106話 ララの開花。
ソウル大佐の恐ろしい計画が実行されてから10分が経過…街には魂を吸い取られて、抜け殻となった人々があちらこちらに倒れていた…
−サウスの街の地下にあるシェルターにて−
「ここに隠れていれば、見つかることはないだろう…」
「そうだな…?」
「そうよね…?」
「薄暗くて…怖いよ…」
「少しの辛抱だからね…?」
「こんな大変なことになってるのに…ギルドの人達は一体、何をやってるんだ…?」
すると大きな音と共に壁を突き抜けてマーガレットが現れた!
【我がここを知らないとでも思ったのか?】
「きゃぁぁ!!」
「みんな逃げろ!!」
【フッ、無駄な足掻きを。】
手を前にかざすと黒い玉を出して、地下に隠れていた人間達の魂を吸い尽くした!
【ここに居た人間でたったの50名ぐらいか、少ないな?現在で吸い取った魂はおよそ1万人ぐらい、まだ残り9万人もいる、面倒ではあるが、最強の力を得るためだ、地道にやるしかあるまい。】
そして時を同じくして、部屋に閉じ込められているララが必死に扉を開けようとしていた!
「この!!いい加減、開くっすよ!!」
しかしいくら体当たりしても、扉はビクともせず、開かなかった。
「ハァハァ…だっ駄目っす…自分の力じゃ開けられない…」
諦めた表情で座り込んだ。
「確かにマナさんの言う通りだ…自分は本当にポンコツだな…やっぱりこんな駄目な奴が冒険者になろうとしたのは間違いだったのかな…」
"あなたは駄目じゃないわ。"
「今のって…?」
するとララは幼い頃にマーガレットに言われた励ましの言葉を思い出した。
『うっう…何をやっても、上手く出来ないっす…色んな人から駄目なやつだってバカにされるっす…』
『泣かないで、ララちゃん。あなたは駄目じゃないわ。』
『本当…?』
『本当よ。あなたはきっとほかの人達よりちょっとだけ遅咲きなだけなの。』
『遅咲きなだけ…?』
『ええ。時間がかかった分だけ、きっと誰より綺麗に咲くはずよ。だから決して諦めずに自分に自信を持って生きなさい。』
『うん…頑張るっす…綺麗に咲いてみせる…』
『ふっふ。楽しみにしてるわ。』
「マーガレット姉があんなひどいことするはずないっす…何者かに操られていたようにも見えた…」
涙を拭うと、扉に手を当てて目を閉じた。
「それに約束したっす…ユリさんとアリスさんにも…」
すると手が光り出した!
「開け!!」
思いが通じたのか、扉にかかった封印が解けた。
「やった!本当に開いた!奇跡が起ったっす!!」
ララは状況を知るために冒険者ギルドに行くことにした。しかし家から出ると街の恐ろしい光景に息を呑んだ…
「なっなんすか…この惨劇…街中に白目を向いて倒れてる人が大勢いる…とんでもない事態が起こってるのは間違いないっす…急がなくちゃ…」
ララは慌てて冒険者ギルドの建物に入った、だがしかし、建物の中も外と同様に見渡す限り人が白目を向いて倒れていた…
「もしかして、無事なのって…?自分以外にいないんっすか…?」
《誰か助けてぇ!!》
「叫び声!!外から聞こえてきたっす!!」
ララは急いで外へ飛び出した!すると見えたのは足を挫いて怯える少女だった!
「だっ大丈夫っすか!」
「お姉さん、お願い、助けて!!」
「助けてって…?一体、何から…?」
【ほう、きさま、あの部屋から出られたのか?】
「えっ…?マーガレット姉…?」
空中からマーガレットが降りてきた。
「ゴクッ…なっなんすか…?その頭の角と黒い翼は…?」
【驚くのも仕方あるまい、冥土の見上げに教えてやろう?】
「なっ何を…?」
【我は魔族のソウル大佐、2年ほど前からこのマーガレット体に憑依していたのだ。】
「そっそんな…?」
【きさまが馬鹿で本当に助かったぞ?一緒に住んでいても、我の存在に気づかないで全く疑わなかったのだからな?】
「気づかなかったっす…」
【そして何より役に立ってくれたのはあのソノサキユリ達と知り合いになってくれた事だ、おかげで2年かけた計画をやっと実行出来た。】
「その計画ってやつが今の惨劇というわけっすか…」
【そういうことだ。】
「自分が気づけてさえいれば!」
ララは地面を叩いて悔しがった。
【もう、きさまは用済みだ、なぜか我の術は効かないから操る事も出来ず、魂を吸い取る事も出来ぬ、必要もないクズだ、殺してやる。】
(今度は確実に殺される!!この子だけでも逃さないと!!)
「君、逃げて!!」
「うっうん!」
【逃がすか。】
「あっ…」
少女は魂を吸い取られて、白目を向いて倒れた。
「しっかりするっす!!」
【いくら呼びかけても無駄だぞ。魂を吸い取った、それはただの肉体という抜け殻だ。】
「なんでこんなひどい事をするんっすか…」
【魂を吸収することで我は力を上げられる、ただそれだけのためだ。】
「そんなことのために…マーガレット姉の体に憑依して、怯えてたさっきの少女や街の人達から魂を奪ったって言うんすか…」
【だったら何だと言うのだ?】
「許さないっす!!」
ララは本気で怒った!
【フッフッフッ…フッハッハ!!きさまごとき、落ちこぼれが我に歯向かったぐらいで、状況は何も変わりはしないぞ?】
だが次の瞬間、バリッバリッと空を囲んでいた赤いバリアにヒビが入った!
「えっ…?」
【なっなんだ!どうしてバリアにヒビが!?】
そして赤いバリアが完全に粉々に砕けた!
【ぐっ!馬鹿な!我が約2年もの月日をかけて完成させた最強のバリアだぞ!たとえSSランクの冒険者でも破れないはず!一体、誰の仕業だ!】
「あっあれって…?」
遠くから優梨、レア大佐、メグ少佐、犬耳メイド、そして謎の小さい女の子が並んで歩いて来ていた。
【馬鹿な、レア大佐達が生きているだと…?】
「ユリさん、無事でいてくれたんですね…」
【それにあの小さい娘は、まさか…?】
「帰ってくるのが遅いっすよ…リュナさん…」