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眠らぬ民【村を焼かれ初めて「眠り」に落ちた時、脳内に核の火を制御する男の記憶が流れ込んだ。魔法の世界を物理法則で上書きします】  作者: 藤台団二


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第30話:再誕の光と、決意の旅立ち

仲間を救うため、フィンは「未来」を構築します。そして明かされる、魔王城の真実。

激戦から三日。村の広場には、重苦しい沈黙と血の匂いが漂っていた。

ゴーレムを退けたとはいえ、《鉄の梟》の受けた傷は深かった。アリシアの肩の傷は壊死しかけ、ガルドの全身は弾痕でボロボロだ。村の治癒師たちも手を尽くしたが、未知の兵器による損傷は「魔法」の範疇を超えていた。


その間、フィンは深い眠りの中にいた。二度目の眠り。それは意識の底でサンテスと同期し、焼き切れた神経系を再構成するための「修復期間」だった。


三日目の朝、フィンを寝かせていた小屋が、眩い純白の光に包まれた。

「……ん」

ゆっくりと目を開けたフィンの身体からは、微細なフォトンが溢れ出している。彼は目覚めてすぐ、外で苦しむ仲間たちの元へ駆け出した。


「リッカさん! 皆さんを、広場の中心に集めてください!」


フィンは、かつての幼い少年ではないような、静かだが確固たる意志を宿した声で指示を出した。彼はサンテスから提供された設計図を脳内で実体化させる。


「――量子医療カプセル、構築」


フィンの指先から放たれた光の粒子が空中で編み上げられ、三基の半透明なポッドが出現した。それは現代日本の医学すら凌駕する、未来の再生医療装置。

呆然とするアリシアたちを無理やりカプセルへ押し込むと、高濃度の薬液とナノマシンが彼らの傷を分子レベルで修復していく。


数時間後、カプセルから出てきたアリシアたちは、傷跡一つない滑らかな肌に驚愕した。

「……なんだい、これは。身体が羽のように軽いよ」

「傷だけじゃねえ……昔の古傷まで消えてやがる」


驚く彼らに、フィンはいつものように明るく、屈託のない笑顔を向けた。

「良かったです! お待たせしました」


まるで時空を止めたあの恐ろしい力が幻だったかのように振る舞うフィン。だが、彼は静かに、仲間たちに「新しい力」を手渡した。


「アリシアさん、これは。以前の剣はもうボロボロでしたから」

フィンが差し出したのは、驚くほど細く、美しい意匠が施された白銀の細剣。

「……名前は、『光子駆動剣・エクスカリバー』。念じてみてください」

アリシアが半信半疑で意識を集中させると、細剣の刀身が激しく発光し、一瞬で天をも衝く巨大な光の大剣へと変貌した。その質量と破壊力に、アリシアは言葉を失った。


「ガルドさんには、この胸部装甲を。……『重力偏向盾グラビティ・シールド』です」

ガルドの胸に取り付けられた魔道具が起動すると、彼の周囲に透明な光の膜が出現した。盾を持たずとも、あらゆる衝撃を弾き飛ばす。

「これで、旦那は両手の双剣だけで戦いに専念できます」


「そして、リッカさんにはこれを。カーボンファイバー製の黒い長剣です。……リッカさんの速さには、これが一番よく似合うと思って」

「……これは。……ああ、確かに馴染む。ありがとう、フィン」

リッカは眼鏡を拭い、少年の成長と異質さに、深い敬意と少しの寂しさを込めて微笑んだ。


だが、別れの時はすぐに訪れた。


「これ以上ここにいると、またあのゴーレムのような『追手』が来て、村を壊してしまうかもしれません」


フィンの言葉に、誰も反論できなかった。

村の出口。そこには、トマスをはじめとする村人たちが集まっていた。

「フィン様……本当に行ってしまうのかい」

トマスが震える手で、フィンの手を握った。

「おじいさん、足、大事にしてくださいね。……僕が変えたこの土なら、来年はもっと美味しい野菜が育ちますから」

「ああ、ああ……忘れないよ。あんたがこの村の救世主だったことを、一生語り継ぐからね」

村人たちの感謝と、もう二度と会えないかもしれないという悲しみの声。フィンは胸が締め付けられるのを感じながらも、毅然と前を向いた。


一行が目的地に定めたのは、かつてフィンが父・ガイルと共に魔道冷蔵庫を納品に行った、城塞都市アークスハイム。

そこは多くの国と取引を行う「貿易立国」であり、魔素への耐性を持つ数少ない都市だ。敵か味方かは不明だが、真実を知るためにはそこへ向かうしかなかった。


その頃、遥か彼方のアイゼン。

領主クサナギは、手元のモニターを見つめ、苦々しく吐き捨てた。

「……魔王のガーディアンが一体、沈黙したか。あの『サンテスの後継者』、覚醒の速度が予想を超えているな」


背後に立つ帝国将軍ゾルザルが、冷たく笑う。

「案ずるな。所長……いや、『魔王』の封印が解けるまでにはまだ時間がある。魔王城と呼ばれているあの『転移した原子力発電所』に辿り着く前に、サンプルは回収する」


「……魔王とは、かつての世界を滅ぼした遺産そのもの。それを呼び覚まそうとする貴殿らの狂気には付き合いきれんよ」


二人の視線の先には、禍々しい黒い霧に包まれた巨大な建造物――かつて佐野宏樹が管理していた「量子AIサンテス装備型原子力発電所」が、魔王城として静かに鎮座していた。


一行は、まだ知らない。

自分たちが目指す旅路の先に、この世界の「創造」と「破壊」の真実が眠っていることを。

フィンの瞳に、アークスハイムへ続く長い道が映っていた。

第21話から続いたこの章も、一つの区切りを迎えました!

フィンたちの新しい力、そして魔王城=原発という驚きの設定……。果たしてアークスハイムで彼らを待っているのは?

「続きが読みたくなった!」という方は、ぜひ【ブックマーク】と【下の評価(★★★★★)】で応援していただけると嬉しいです!

皆様の声が、フィンの旅をより遠くへ導きます!_

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