1.仲間とクエストへ
さて、翌日のことである。
俺とエリミナは二人でゴブリン狩りに出た。
というのも、勢いとはいえ彼女とパーティーを組むと言ったのだ。それを反故にするのは申し訳ないように思われたし、何よりあのまま少女を放り出すのは危険に思えた。そんなわけだから、今日から俺には仲間が出来たのである。
そのこと自体は歓迎すべきことで、とても嬉しいことだった。
しかし問題は、測定不能の者が二人で行動している、ということで――。
「レオンさんっ! レオンさんって、ゴブリン狩りのプロなんですよねっ!」
「――へっ!? どこから、そんな話が……?」
と、そんなことを考えているとエリミナがそんなことを訊いてきた。
俺は完全に不意打ちを食らって、間の抜けた声を発してしまう。
しかし、そんなこちらを気にもせず少女は笑った。
「昨日、あの後に他の冒険者さんに聞きました! レオンさんは、有名な【ゴブリン狩り】なんだ――って! そんな有名人と行動できて光栄ですっ!」
「あー……なるほど、ね」
――誰だ、こんちくしょう。余計なこと言いやがって!
少女の満面の笑みが眩しい。俺はそれから視線を逸らしつつ、苦笑い。
いいや、うん。ゴブリンを狩ることについては、誰よりも長けていると謎の自信はあるのだけれど。プロだとか、そういう風に言われると微妙だった。
しかし、エリミナの先輩として、ある程度の面目は保たないといけない。
そんなちょっとしたプライドが顔を出した。
「……と、そんなことを気にしてる場合じゃなかったな。出たよ!」
「は、はいっ!」
とりあえずクエストに集中しよう。
そう思っていた時だった。一体のゴブリンが顔を出したのは。
俺は剣を引き抜いて、隣のエリミナは手に持っていた杖を構える。話によると彼女は治癒師らしい。それなら基本的には、俺が前衛として戦う。
時たまに少女に傷を癒してもらう、というのが常道だろう。
「それじゃ、見ててね!」
「分かりました!!」
俺はまだこちらに気付いていないゴブリンに、先制攻撃を仕掛ける。
距離にして数メイル。間もなく接敵する――というところで、ようやくゴブリンはこちらの存在に気付いたらしかった。しかし、もう遅い。
小さく魔法を詠唱し、剣にある細工をした。
「――【付加魔法:炎】!」
それは、俺に出来る限られた魔法のうちの一つ。
武器に属性を付与する、エンチャント、と呼ばれるものだった。
「だあああああああああああああああああああああっ!!」
その効果によって火属性――燃え盛るそれとなった俺の剣。
俺は思い切り振りかぶって、ゴブリンに向かってその剣を叩きつけた。
――ギィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィィ!?
一撃。いとも容易く、ゴブリンは魔素へと還って行った。
俺はふっと息をついて、剣を仕舞う。そして、この戦闘では残念ながら出番のなかったエリミナの方へと振り返った。するとそこには――。
「――うわぁっ! 凄いです、レオンさんっ!」
「え、あ、うん……ありがとう」
口元を手で覆って、目を輝かせる女の子の姿。
彼女は本当に感動しているらしく、パタパタと駆け寄って俺の手を取った。
その表情に思わず、俺は小恥ずかしくなってしまう。頬を掻いて、目を逸らしてしまう。そんなこちらの様子に首を傾げたのはエリミナ。
しかし彼女は「あっ」と、小さく声を上げて前を指差した。
「見てください、レオンさん! あっちからゴブリンがたくさん!」
「ん、たくさん……?」
その言葉を不思議に思い、俺はその指差す方向を見る。
するとそこにあったのは――。
「本当だ。でも、ん……?」
――何やら、様子のおかしいゴブリンたちだった。
少なく見積もっても数十の魔物たちが、何かから逃げている。中にはゴブリン以外にもBランク相当のデイモンや、Aランク相当のアークデイモンもいた。
その光景を目の当たりにして、俺の脳裏には嫌な予感が……。
「レオンさん? あのデカい魔物って、なんて名前なんですか?」
「うん。アレはレッドドラゴンって言って、Sランクの――って、えええっ!?」
……的中した。
俺は突如現れたソレを見て、青ざめる。
そこにいたのは、最上級ランクに設定されている魔物――レッドドラゴン。
「どうして、こんな場所にレッドドラゴンなんかが……!?」
本来であれば、低級な魔物しかいないこの場所にいるはずのない存在だ。
それなのに、そいつは我が物顔でその巨体を揺らしていた。
そして、さらに運がないことに――。
「あ、こっち見ましたよ?」
「………………」
――目があっちゃった。
こうなっては、蛇に睨まれた蛙のようなもの。
今から逃げるなんて選択肢は、取ることが出来なかった。
その証拠に、レッドドラゴンも魔物の群れから、標的をこちらへと変える。
――ギャオォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!
咆哮し、また一歩とこちらへ迫ってきた。
それを見て俺はとっさに、エリミナにこう叫ぶ。
「逃げろ、エリミナ! ここは俺に任せて!!」
守らなければならない、そう思った。
だから、俺は少女に向かって強くそう命令をする。
その気迫に負けたのか。少女は困惑の色を浮かべながら、立ち去った。
「時間を、稼がないと……!」
そうなれば、俺の役割は一つだけ。
エリミナの生存可能性を1%でも上げることだった。
――誰かを守れるようになりたい。
そして、そう。
奇しくも、冒険者としての俺の願いを叶える機会がやってきたのだった。
次の更新は明日の昼ごろ。
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