93話 眼鏡少女のララ。
(ふわぁぁ…朝か…)
「スゥゥ…スゥゥ…」
「まだアリスちゃんは寝てるんだ。もう少し寝かせてあげよう。」
優梨はアリスの寝顔を愛おしく見つめながら頭をそっと撫でた。
(優梨さん…お目覚めになられたんですね…おはようございます…)
(おはよう。何だか眠そうな声だけど?メアちゃん、昨日はちゃんと寝た?)
(あっ、えっと…)
(もしかして私達のためにずっと起きて見守ってくれてた?)
(よくわかりましたね…?)
(やっぱりか。ありがとう。ごめんね。無理させて。」
(いいんですよ…私は優梨さんのサポートとして、当然なことをしているまでで…ふわぁぁ…)
(大きなアクビだね。これからゆっくり寝て。)
(そうさせてもらいます…何かあったら、遠慮せずに呼びかけてください…)
(うん。おやすみ。)
(おやすみなさい…)
メアはベッドにダイブすると、すぐに眠りについた。
「さてと。アリスちゃんが起きるまでに朝御飯の用意でもしてようかな。」
《ぎゃぁぁ!!》
「えっ!?」
突然、森のどこかから大きな叫び声が聞こえてきた!
「今のって人の叫び声だよね…?」
「ユリちゃん、今の聞こえた!」
「アリスちゃんも聞こえた…?」
《お願い、許してぇっす!!》
「あっちから聞こえてくるみたい!行ってみよう!」
「うっうん!」
二人は急いで叫び声のする所へ向った!
「あれだ!遠くに人の姿が見える、女の子だ!」
「何か大きなモンスターに追われてるみたい!」
「あれはストライク・イノシシってモンスターだよ!頭突きを得意とする凶暴な奴で、一度、怒らせると相手を倒すまで追いかけ回すらしいんだ!」
「じゃあ、あの子が危ないんだね!急いで助けてあげなくちゃ!」
「ハァハァ…もう駄目っす…もう走る体力が尽きた…ぐぁっ!」
少女は石に躓き、勢いよく転んだ。
「痛たたぁ…超最悪っす…今日は本当に厄日っすか…?」
『ブヒィィ!!』
「はっ!神様でも天使でも悪魔でも誰でもいいっすから、誰か助けてぇぇ!!」
「エンジェル・シールド!」
「えっ…?」
少女が恐る恐る目を開くと、優梨が大きな光の盾で、イノシシの突進を食い止めた!
「ブヒッ!!ブヒッ!!」
「もう大丈夫だよ。」
「あのストライク・イノシシの頭突を止めるなんて…?あなたは一体、誰っすか…?」
「説明はあとで。アリスちゃん、頼むよ!」
「了解!」
アリスは空高くジャンプした!
「ブヒ!?」
「くらえ、フレイム・キック!!」
「ブヒィィ〜!!」
ストライク・イノシシはアリスの炎の蹴りをくらって、目を回して完全にのびたのだった。
「ふぅ。一丁目上がりっと。」
「ご苦労さま。」
「こんなの朝飯前だよ。」
「上手いこと言うね?」
「えへへ。」
「すっすごいっす…?あんな一撃で倒しちゃうなんて…?」
「怪我はなかった?」
「はっはい!あなた達のおかけで無傷っす!助けてくれてありがとうごさいます!」
「お礼なんていいよ。」
「そうだよ。無事ならよかった。」
「見た目がそっくりっすね…?」
「いちよう言っておくけど双子とか姉妹ではないよ?」
「そっそうなんすか?」
「誤解されやすいけどね。」
「それぐらい似てるもんね。」
「あの…もしかして、お二人も冒険者すっか…?」
「そうだけど?」
「やっぱりっすか!」
「ということはあなたも冒険者なの?」
「あっはい!そっす!紹介が遅れました!自分、冒険者のララって言います!14歳っす!」
「一つ年下か。私、ソノサキユリ、よろしくね。」
「アタシはアリス。」
「よろしくっす!」
(喋り方が独特な三つ編み眼鏡少女か、また個性的なキャラが出てきたな?)
(でも悪い子ではなそうですね。)
(だね。明るくて可愛い後輩って感じ。)
「それでどうして冒険者のはずのあなたがあのストライク・イノシシから逃げてたの?」
「お恥ずかしいことながら、自分そんなに強い冒険者じゃないんで、難易度の低い依頼、この森にある木の実の採取をしてたんです。でも運悪くさっきのストライク・イノシシの尻尾を踏みつけちゃって…」
「なるほどね、それで追いかけ回されてたんだ?」
「そうっす…いちよう戦おうとはしたんですか…攻撃が全然通じなくて…お二人が助けに来てくれなかったら、今頃、どうなってたことか…」
「仕方ないよ。ストライク・イノシシはDランクでギリギリ倒せるぐらいだから。」
「どおりでEランクの自分の攻撃が通じないわけっすね…やっぱり冒険者向いてない…田舎に帰った方がいいのかなぁ…」
「そっそんな落ち込み過ぎだよ?」
「そうだよ。これから強くなれるって。」
「ですよね!」
「切り替え早いね…?」
「自分の特技っす!ちなみにお二人は何ランクなんですか?予想だとDランク以上は確実にあるかなと…」
「アタシ達はAランクだよ。」
「えっ!?本当っすか!?」
「本当だよ。ほら。」
アリスは腕に着けてる、Aランクの証、銅色の特製腕輪を見せた。
「わぁぁ!すごいっす、憧れるっす!自分と年が近いのにもうAランクだなんて、お二人は神か何かっすか!」
「憧れるなんて照れるな…」
「だよね…」
「あっすみません!テンション上がりすぎました!お二人に助けてもらったお礼をしたいけど…今、ちょうど持ち合わせがあまりなくて…」
「いらないよ!」
「そうだよ!私達、そんなつもりで助けたわけじゃないから!」
「そんなわけにはいかないっすよ!助けてもらったのに何もお礼しないなんて!」
「そっそう…?」
「あっ!もしかしてお二人はこれからサウスの街に行くつもりじゃないっすか?」
「うん…そうだよ…?」
「よくわかったね…?」
「それぐらいは誰だって分かるっすよ!だってこの森を抜けてすぐあるのがサウスの街っすから!」
「それもそっか…?」
「きっと街に着いたら初めに冒険者ギルドに向かいますよね?街は広いっすから自分が案内しますよ!」
「それはありがたいな。アタシはいいと思うけど、どうユリちゃんは?」
「私も賛成だよ。」
「じゃあ、お願いするね。」
「よかったっす!」
眼鏡少女のララは笑顔で答えた。