105話 アリスを救えるのは優梨の愛(後編)
【きさま、一体、何をしたんだ…体が言うことをきかぬ…】
「アリスちゃんを操る、あなたの邪悪な力を浄化してみせる。ハァァ…」
光が一層増した。
【それでこの光か…ぐぁぁ!!】
するとアリスの体から邪悪なオーラが少しずつ放出されていった!
(優梨さん、上手く行ってますよ!成功です!)
(メアちゃんのアドバイスのおかげだよ…)
「頑張って、ユリちゃん!!」
「ユリさん!!」
「頑張ってください!!」
【ぐぁぁっ!!】
(あともう少しです!頑張ってください!)
(うん!)
【思い通りにさせるものか…】
(攻撃を仕掛けてくるみたいです!!)
(えっ!)
【フレイム・ショット!】
「きゃぁっ!!」
アリスの炎の弾丸が優梨の肩を貫通した!
「ぐっ…腕が…」
「大丈夫ですか!!」
【惜しかったな?】
「もう少しだったのに…」
「よくもユリさんを…ガルルッ!!」
「駄目!!」
【邪魔だ、ファイアー・ボール。】
向かってくる犬耳メイドに炎の玉を当てた!
「くっ…そんな!」
【消し飛んだか。】
「どこを見てるのかしら…?」
【何?】
「そうです…あの子を舐めてはいけませんよ…?」
【どういう意味だ?】
「こういう意味だ!」
【なっ!?】
犬耳メイドがアリスを後ろから取り押さえた!
「あの子、いつの間に…?」
「ウフフッ…あの子はメイドの中でも…結構、強い方なのよ…」
「彼女なら、あれぐらいのこと簡単に出来ますよ…」
「そっそうなんだ…?」
「まだ新人なんですけどね…」
【はっ離せ!殺されたいのか!】
「この状態でよくそんな口が聞けますね?」
【チクショ!】
「ユリさん、さっきの術を唱えてください!」
「ありがとう!!エンジェ…」
【なんて。こんなので我の動きを封じたつもりか?】
「きゃっ!」
足を蹴られた犬耳メイドはそのまま倒れた!
「痛たた…しまった!」
【残念だったな、ソウル・バインド。】
「キャウウンッ!」
犬耳メイドも黒い鎖で縛られた!
「メイドちゃん!!」
「ごめんなさい…ユリさん、捕まっちゃいました…」
【これで邪魔者は居ない、後はお前を倒すだけだ、ソノサキユリ。】
「おんどりゃぁ!訓練の時に戦闘中は油断したらいかんってあれほど言ったろうが!」
「ひぃっ!ごめんなさい!」
「メグちゃん…性格違くない…?」
「あっ…怒るとつい…」
「相変わらずね…メグたんは…」
「お姉様!しっかりしてください!お姉様!!」
「お姉様!!」
【フハハハッ!あと一分もしない内にレア大佐の魂は吸いつくされるぞ!】
「そんな…ぐぁっ。」
【メグ少佐、きさまも人の心配をしてる場合か?】
「チクショ…」
「させない!もう一度、あの術で!」
優梨は再び目を閉じて、手を組んで、祈りのポーズをとった。
【そうはさせるか!!】
「ぎゃっ!!」
«ユリさん!!»
(優梨さん!!)
片手で首を強く絞められて、そのまま壁に叩きつけられた!
「あがっ…あがっ…」
【これで術は唱えられないであろう!!】
「エンッ…あがっ…」
(駄目だ…唱えられない…)
【このまま絞め殺してやるわ!!】
「やめろ!!」
(どうしたら!!)
(アリス…ちゃん…)
優梨の一粒の涙がアリスの手に落ちた…すると…
【ユリ…ちゃん…】
「ガハァッ…ゴハァッ…」
「首を絞めるのをやめた…?」
「なっなぜ…?」
「簡単な話よ…」
«お姉様!»
「愛は…暗示なんかより…ずっと強いのよ…」
「愛は…暗示なんかより強い…?」
【なっなぜだ…?マーガレットの時といい…?どうして殺せる寸前で手が止まるのだ…?】
(動揺している今がチャンスです!!)
(うん!!魔力全開で行くよ!!)
「エンジェル・ヒーリング!ハァァッ!!」
【ぐぁぁぁ!!】
一気に邪悪な力が放出された!
「あなたの野望もここまでだよ!」
【これで…終わったと思うな…?我の真の…計画はこれから…始まるのだ…あっ…】
「危ない!」
「あれっ…?アタシは一体…何を…?」
「大丈夫。アリスちゃんは何も悪くないよ。」
「うん…」
アリスは優梨の腕の中、安心した顔で眠った。
(寝ちゃった…?)
(きっと、大量の魔力を無理やり使わされて、疲れたのでしょう。)
(そっか。寝かせてあげた方がいいね。)
「いいな…」
アリスのことを犬耳メイドが羨ましいそうに見ていた。
「見てください、鎖が!」
「ええ…ユリちゃんが勝ったみたいね…」
そしてそれと同時にレア大佐とメグ少佐を縛っていた鎖が消え去った。
«痛てて…»
「みんな!!」
「皆さん!!」
«お姉様方!»
「みんな生きてたのね…よかったわ…」
意識を取り戻したメイド達を見て、レア大佐の瞳からは涙が溢れた。
「ありがとう。」
「えっ!」
犬耳メイドの手を握った。
「一緒に戦ってくれて。」
「役に立てたでしょうか…?」
「うん。かっこよかった。」
「キュンッ♡」
「忘れてました、お姉様!!人間達が迫ってきてるはずです!!」
「そうだったね!」
「この城にやって来る前にこちらから攻撃を!!」
「駄目よ、戦ったら!それじゃソウル少将の思う壺だわ!」
「でっでも…一体、どうしたら…?」
「城よりみんなの命の方が大事よ!城にいるみんなをどこか、安全な場所に移動させましょう。」
「それしかありませんね、わかりました。」
「そっそんな!」
「私達ならまだ戦えます!」
「城から出るなんて考えられません!」
「お願い。命令よ、聞いてちょうだい。あなた達の誰かが殺されたりしたら、私がどれほど悲しむか考えて…?」
«レアお姉様…»
「すみませんでした…私達が城に来たせいでこんなことに…」
「何を言ってるの。お茶会にあなた達を呼んだのは紛れもない私よ。悪いのは私、あなた達じゃないわ。」
「レア大佐…」
すると緊急連絡の放送が再び聞こえてきた!
《お姉様方、緊急連絡です!!森の中に居た人間達がなぜか全員、眠りについています!!》
«えっ!?»
「なっ何が起きたんですか…?」
「わからない…誰かが術で眠らせたのかしら…?」
「そっそんな…?一体、誰が…?」
『アタシだよ。』
«えっ!?»
そしてその頃…サウスの街ではソウル少将が企てた真の計画が動き出そうとしていた…
【我の暗示を解ける者が現れるとは!これは一刻の猶予もならん、マナよ、あの装置を発動させるのだ!】
【はい、ソウル様…】
マナは命令に従って、ある装置を発動させるために冒険者ギルドの地下の部屋にやって来た。
すると床の中央に大きな魔法陣が描かれていて、そこに立つと目を閉じて、こう呟いた。
【結界、発動せよ。】
その瞬間、サウスの街全体が大きく揺れた!
「うわっ!!」
「きゃっ!!」
「なっなんだ、地震か!?」
「あれを見ろ!空が何か赤いものに覆われていくぞ!」
そして街全体を赤いバリアで包まれた!
「怖いよ!」
「何か恐ろしいことが起こる前兆かしら…?」
【ソウル少将様。バリア装置を発動させました。】
【ご苦労、フッフッフッ、フハハハッ!これで街には誰も入れなくなり、中にいる住人も外に出られなくなった!さぁ、ここからが我の真の計画の開始だ!!】
マーガレットは背中に黒い羽を纏うと、ギルドの屋上から空中に飛び立った!
「おい、あれなんだ!何かが空を飛んでるぞ!」
「あれって…?冒険者ギルドのマーガレット隊長さんよね…?」
「えっ!隊長さんって確か、魔族に襲撃されて意識不明だって聞いたよ!」
【スゥゥ、聞け!!この街にいる人間共よ!!今からきさまらの魂を頂く!!】
「何を言ってるんだ…?」
「魂を頂くですって…?」
【人間ごときが我の力の一部となれることを感謝するんだな、ソウル・アブゾーブ!】
マーガレットは手を上に広げると、黒い玉を作り出した。
「一体、何をしてるんだ…?うっ…」
「意識が急に…あっ…」
バタッ、バタッと次々に人が倒れていった!
「おっおい、どうした!しっかりしろ!」
「駄目だ!倒れた人みんな、白目を向いて返事がない!」
「なっ何が起きているの…?あっ…」
それは留まることを知らず、倒れていく人数が増えていった!
【いいぞ、いいぞ、久しぶりのこの感覚、魂を吸収して我の力に変える快感、何度、味わってもたまらんな?】
等々、マーガレットの頭に角が現れた!
「見ろ!角があるぞ!」
「あれはマーガレット隊長なんかじゃない!」
「みんな逃げろ!」
「きゃぁぁ!!」
状況がやっと理解出来たのか、街の人々は恐怖から一斉に逃げ出した!
【フハハハッ!逃げろ、逃げろ、怯える者から魂を喰らうほど、楽しいものはないからな!
この街の人口は約30万人、それだけの数の魂を吸収出来れば、我は念願だった下級魔族から上級魔族になれるはずだ!そうなれば恐れるものなど、もはやこの世にない!】
《誰か、奴の野望を止めて!》




