98話 優梨に恋しちゃった、犬耳メイド。
優梨達はお昼を食べた後、ララにサウスの街を案内してもらって、色んな観光名所や有名な建物を観て回ったのだった。
「美味しい〜。あの店のアイスクリーム。」
「本当だね。」
「喜んでくれてよかったっす!」
「ねぇ。ユリちゃん。アタシの選んだストロベリー味も食べてみる?」
「うん。食べたい。」
「それじゃあ、あ〜ん。」
アリスは自分の選んだストロベリー味のアイスを食べさせてあげた。
「美味しい?」
「これも美味しい〜。」
「でしょう。」
「じゃあ、私のパイナップル味あげるね。」
「頂くね。」
今度は優梨が自分の選んだパイナップル味のアイスを食べさせてあげた。
「どう?」
「うん。美味しい。」
「だよね。」
「二人とも仲がいいっすね。食べさせ合いっこなんて、まるでラブラブなカップルを見てるみたいっす。」
«ラブラブ…»
「二人ともどうしたんっすか?急に顔が赤くなったすけど?」
「えっと、ララちゃん…?驚かないで聞いてくれる…?」
「ええ?」
「実はね、私達ってお互いに好き同士なんだ…」
「それって?」
「まだ付き合ってるわけじゃないんだよ?だけど…」
「お互いに特別な感情を抱いていると?」
«うっうん…»
「そうだったんっすね。それならそうともっと早く言ってくれたらよかったのに。」
「あれっ…?ララちゃんは驚かないんだね…?」
「何を驚くんっすか?」
「私達…その…女の子同士だから…」
「自分は全然、気にしないっす。二人はお似合いのカップルっすよ。」
«ララちゃん…»
「それにマーガレット姉だって女の人と結婚してるっすから。」
«えっ…?えっーー!?»
「そっそうだったの!?」
「はい!その女の人の名前はリュナって言って、凄く強い冒険者なのになぜか仕事をしないで、世界各地に放浪の旅をしてる自由人っす!だから滅多に家に帰って来ないんですよ?全くマーガレット姉が可哀想っす。」
「そっそうなんだね…?」
「冒険者のリュナさんね…?」
「それがリュナさん本人は成人してるって言ってるんですが、そんな風には見えないぐらい幼い容姿してるんっす!あれは幼女と言っていいレベルっすね!見たら二人とも驚くっすよ!」
「そんなに幼いんだ…?」
「あの容姿でまさか、"マーガレット姉との子供"がいるなんて、誰も思わないっすよ!」
「・・・・・今なんて…?」
「子供がいるって言わなかった…?」
「そう言いましたよ!マーガレット姉とリュナさんには自分と同い年の娘さんがいるんっす!」
«えっーーー!?»
「マーガレットさんもリュナさんって人も女の人だよね!?女同士で子供って作れるもんなの!?」
「アタシも初めて聞いたよ…?」
「作れるみたいです。方法までは教えてもらってはいないっすけど。」
「そうなんだ…?」
(この世界はそこまで出来るんだ…)
「ユリちゃん…」
「えっ…?」
「いつか…二人で…」
「なっなっ…」
裾を掴んで上目遣いをしてくるアリスに優梨はドキドキを隠せなかった。
「いい雰囲気っすね。」
「そっそういえば、マーガレットさんの娘さんってどんな人なの?」
「名前はレイアちゃんって言って、マーガレット姉に似てすごく綺麗で性格は明るくていい子っす!今は王都に修行に行ってるっす!」
「王都に修行に行ってるって、その子も冒険者なの?」
「武器職人っす!」
「武器職人…?」
「簡単に説明すると、武器職人は武器を作るプロの事だよ。」
「ああ、思い出した。昔やったRPGにそんなキャラ出てきたかも。」
«RPG…?»
「あっいや、何でもない…」
「レイアちゃんは若いうちから才能を認められて、王都で一番の武器屋で修行させてもらっているんです。いつも失敗ばかりの自分とは違って天才なんすよね…」
「ララちゃん…」
「あっ、なんか最終的に愚痴みたいになっちゃいましたね、すみません。」
「一つ聞いてもいい?」
「何っすか…?」
「夢ってあるの?」
「マーガレット姉みたいにギルドの隊長になることっす…」
「いい夢じゃない。」
「こんな大きな夢、自分には叶えられるはずないとわかってはいるんすけどね…」
「そんなことないよ。」
「えっ?」
優梨は俯くララの手を握った。
「きっとララちゃんなら、叶えられるよ。」
「そうだよ。応援するから。」
アリスも手を重ねた。
「ユリ先輩…アリス先輩…ありがとうっす…こんなすごい人達から応援されるとは感動っす…」
「そんな大げさな。」
「大げさじゃないっす!自分、やる気出ました!これからさらに頑張るっす!」
「頑張ってね。」
「はいっす!」
ちょうどその時、レア大佐の手紙を預かった犬耳メイドが優梨を見つけて、後をつけながら少しずつ近づいていた。
(クンクン、クンクン。やっぱり前にいるのがソノサキユリだ。思った通り可愛い♡うちのタイプな子だ♡はっ!違う、違う!今はどうあの子にこの手紙を渡すかだってば!考えろ…考えるんだ…)
「キャウッ!」
すると誤って、誰かの背中にぶつかってしまった。
「痛たた…」
「だっ大丈夫…?」
「あっ…」
ぶつかったのは優梨にだった。
「ごめんね…?怪我はない…?」
「はっはい…」
「ならよかった。」
「キュンッ。」
優梨から差し伸べられた手を掴んで、犬耳メイドは胸をときめかせた。
「いきなり固まってるけど、どうしちゃったの…?」
「はっ!何でもないです!失礼します!」
一礼すると慌ててその場を離れて行った。
「どこか不思議な子だったっすね。」
「そっそうだね…?」
そして肝心の犬耳メイドはというと、路地に隠れていた。
「レアお姉様、許してください…うち…ソノサキユリに恋しちゃいました…)
犬耳メイドは目をハートにしていた。