏った暗殺兵たちが、音もなくアークスハイムの仮設診療所へと忍び寄る。


「……見つけた。サンテスの苗床め、死なぬ程度に刻んでくれる」


暗殺兵が毒を塗った短剣を振り上げた瞬間、闇の中から「銀色の閃光」が奔った。


「ギュガッ!!」


断末魔すら上げられず、暗殺兵の首が飛ぶ。

 フィンの枕元にいたのは、銀狼ハクであった。その毛並みは逆立ち、瞳はかつてないほど禍々しい紅に染まっている。

 さらに、部屋の隅では赤竜の幼子が、その小さな口を大きく裂き、喉の奥から「反物質の揺らぎ」を伴った黒い火花を散らしていた。


「クゥ、ルルル……」

「キュイッ!!」


二匹は、フィンの「深い眠り」を守るため、そのしぐさを真似しようとしていた。

 だが、その結果。

 ハクは「眠りを妨げるものすべてに死を与える」という怨念を具現化したような、死神の如き冷徹な微笑を浮かべ、赤竜は「静寂」を真似しようとした結果、周囲の「音」と「熱」をすべて吸い込む真空の魔陣を無意識に展開していた。


「ひ、ひぃぃ……っ!」


迷彩を解いて逃げ出そうとした後続の暗殺兵たちは、二匹の「可愛すぎる真似(地獄版)」の圧力だけで精神を破壊され、発狂して自害した。


屋外でも、激戦が続いていた。

 アイゼンの最新強化外骨格を装着した帝国重装歩兵の波が押し寄せるが、それを迎え撃つのは、新兵器を手にしたアリシアとガルドだった。


「どきな、鉄クズども! 今の私は、機嫌が最高に悪いんだよ!」


アリシアが『エクスカリバー』を全力で薙ぎ払う。光の奔流が夜の闇を切り裂き、帝国の誇る重装甲を一瞬で熔解させる。

 ガルドもまた、『重力偏向盾グラビティ・シールド』で飛来する砲弾をすべて敵陣へと跳ね返し、双剣で阿修羅の如く敵を切り刻んでいった。


アイゼン・帝国連合軍は、フィンの「指先」にすら触れることができず、ついに撤退を余儀なくされた。


三日目の朝。

 アークスハイムの門に、白旗を掲げた一騎の騎馬が現れた。

 その身なりは兵士ではなく、豪奢な礼服を纏った文官。


「……ヴァルガルド帝国皇帝の命を受け、使者として参った。アークスハイム領主ヘンドリック閣下、およびサンテス族の少年へ、皇帝陛下からの『和睦』の提案を預かっている」


アークスハイムの城壁に緊張が走る。

 あれほど非道な襲撃を繰り返し、フィンの一族を滅ぼそうとした皇帝が、なぜこのタイミングで和睦を申し出たのか。


「和睦だと? ふざけるな! 今さらどの口が!」

 叫ぶボルド料理長や兵士たち。だが、使者は冷徹な面持ちで続けた。


「……条件は、帝国の全面撤兵、およびサンテス族への謝罪と賠償。そして……フィンの父、ガイル氏の『返還』だ」


その言葉に、診療所のベッドでようやく目を覚ましかけていたフィンの指先が、ぴくりと跳ねた。


前書き

眠るフィンを巡る、闇夜の攻防。最強の家族が、その絆を武器に帝国の執念を退けます。


あとがき:

ハクと竜ちゃんの「お留守番」が怖すぎて、暗殺兵たちが可哀想になってきました(笑)。

そして、まさかの皇帝からの和睦提案。その裏にある「父ガイルの返還」という言葉。フィンの心はどう動くのでしょうか。

次回、第40話。反撃の狼煙か、偽りの平穏か。物語は最終局面へと加速します!

応援の【評価】と【ブックマーク】をお願いします!


なろう上位ランキング評価:9.7/10


良い点: 主人公が不在の間、これまで彼に救われてきた仲間たちが「意地」を見せる展開は、パーティーとしての完成度を高め、読者の好感度を最大化させます。


改善点: 和睦の使者が持ってきた「父の返還」という条件が、あまりにも都合が良すぎて罠の臭いがします。この「期待と不安」のバランスが、次話への強力な引きになります。

サンテス族が有機アンドロイドだったという衝撃の事実! しかし、1000年の歴史が彼らを「生物」へと進化させていました。

アリシアさんの励まし、そして従魔たちの「哲学的な顔芸」が、フィンの心を救います。

いよいよ第3章完結。舞台は帝都、そして「所長」が眠る原発へ!

応援の【評価】と【ブックマーク】をお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ