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31/32

◇31

「とっても綺麗。もらっていいの?」


「おれい、だから!」


 そっとシーラの手のひらに乗せられた石を、素早く観察する。

「ありがとう! ねぇ、この石とっても綺麗だから、拾った場所をもっと詳しく教えてもらっても良いかしら?」


「いいよ! 場所もちゃあんと覚えているから!」


「ありがとう」


 得意げに胸を張る少女に微笑みを返して、シーラは振り向きざまに彼を呼ぶ。


「キオ! ちょっときて」


「はいはい、皆んな人使いが荒いですねぇ」

 キオが洗い物の手を止めて、エプロンで手を拭いながら歩いてくる。

 その長い三つ編みの先っちょをつかんで、シーラは言う。

「このおじさんね、綺麗な石にとっても詳しいの。この人に、見つけた場所を教えてあげてくれる?」

「わかった!」

「助かるわ」


 シーラの手元を覗き込んだキオが、わざとらしく声をあげる。

「おっ! これは良い石やなぁ。お兄さんも見つけたいわぁ。お嬢さん、お目が高い」

 さすが詐欺師ばりにうさんくさいだけある。子供をのせるのがとっても上手い。


 この件は一旦キオに任せよう。

 きっと、白の管轄になるだろうから。



          ◇



「この石が、ワイバーンを寄せ付けたのか」


 コランはガラスケースに入った素朴な作りのアクセサリーを持ち上げ、窓から入る光に透かした。

 ガラスケースは白が作ったもので、あらゆる「成分」を遮断するシロモノらしい。


 執務室にはカーラと白、シーラとサラサも集まっている。


「あの数の群れは珍しいとは感じたがな」

 白が言うと、サラサも頷く。

「白さんの蛇に仲間がやられたのにワイバーンたちが逃げなかったのは、これが理由だったのかも」


 ワイバーンたちの目的は、家畜ではなかったのか。


 サラサはひくひくと鼻を動かす。このつるりとした石から匂いがするわけではないが、何か肌を撫でるような、産毛が逆立つような、変なエネルギーが滲み出ているのは、あの日しっかりと確認済みだ。

 このガラスケースに入っていると、不思議なくらい何も感じないけれど。

 

「人間には無害なのよね? 少し変な感じはしたけれど、私の体は何ともならなかったし」

 と、シーラが言う。

「そうだね、魔物を引き寄せるという意味では、間接的には害があるだろうけれど」

 同様のものを誰かの荷物に放り込めば、自らの手を汚さずに危害を加えることもできるだろう。

 こんな小さな石ではなく、もっと大きなものだったら、その効果も変わってくるかもしれない。

「しかし直接に人を害するものではなさそうだ」


「サラサの言う通りだな。これを持っていた少女はただ綺麗だから拾ったと。血色も良く、本人がなんらかの影響を受けているようには見えなかった」

 白の言葉に、コランは唸った。


「自然のものか、人為的なものか────さて、どちらがマシかな」

 こめかみをおさえるコランの肩に、カーラがそっと手を添えた。


「警戒はしましょう。でも、心配しすぎることはないわ。日常は、いつも通りに」


「────ああ」

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