勉強会3
「な~んて冗談ですよ、冗談。本気にしましたか?」
遥はおどけてそう言った。
冗談?そうか冗談なのか…
告白されるということは聡の人生で始めて経験したことだった。不意に「好きですと」言われると人間どうしていいか分からないものでだ。
冗談でよかった。もし仮に遥が本気で交際を申し込んできたとしても今の聡では断ることしかできないからだ。聡は一抹の寂しさを覚えつつもそう思うことにした。
「そっそうですよね!私が言うのもなんですが兄はこれといって何も取り柄がない人です」
大丈夫だろうか?自分はちゃんと綾として振る舞えているだろうか?冗談であったとしても聡は動揺してしまった。そしてそれは綾の体にも伝わるのである。
「遥さん流石にそれを実の妹の前でやるのはちょっと」
「ごめんごめん綾がどういう反応するか気にってさーちょっとからかってみたくなっちゃたぜ。それに私は追いかけるより追いかけられる派なんで」
こういう天真爛漫な部分は遥の魅力なのだが。
「でも、綾さ~凄く動揺してたよね。どうしてかな?」
こういう意外に鋭いのも遥なのである。
「そんなことないですよ」
綾は必死に否定した。しかしそのしぐさは遥にはかえって怪しく見えた。
「ふーん」
遥は綾に顔を近づけてじっと見つめてくる。
聡は全て見通されているような錯覚すら覚えた。
「綾ってもしかして…」
「こらこれ以上綾さんをいじめないの」
この状況を見かねた恵子が止めに入った。
恵子のおかげでこの場は何とか誤魔化すことができただろう。しかし望はまだしも遥までも綾の不自然さに気付き始めているのかもしめない。と言っても友達を解消することはできない。聡はより一層注意深くしなくてはならないと思った。
夕方
長かった勉強会がやっと終わりを告げた。
今日だけで何度ど心臓が止まりそうになったことか、そもそもちゃんと勉強していたのかすら疑わしい。
「望、ちゃんと復習しといてよ。たぶん今日だけじゃあんまり上達してないから」
「うるさいな!言われなくてもやりますよーだ」
そう言うと望はさっさと帰って行った。その手には家に訪れた時にはなかった新たな袋が握られていた。中身はもちろんペンギンのぬいぐるみである。
「「お邪魔しました」」
そう言って遥と恵子の2人も帰っていった。
勉強会もうこりごりだ。もし仮にやるとしても今度は絶対に聡と綾の2人同時で相手するのはやめよう。
聡はそう誓ったのであった。
その頃
「遥さん今日はどうしたんですか?綾さんをあんなに追い詰めて変でしたよ」
「私分かっちゃったよ。恵子、多分綾は五十嵐先輩のこと好きじゃないよ」
「まぁ、じゃああの告白は嘘だったのですか!」
「怒らないであげて、きっと本命を隠すためだから。そう、だって綾はお兄さんに恋しちゃってるもん」
「遥さんの勘違いではないのでしょうか?」
「間違えないよ!お兄さんが望を部屋に連れていくときとても心配そうにしてたし、私がお兄さん好きだって言ったらかなり動揺してだから」
「そんな兄妹でまさか…」
「仕方ないことだよ。記憶喪失を無くして最初に見たのがお兄さんなんだから。もうこれって運命だよね」
「流石に飛躍しすぎではないでしょうか?」
「兄妹の禁断の恋!私は応援するよ綾!!」
夢見がちなのも遥なのだ。




