◇31
「とっても綺麗。もらっていいの?」
「おれい、だから!」
そっとシーラの手のひらに乗せられた石を、素早く観察する。
「ありがとう! ねぇ、この石とっても綺麗だから、拾った場所をもっと詳しく教えてもらっても良いかしら?」
「いいよ! 場所もちゃあんと覚えているから!」
「ありがとう」
得意げに胸を張る少女に微笑みを返して、シーラは振り向きざまに彼を呼ぶ。
「キオ! ちょっときて」
「はいはい、皆んな人使いが荒いですねぇ」
キオが洗い物の手を止めて、エプロンで手を拭いながら歩いてくる。
その長い三つ編みの先っちょをつかんで、シーラは言う。
「このおじさんね、綺麗な石にとっても詳しいの。この人に、見つけた場所を教えてあげてくれる?」
「わかった!」
「助かるわ」
シーラの手元を覗き込んだキオが、わざとらしく声をあげる。
「おっ! これは良い石やなぁ。お兄さんも見つけたいわぁ。お嬢さん、お目が高い」
さすが詐欺師ばりにうさんくさいだけある。子供をのせるのがとっても上手い。
この件は一旦キオに任せよう。
きっと、白の管轄になるだろうから。
◇
「この石が、ワイバーンを寄せ付けたのか」
コランはガラスケースに入った素朴な作りのアクセサリーを持ち上げ、窓から入る光に透かした。
ガラスケースは白が作ったもので、あらゆる「成分」を遮断するシロモノらしい。
執務室にはカーラと白、シーラとサラサも集まっている。
「あの数の群れは珍しいとは感じたがな」
白が言うと、サラサも頷く。
「白さんの蛇に仲間がやられたのにワイバーンたちが逃げなかったのは、これが理由だったのかも」
ワイバーンたちの目的は、家畜ではなかったのか。
サラサはひくひくと鼻を動かす。このつるりとした石から匂いがするわけではないが、何か肌を撫でるような、産毛が逆立つような、変なエネルギーが滲み出ているのは、あの日しっかりと確認済みだ。
このガラスケースに入っていると、不思議なくらい何も感じないけれど。
「人間には無害なのよね? 少し変な感じはしたけれど、私の体は何ともならなかったし」
と、シーラが言う。
「そうだね、魔物を引き寄せるという意味では、間接的には害があるだろうけれど」
同様のものを誰かの荷物に放り込めば、自らの手を汚さずに危害を加えることもできるだろう。
こんな小さな石ではなく、もっと大きなものだったら、その効果も変わってくるかもしれない。
「しかし直接に人を害するものではなさそうだ」
「サラサの言う通りだな。これを持っていた少女はただ綺麗だから拾ったと。血色も良く、本人がなんらかの影響を受けているようには見えなかった」
白の言葉に、コランは唸った。
「自然のものか、人為的なものか────さて、どちらがマシかな」
こめかみをおさえるコランの肩に、カーラがそっと手を添えた。
「警戒はしましょう。でも、心配しすぎることはないわ。日常は、いつも通りに」
「────ああ」




