12話 会話
クラウト大森林は地の精霊の加護を受けている森である。そのためか多種多様な植物が生育し、どんな植物でも必ず育つとされている。地の精霊の加護を受けている森だからか、精霊の森への入り口も開きやすい。エムロード国とマージア国を繋ぐ森である。
ー☆ー
ジューっという音でファルチェは目が覚めた。
(いい匂いがする……)
ファルチェはベットから出て、身なりを少し整えてから部屋を出た。
「おはよう、よく眠れたかい?」
リビングに入ると、ファベルは朝食を作りながらそう声をかけてきた。
「おはようございます。おかげでよく眠ることができました」
ファルチェの言葉にファルチェはホッとしたように笑った。
ファベルはファルチェに椅子に座るように視線で促した。
「いいタイミングで来てくれたよ。出来たから食べよう」
口に合うといいけど。そう言いながら作った料理をどんどんテーブルに並べていった。
「いただきます」
2人で手を合わせゆっくりと食べだした。
「美味しいです、ファベルさん」
ファルチェの言葉にファベルは
「よかった」
と嬉しそうに呟いた。ファルチェは食べながら、身体にゆっくりと魔力が巡っていくのが分かった。なんでだろう?と思わず首をかしげた。それを見ていたファベルが口を開いた。
「昨日の怪我が酷かったから、ポムグラスを使った」
ファベルの言葉にファルチェは納得した。
ポムグラスには魔力・体力回復効果と、戦闘などで傷ついた身体を癒してくれる効果がある。
「ここってポムグラス、どこに生えてるんですか?」
「お世話をお願いしようと思ってた薬草園。あと、魔力樹が植えてある所の下草」
ポムグラスって魔力樹と相性がいいからとファベルは言った。
「食べたら色々話そう」
ファベルの言葉にファルチェは頷いた。
ー☆ー
「あの……」
「あのさ」
食事を終え、ファベルとファルチェは同時に切り出した。お互いにどうぞどうぞどうぞと譲り合う。
じゃあとファベルが先に話し出した。
「たぶん、ファルチェが話したいことと俺が話したいことは同じだと思う。けど、嫌だったら話さなくていいから」
ファベルはそう前置きをして続けた。
「昨日ファルチェを襲った2人……。相当な手練れだと思う。ファルチェの話を聞くに、ファルチェは姿を変化させてたはずなのに、襲撃されたってことは何らかの力で見破ったことになる。それが守り石の力なのか、ファルチェより高位魔力だからなのかは分からないけど。あと、2人の関係性も気になる」
「どうしてですか?」
「恋人とか兄妹ならいいけど、双子だったら厄介なことになる。双子は2人で1人とみなされるから。1人の魔力等級が低位か中位でも、2人で1人とみなされれば脅威になる」
ファベルはファルチェにポム茶を出しながら続ける。
「しばらく、少なくとも3日間はなにも起こらないと思う」
ファベルの言葉にファルチェは
「どうしてそう言いきれるのです?」
と聞いた。ファベルは
「3日後には武闘大会があるから。俺のことに気付くのもそこだと思う。なにかあるとしたらその後だろう」
とまるで予言するかのように言った。
「ファルチェにはこれを渡しておこうと思う」
ファベルはそう言ってファルチェに折り畳み式のナイフを渡した。
(ナイフ……?ファベルさんのことだから、ただのナイフのはずがない)
ファルチェの反応を見て、ファベルは言った。
「それは魔法道具 糸だ。ナイフとしてももちろん使えるけど」
貸してと言うファベルに、ファルチェは戸惑いながらナイフを渡した。ファベルはグリップの一部を指して言った。
「ここに指を添えて押し出すと、刃が出る仕様になってる。この刃には糸が繋がってて」
ファベルは一旦言葉をきってから糸を天井に向けた。グリップの一部を押すとドスッと刃が天井に刺さる音がした。
「展開」
ファベルがそう呟くと防御壁が展開された。
(防御壁が展開できる糸……?)
「この糸は結界糸といって、魔力を通わせれば結界が展開できる。結界だけじゃなくて防御壁も展開できるよ。魔力を通わせなければ普通の糸としての使い方もできる」
ファベルの言葉にファルチェは驚き言葉を失った。
「糸とか布に魔力を、それも魔法を組み込むのに相当な技術がいるのに……」
ファルチェはポツリとそう呟いた。
ファルチェの言うとおり、糸や布に魔力を通わせ魔法を組み込むのには技術がいる。魔力石と違い、糸や布には魔力が通っていないからだ。加減ややり方によっては一瞬でボロ布に変わってしまう。
「グリップに明光 糸の魔法を組み込んである魔法石を嵌めてあるんだ。糸にも同じ魔法を組み込んである。ファルチェの身を守るのに必要になると思うから持ってな」
「ありがとうございます」
ファベルの言葉にファルチェは糸を大事にしまった。
「ファルチェも聞きたいこと、言いたいことあるんだよね?」
ファベルにそう聞かれ、ファルチェは頷いた。
「ファベルさんが言っていたことと概ね一緒です。相手は私を追ってここに来ると思います。それも近いうちに」
ポム茶を一口飲み続ける。
「薬草園のお世話以外にもできることがあるなら、やります。こうして武器まで頂いているのだから」
ファルチェの申し出にファベルは
「そしたら調合と調香もお願いしようかな」
ファベルはそう言うと席を立ち、薬草園に繋がる扉の前に向かった。ファルチェも立ち上がりついていった。
「今から薬草園に案内するね」
ファベルはそう言い扉を開けて中に入って行ったのだった。




