第六話 馴染みの喫茶店で流れてきた速報に不安が高まって……鬱だ
薬局を去った俺は、少し早いが軽食をとることにした。
さすがにパンとコーヒーだけで午後も乗り切れる自信が無かった……。
「いらっしゃいませ~!」
昼……にしては、ちょいと早く、朝食にしては遅い時間帯。
さすがにパンとコーヒーだけでささっと終わらせてきてしまった朝食では午後に向かう総合病院までは体がもたないと思った。
そのため、立ち寄ったのはだいたい午前中からでも開店していることが多い喫茶店。
この喫茶店というものは意外と使いやすい。
昼オープンとしている店はだいたい十一時開店になっていることが多いが、喫茶店ともなれば朝早くからずっと店がやっていることが多いので中途半端な時間帯に立ち寄りたくなったときにとても重宝する。俺みたいに、空き時間がバラバラになるような営業マンには嬉しい店だったりするのだ。
それに、ここは軽食もスイーツ系もあるし、ガッツリ食う人のための昼食メニューも充実していたりしている。そこが嬉しい!そして何よりも嬉しいのは、このご時世だというのに安価だということ。コーヒー一杯を飲むことだって高級店で注文すれば下手すれば札が吹っ飛んでいくこともありえる。が、ここではワンコイン……もしくは缶コーヒーを買うぐらいの値段で飲むことができてしまう。金はなるべくグッズを買いたいと思っている俺からすればそこが何よりも助かるのだ!
「ま~いど!今日は、これから営業ですか?それとも終わり?」
この従業員のお姉さんにもすっかり顔を覚えられてしまったみたいだ。こうやって来店したときの挨拶はしっかりしてくれるものの、水とメニュー表を持ってきてくれるときには気軽に話しかけてくれるようになった。
なにげに、このお姉さん。結構、イイ声をしているので通っていることも多い。決してキャラクター性があるようなキンキンしたような声だという意味ではなく、きちんと耳に通るっていう意味でイイ声をしているということ。そんじょそこらの声優よりもイイ声をしているかもしれない。アニメを観ていることが多い俺が言うのだからイイ声だって自慢にしても良いと思う。
「ありがとうございます。午前の営業は終わりましたよ。午後は、病院に行く予定なんです」
「営業ってあっちこっち行くんですよね。……正直、疲れませんか?」
特に客は今のところ俺だけらしいからそんなに声量を落とさなくても良いのになあ……。
「あはは、確かに体力勝負みたいなところはありますよ。入社したての頃はよく筋肉痛にもなっていましたし」
「すっご!私は、だいたいここで働いていますけれど……あちこち歩いたりはしないので、凄いですね」
どうもどうも。
凄いとそう何度も言わなくても世の営業マンたちなんてもっともっと大変なヤツらは多いからなあ。人によっては都道府県なんて関係無しにあちこち移動する人もいるらしい。もちろん徒歩だけでは移動しきれない分、車だとか電車だとかで移動した費用は請求できるらしいけれど。ウチみたいなそんなに大きくない医薬品会社ならそこまで移動することは無いかも。
「いえいえ。あ、コーヒーとサンドウィッチでお願いします」
「かしこまりました~」
朝とメニューがそんなに変わらない?
まあ、俺は白米よりもどっちかと言えばパン派だ。
さくっと手で食べられるし、時間が無いときなんて飲み物で胃に流し込んでしまうお手軽さがパン系統にはあると思わないか?それに、ここのサンドウィッチはパンそのものが美味い!もちろん挟んである具も美味いのだが、パンそのものが美味いから何度でも食べたくなってしまう。もちろんコーヒーも言わずもがな、美味いけれどな。
なるべく外食に金をつぎ込みたくない俺は、昼食も軽めに。そして夜はきちんと自宅に帰って食べている。母親は朝は早いのだが、帰宅するのも早いためきちんと夕食の準備はしてくれている。とてもありがたいことだ。そこで夕食は、だいたい母親のその日の気分で決まってしまうのだが和食が基本に出てくる。そのため、主食は白米。家で白米を食べているのだから昼も白米を食べたいと思うか?……俺はそこまで白米に執着したくはない。
「お待たせしました、コーヒーとサンドウィッチです。あと、こちらおまけ、です」
「え?」
『おまけ』としてコーヒーとサンドウィッチの次にテーブルに置かれたのはプリンだった。
「あの、良いんですか?」
「おまけおまけ!いつも利用してもらっているお礼ですよ!それに、午後もまだまだお仕事なんですよね?甘いモノでも食べていってくださいよ」
「はぁ、では、ありがたく」
甘いモノは決して苦手でもないし、普通に時間さえあれば食べる。社員の中で旅行に行ってきた土産とかで甘い菓子を渡されることもあるが、普通に食べているしな。
それにしてもプリンか……この喫茶店ならではのメニューっていう感じがするけれど……なんていうか、昔ながらのプリンっていう感じがする。うん、デザートに美味しくいただこう。
最初に口にするのは、もちろんコーヒー。カップもじゅうぶんに温められているので少し火傷には注意しなければならないのだが熱いコーヒーを一口飲むと食道から胃へとじわ~っとコーヒーが広がる感覚にホッとしてしまう。コーヒー好きなら分かるかと思うが、この匂いもたまらん。だいたいブラックで俺はコーヒーを飲んでいるが、砂糖とかミルクを入れてコーヒーを飲んでいる人たちを見ていると、そこまでいろいろ入れて飲むぐらいだったらコーヒーを飲まなくてもいいんじゃないかと思う。この独特な苦みが美味いと思うんだけれどなぁ……。
昼も近くなってきたらしく喫茶店の店主が店に置かれているテレビを付けてくれた。もちろん流れているのはニュース番組。なにげに俺も耳をすませてどんなニュースが流れてくるのかチェックをしていたりする。時々、速報で何か流れることもあるからこの時間帯のニュースは大切だったりするのだ。
『ここで臨時速報をお届けします。先週から子どもたちの多くに流行しているという咳。こちらはウイルス性で飛沫感染をすることが判明しました。くれぐれも医療機関にかかるときにはマスク、それから手指の消毒を、との医療機関からの速報になります』
!マジか。
午後から総合病院に行く予定なんだよな。
ウイルス性っていうのは分かったがそれって大人にも感染するタイプのものなのか?速報だけではさすがにそこまでは言っていなかったよな。……このまま総合病院に向かっても良いものかどうか一度会社に連絡してみるか。
「あ、もしもし。あ、その声は近藤か?お前、今テレビで流れていた速報知ったか?いや、ついさっきさ速報で咳がウイルス性で飛沫感染するらしいんだって。この後、俺総合病院に行く予定なんだけれど……このまま向かって大丈夫なのかなって思ってさ」
『あー、ちょい待ち。課長に一応聞いてみるわ』
うーん……課長に聞いても、あまり良い返答は返ってこないかもしれないなあ。そもそも自分たちの会社がどんなことをしているのかって分かってなさそうなんだよな……あのハゲ上司。
『あー、悪い悪い待たせた。……だーめだわ~。とにかく行ってこいってさ。マスクと消毒、忘れんなよ?』
やっぱなー……あの、ハゲ上司。ニュースも見てねえのかよ……ったく、あ……やべぇ、鬱が再来しそう……。
こういうときはREONAのボイスを聴くのが一番の薬だな!
『大丈夫?無理はしないでね!大丈夫?無理はしないでね!大丈夫?無理はしないでね!』
おう!大丈夫でっす!
REONAの声のおかげで、午後も乗り切れそうだぜ!
あ、あくまでフィクションなので!ウイルス性のいろいろなモノもありますが、あくまで作品上で作り上げたモノなので、ご安心してお読みいただけると助かります!
とにかくスマホのなかにはいろいろなREONAのボイスを用意してあるのでしょうね……凄いな。
個人的な考えになるのかもしれませんが、まずコーヒーが美味い店はだいたい何でも美味い!……たぶん、ね。
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