第34話:《鉄の梟》、正規軍の「矛」へ
アークスハイムの軍事顧問として正式に契約した《鉄の梟》。フィンの技術で武装した彼らは、もはや一国の軍隊を凌駕する存在へ。
アークスハイムが発動した経済制裁は、帝国の物流を麻痺させる「静かなる毒」として機能していた。しかし、飢えた獣が最後に選ぶのは、理性的対話ではなく死に物狂いの略奪である。
「――よって、アークスハイムはこれより、小国家連合の規約に基づき『準戦時体制』へと移行する」
領主ヘンドリックの執務室。そこに集まったのは、フィンの最新技術で完全武装した傭兵団《鉄の梟》の幹部たちだ。
「帝国の兵站は限界に近い。だが、奴らは不足した物資を強奪するために、国境沿いの輸送路へ正規の騎士団を投入し始めた。……これに対し、我が国の正規軍は防御に特化している。攻めの手、すなわち『矛』が足りん」
ヘンドリックは鋭い視線をアリシアへ向けた。
「アリシア団長。貴公らをアークスハイムの『特別外人部隊』として正式に雇用したい。任務は、国境付近に集結しつつある帝国騎士団の補給拠点を叩き、その侵攻能力を根底から粉砕することだ。……報酬は、望むだけ出そう」
「報酬なんて、後回しでいいさ」
アリシアが、腰に下げた『光子駆動剣・エクスカリバー』の鞘を軽く叩く。
「フィンを、私たちの家族を傷つけた奴らだ。頼まれなくても、最高に痛いお返しをしてやるつもりだよ」
出撃前、アークスハイムの軍事訓練場。
そこには、これまでとは一線を画す装備を身に纏った傭兵たちの姿があった。
フィンのサンテス・テクノロジーによって強化された鎧は、帝国騎士団の重厚なプレートメイルよりも遥かに軽く、かつ高密度の魔素装甲を内包している。
「……信じられねえ。この重さで、岩石弾を跳ね返しただと?」
オオカミ獣人のギバザが、自身の腕の防具を確かめながら驚嘆の声を上げた。
彼の脚部には、フィンの理論に基づく「反発駆動ユニット」が組み込まれている。軽く地を蹴るだけで、その巨体は弾丸のように加速し、模擬標的を瞬時に粉砕した。
「ギバザさん、無理に魔力を込めないでください。それは『物理法則』の反動を利用して動くものだから」
フィンが、ハクと赤竜を連れて調整を見て回る。その手には、サンテスの演算を補助するための小型端末があった。
「参謀、リッカさん。そちらの『カーボンファイバー製長剣』の調子はどうですか?」
「最高だよ、フィン。……軽すぎて、自分の腕が伸びたような錯覚に陥る。これなら、音速を超える『神速』の衝撃にも、剣身が耐えられそうだ」
リッカは黒く輝く刀身を滑らせ、満足げに微笑んだ。
かつての《鉄の梟》は「大陸最強」と謳われた。だが今の彼らは、そこに「未来の科学」という魔法を上書きされた、史上類を見ない「機甲傭兵団」へと進化を遂げていた。
「よし、野郎共! 準備はいいか!」
アリシアの号令が響く。彼女が『エクスカリバー』を抜き放つと、白銀の刀身が励起し、訓練場全体が昼間のような光に包まれた。
「アークスハイムの矛として、帝国の喉元に食らいつく! フィンの家族を名乗るなら、格好悪いところは見せるんじゃないよ!」
「「「「応ッ!!」」」」
その光景を、城壁の上から見守る給仕係のメイドや若い職人たちが、祈るように見つめていた。
「フィン様……どうか、お気をつけて」
「あんなに小さいのに、あんなにすごい人たちを導いて……」
一方、フィンの足元では。
主人の「格好良い出撃シーン」を真似しようとしたハクと赤竜が、再びメイドたちのトラウマを抉っていた。
ハクは銀色の毛を逆立て、瞳を漆黒に変えながら「……グル、ル」と、地獄の底から響くような死神の唸り声を真似る。
赤竜はフィンの「真剣な眼差し」を真似ようとした結果、両目から熱線の余波である蒸気を噴き出し、周囲の地面をドロドロに溶かしながら笑った。
「「「「やっぱり魔王の軍勢よぉぉ!!」」」」
メイドたちの悲鳴が響き渡る中、最強の「矛」と化した《鉄の梟》は、帝国の補給線を断つべく、雷光のような速度で進軍を開始した。
ギバザやリッカたちのパワーアップ回! 科学と野生の融合はロマンですね。
一方、従魔たちの「真似」のクオリティが、別の意味で極まってきました……(笑)。
次回、ついに帝国騎士団との激突! 経済で弱った相手に、最強の「矛」が突き刺さります。
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