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第四話 鬱の俺にだって趣味を知る同期が一人ぐらいいるもんだ

 一応、言っておくが、俺の仕事は営業だ。

 主に薬局だったり、病院……とにかく我が社の医薬品を使ってもらう場所にかけまわる。

 が、朝礼というものはきちんと徹底されているようで……できれば顔も合わせたくはないハゲ上司から朝の挨拶を聞かなければいけないのだ。

「おはよう、諸君。今日も良い天気じゃないか。デスクワーク組も営業組も、はりきって頑張るように」


 どこがだよ!

 つか、このハゲ上司、目が見えてねえのか!?窓の外を見てみろ!バリバリに曇ってんじゃねえか!これのどこが良い天気に見えんだよ!

 はりきりたくても曇ってんだよ!

 そこは、『今日はあいにくの曇り空だが、心は晴天のつもりで頑張るように』とかってマシな挨拶もできねえのかよ!

 つか、毎朝同じようなことしか言わないし……朝礼だろ?もっと上司ならではの挨拶の一つでも用意することができねえのか?ったく、頼りにならねえ上司だな!


 えっと、今日朝の天気予報は?……って観てくる暇も無かったっけ。

 まあ晴れわたる青空の下、営業でかけまわるっていうのはかなり酷だ。良い運動にもなるんじゃないか?だと?ふざけんな。晴れているってことは太陽が顔を出してるんだよ。あの眩しい太陽にずっと当てられているんだぞ?あちこちかけまわる営業は、太陽には弱いんだよ。一か所営業でおとずれた時点でかなり疲弊するんだ。それに、汗だくにもなる。汗だくで次の営業先に顔を出してみろ。『この人、こんな汗だくで来たのかしら』って不審にみられるだろうが。だから営業先に顔を出す前には、きちんと汗を拭いて、服装の乱れがないかどうかもチェックしていくんだ。ただの営業?むしろ営業はめちゃくちゃ大変なんだ!これから営業職を目指す若者たちよ!営業は決して楽な仕事じゃないんだからな!覚えておけよ!

 だが、大変なだけってわけでもないんだ。気配りの良い、営業先っていうのもたまにある。そこでは営業職の俺たちのために気を遣って冷たいお茶だったり、ちょっとしたお菓子を差し出してくれることもあるんだ。そこでちょっと小休憩……っていうのもできるから運が良いとそういう営業先にまわされることもある。『運が良い』と最高だけれどな。決して、熱いお茶なんかを差し出してくるような営業先は運が良いとは言えない。あちこち歩きまわってくるんだぞ!?その上、熱いお茶なんか出されてみろ。まったく飲めたものじゃない!決して手を付けちゃいけないんだ。


 さて、今日まわっていく先はー……薬局と病院関連か。

 自分に割り振られている営業先のチェックと、一応自分のデスクに置かれているノートパソコンを開いて重要なメールが届いていないかのチェック。……良し、特にメールは来ていないな。

 たまーに『本日は都合が悪いのでお話はまた後日お願いできないでしょうか』的なメールを営業先からいただくことがある。これを見逃して、そのまま営業先に顔を出してしまうと『メール一つもチェックできない人なのかしら』的な目で見られるから気を付けろ!受付で『本日はそのようなご予定はありませんが……』と言われたときの気まずさといったら……気恥ずかしいことこの上ない!真っすぐ来て、とんぼ返りするような思いをしてみろ、すぐに隠れたくなるような思いになるんだからな!


『これから、発進するわよ!これから、発進するわよ!これから、発進するわよ!』


 おっと、いけないいけない。

 REONAのボイスがイヤホンから聴こえてきた。ちなみに、このボイスはREONAが主役デビューを勝ち取ったときのロボットアニメのときにREONAが担当するキャラクターが乗る機体が発進するときの掛け声だ。うん、これを耳にすると気合いが入る!

 そろそろ外に出掛けていくか……と思っていたところに背後から俺の肩にポンと手を置かれた。

 は?

 誰だ、おい。

 俺はこれから営業まわりに行かなくちゃいけないっつーんだよ!


「よ、かーずま。ん?お前、ずっとイヤホン付けっぱなしなのかよ。例の……声優だっけ?あの子の声ばっか聴いてんのか?」


 うげ。

 またもや顔を合わせたくない人物と顔を合わせることになったしまった……なんて日だ……鬱、再び。


 コイツはデスクワーク担当の近藤こんどう。一応、俺とは同期でこの会社に入ったヤツの一人だ。ハゲ上司のせいでなかなか長続きすることができない同期の中で、生き続けることができている人間の一人でもある。そう考えるとコイツのメンタルは鋼でできているのかもしれない。

 そして、コイツは何かと俺に絡んでくるヤツでもある。

 普通に仕事関連のことで聞きたいことがあれば応えてやることもできるし、仕事のことで相談したいことがあるなら何でも聞いてやる。が、コイツは仕事関連の話というよりも私生活についてあれこれ聞いてくることが多い。

 近藤の言葉を聞いて分かったとは思うが、俺が声優のREONAにかなりお熱だってこともコイツには知られている。

 以前に『趣味ってなんかあるか?』と近藤からたずねられたときがあった。そのとき、『声優のREONAが好きなんだよなあ……』的な発言をしてしまったことで俺は声優が大好きなのだと知られているようだ。だが、それは少し違う!俺はREONAだけが好きなのであって、他の声優全般はどうでも良かったりする。

 アニメとかも観たりするが、それはREONAが担当するキャラクターが出ているっていうだけで、決してアニメならば何でも観ているというわけではない。


「うるせぇ、大きなお世話だっつの。好きな子の声を聴いて何か悪いか?別にお前に迷惑なんか掛けてないよな!?」


「はいはい、分かったっての。……つか、お前のそれってただのファンって感じじゃねえよな」


「あ?ファンだよ!REONAが担当しているキャラクターの誕生日だって把握してるんだよ、こっちは!」


「マジかよ……」


 おい、引くなよ。

 あのなあ、このぐらい声優だとかアニメが好きなヤツなら当たり前なことなんだっての。

 推しのキャラクターがいれば、外出先には共に……っていうヤツもいるし、自分の誕生日だけじゃなく、推しキャラの誕生日を豪勢にお祝いしているオタクだって今や珍しくないんだぞ?


「お前、今までその……れ、れな?」


「REONA!」

 

 麗奈れなは俺の妹の名前だ、それぐらい間違えるな!


「……REONAって子のキャラクターにどれぐらい貢いできてんだよ?」


「分からん!」


 つか、いちいちいくら支払ったとかなんて考えていないからな。

 毎月の給料から生活費を親に支払い、残った金のほとんどは趣味……REONAが担当したキャラクターグッズをあれこれと買い占めているから今までどれぐらいのお金を注ぎ込んできたのかなんて考えたことがない。おそらく……十数万?いやいや、円盤諸々も含めていけば数百万単位までいくのか?いやいや、これぐらいオタクなら普通だ!


「どっからそんな金出してんだよ……」


「あ?そのためにこうして毎日毎日頑張って働いているんじゃねえか!こっちは鬱になりかけながらも必死に働いているんだよ!」


「鬱なりかけかよ……いい加減、そろそろ病院行けっての」


「病院ぐらい行ってるっつの!営業で!」


「違ぇよ!患者として病院に行けって意味だよ!」


 こうやって言い合いができるのは、お互いの趣味だのなんだのをいろいろ吐き出しているからかもしれない。第三者からすれば、コントにも見えなくもない俺と近藤のやり取り。いや、でもコイツと喋るのって疲れるんだよ。無駄に大声で喋ってるからか?近藤もかなり声がでかいからなあ……それに吊られて思わずこっちも声がでかくなる、つまりカロリーを消費してしまう。


「……ごほんごほん!黒瀬くん、近藤くん。キミたちは暇なのかね?」


 げ、ハゲ上司!


「い、今から行きます!」


「俺も自分のデスクに戻りまーす」


 資料関係で忘れ物がないかチェックしつつ、慌てて会社から外へと飛び出して行った。

 やっぱ、近藤とのやり取りは疲れる。

 大声で言い合っていればハゲ上司の目にも止まるし、いいことなんて一つも無い。

 くそっ……鬱だ。

 本当に、近々病院に行ってみようか……。


『目標接近!目標接近!目標接近!』

『私ならまだまだやれるわ!私ならまだまだやれるわ!私ならまだまだやれるわ!』


 ……いや、まだやれるだろう。

 相変わらず、REONAの声がイイ!!

 営業職、そしてデスクワークにしてもお仕事している人たち、毎日お疲れ様です!!ホント、そう思いますとも!!どんな仕事だってお疲れ様と言いたい!

 ハゲ上司……もとい、バーコードでOK!バーコードは一応『課長』でもあります。なので少しでもサボろうものならば目を光らせて背後から忍び寄ってきますよ(汗)こわ……。


 頑張るお兄ちゃんを描きたくて書かせていただいている当作品。精神が安定していないところはありますが応援してあげると嬉しいです(作者にではなく!?)良ければ『ブックマーク』や『評価』などをしていただけると嬉しいです。もちろん全ての読者様には愛と感謝をお届けしていきますよ!!

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