第五話 鬱のクセがある俺だって人間ですから心配します!
本日、最初に営業に来たのは薬局だった。
だいぶ顔なじみになってきた俺はここ最近の病だったり、症状を聞くことに……。
ハゲ上司から逃れ、会社を後にした俺。
近藤が邪魔してこなければハゲ上司から注意をくらうなんてことはなかったんだよ!
ったく……こうやって何かと邪魔してくるから、俺が鬱っぽくなるんだ……。
えーっと、顔を出す薬局はそう遠くなかったよな。
今度、新薬が出ることになっているからその宣伝とパンフレットを渡して……軽く、最近の患者さんたちの様子でも聞いてみるとするかな。
医薬品の営業だからって、新薬についての説明、パンフレットを渡して、はい終わり……というわけではなかったりする。他の営業マンたちはどのようなやり取りを営業先としているのか分からないが、俺は薬局でも病院でも時間がある限り、どのような患者が増えてきているのか。今、どんな薬を必要としていることが多いのか。といった話をしていくことがある。例えば、季節的な問題でインフルエンザが流行り出す季節にもなれば、より効果的で副作用の少ないインフルエンザ対応の薬を宣伝していくこともできるようになるし、年々いろいろな病気やウイルスが世に蔓延るようになってきているから少しでも病人のためになる薬を他の医薬会社の何処よりも早く研究・開発をして営業まわりで宣伝してふれまわっていく。特に病院では何処の科で、どんな病気が流行っているか、どんな薬を必要としているかなんて話はすぐに聞けるものだから(患者の情報などは聞かずに流行りの病気ぐらいだったらいくらでも聞くことができたりしている)その情報を会社に持ち帰って、医薬品の研究・開発部門と情報を共有していく。それで新薬が次々と生み出されて病気に苦しんでいる人のためになるっていうんだから、なかなかにやりがいのある仕事だったりしている。……が、俺の第一の目的は、やはり『金』だ。
給料!
コレを貰うために必死になって働いている。
きっと、あれこれと情報を集めている俺は営業先からすると真面目で、よく先のことまで考えながら働いている営業マンだと知られているかもしれない。が、裏切ってしまうようで悪いのだが、俺は金のために働いている。何も悪いことじゃあないだろう?
生活するためには金がどうしても必要なのだから!
俺の鬱鬱とした心に潤いをもたらすためにREONAが担当したキャラクターグッズに囲まれている部屋に新商品を並べていくことも俺には欠かせない。もしも俺の部屋にあるREONA担当のキャラクターグッズがゴミとして処分されようものなら、俺は鬱を通り越して心を閉ざしてしまうかもしれない。いや、そうなる自信はある!親にも俺の部屋にあるものには一切手だしをさせないためにも最低限の生活費はきちんと支払っているのだ。……今のところ、部屋にあるグッズたちは安全に過ごしているはず。
「おはようございます。製薬会社、営業の黒瀬です。いつもお世話になっております!」
まずは第一地点にある営業先の薬局へ顔を出した、俺。
出迎えてくれるのはいつも薬局で事務として働いているおばちゃんだったり、お姉さんだったりする。薬局だから薬剤師なのでは?と思われるかもしれないが、薬局でだいたい最初に顔を合わせるのは薬局で事務として働いている人たちだ。薬剤師さんたちは奥の医薬品コーナーにて患者に合わせた調剤をしたり、患者用の薬のチェックをおこなっていることが多いのでいつも忙しい。
まだ午前中。
薬局におとずれている患者さんの姿も今日は少ないみたいだ。
これが流行り病がある時期ともなると薬局も病院も患者でいっぱいいっぱいの状態になっているので営業まわりに顔を出すのも大変になる。ちょっと患者を待たせて申し訳ない気持ちにもなったりするのだが(たいていこういう時の俺の鬱が起こる)ちょっとだけでも良いので薬剤師さんとの新薬についてのお話をさせてもらっている。
今日は今のところ患者も少ないし、落ち着いて話ができるかもしれない。
「いつもお世話になっております!今日は、まだ患者さん……少ないようですね」
「あぁ、黒瀬さん。いつもお疲れ様です。実は最近子どもたちの間でウイルス性の病が流行り出していて……病院では検査が長引いてしまっていてまだ薬局には患者が流れてきていないんですよね。……きっとお昼から午後にかけてが地獄になりますよ」
苦笑い混じりに話をしてくれているのは、この薬局の代表と言われている加藤さん。俺も何度かこの薬局に営業でやってきているのですっかり顔と名前は覚えられている。俺も新薬、そして薬局の人の入り具合を見ては気軽に話せる薬剤師の一人だったりしているので、この加藤さんも俺には結構親切にいろいろ話してくださっているのだ。
「え、子どもたち……ですか。インフルエンザ……には、まだ早いですよね」
「発熱とかは無さそうなんですが、肺炎などを引き起こしている子もいるみたいで……とにかく病院にちょっと顔を出すとマスクをしながら咳き込んでいる子ども連れの母親が多いんですよ。学校でも熱は無いのに咳き込んでいる子が増えてきていて心配している教師もいるのだとか」
今は、まだ九月。
時期的に考えてもインフルエンザが流行してくるには少し早いだろう。とすると、一般的な風邪だろうか?でも、熱は無いらしい……咳が続くとなると喉も痛いだろうし、夜もしっかり眠れない日々が続くんじゃないかな……心配だ。
いくら金を目的に働いているとはいったって、俺だって人間だ。世間でいろいろな病気にかかっている子、流行している病に苦しんでいる人たちの話を耳にすれば当然だが心配ぐらいする。今回の子どもたちに多いとされている咳はどれぐらいで完治するのだろうか、今ある薬で治る見込みはあるんだろうか。
一応、医薬品会社で働いている身だからいろいろと心配してしまう。ただ、新薬を紹介していけば良いってもんじゃねえんだ!きちんと患者のことを理解して、これからどんな薬が必要なのかってことも知らなきゃいけない!もしも在庫が少なくなってきている薬でもあるのならばどんどん薬を作ってもらう必要もあるしな。
こんな時、REONAが担当していたキャラクターならば何て言うだろうか……。
『世の中には絶対なんてものは無いの!諦めなければ解決は見つかるはずよ!』
……そうだな。
REONAもそう言っていたはずだし、まだ試していない薬だっていろいろと多いはずだろう。だから例え未知のウイルスによる病だからって最初から弱腰だと患者の方が心配してしまうだろう。
「お医者さんと相談して効果がみられる薬への対応を試してみてください。こちらも病院と連携して患者さんのデータと合わせて効果のある薬の開発を急がせますので!」
「ありがとうございます!黒瀬さん、いつも頼りになります!」
いえいえ、これぐらいは。
自分はあくまで営業マンなので、こういうことぐらいしかできないが、少しでも早く咳に苦しむ子どもたちを完治させるために尽力させてもらうつもりだ。
「一応、新薬のパンフレット置いていきます。今は、こちらよりも咳に対応する薬の方が欲しがるかもしれませんが……時間のあるときにでも目を通してもらえると助かります!」
「はい……では、いただいていきます。黒瀬さんも忙しいでしょうけれど、しっかり睡眠はとってね?クマ。ちょっと酷くなってきているように見えますよ?」
げ!
い、一応……三時間は眠れるように調整しているつもりなんだが……さすがにもうちょっと寝た方が良いんだろうか。
だって、夜だぞ!
夜こそ、自由時間になるじゃないか!せっかくの夜時間!REONAが出演したアニメを観るなら夜しかない!しかも一度観はじめてしまうと、次から次へと観たくなってしまうものだから睡眠を削ってしまう。もともとあまり寝なくても大丈夫な体だったが……クマ、か。これも歳取ったってことか?
『さあ、次に行くわよ!さあ、次に行くわよ!さあ、次に行くわよ!』
よし、次は……総合病院か。
きっと内科辺りは忙しいかもしれない……。
REONA……どうか、俺に気合いを注入してくれ!
もちろん作品なので、フィクションなのですが……ちょっと最近の流行り病に似たもの(あくまでフィクションなので現実のモノとは非なるものとしてお読みいただけると幸いです)を取り上げることもあります。が、あくまで参考だったり、フィクションならではのモノとして理解していただけますと幸いです。
鬱鬱言っていますが、けっこう仕事はきちんとしている黒瀬!どうか皆さんも応援してあげると嬉しいです!良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです!もちろん全ての読者様に愛と感謝をお届けしていきますよ!




