スライム(初恋)
☆「スライム」の台本の彼女は幼く、言葉は苦手です。そのため、読み易さ重視で普通の文章のように書きますが実際は「人間? なんでこんなところにいるの?」は「にんげん? なんでこんなころにいるの??」という丸い印象になるよう脳内補完か、読み上げをお願いいたします。
人間さん? なんでこんなところにいるの?
どうしたの? そんなに震えて? あ、怪我してる!
大丈…痛いっ! 何!? なんでそんなに暴れて…怖いの? 大丈夫、大丈夫だよ。
ほら、ぎゅって。動物さんたちも怪我してるときは暴れちゃう時があるから、こうして捕まえちゃうの。
傷口は…、大変、沢山ある!
呼吸できるようにお顔だけ出して、一回飲み込むね? 大丈夫。ワタシの中なら血はあんまり流れないし、少しなら妖精の力を使えるから傷もすぐ治るよ。
どう? 落ち着いた? ほら、怖くないでしょ?
え? いやいや、人間さんも動物さんも食べたりしないよ。ワタシはここの魔力だけで十分だよ。
そんなスライム? 知らない? スライムって何?
ワタシ? 私は……、名前はないんだけどね、妖精モドキって呼ばれてるよ。
え? うーんとね、説明が難しいな。
妖精がどうやって生まれるか人間さん知ってる?
そう! 咲くことのできなかったお花の魂に妖精女王様が祝福と名前を与えて生まれるの。
でもワタシは違うの。よくわからないんだけど、アウライネ? アウラウネ? とにかくこのフェアリーフォレストに迷い込んで死んじゃった魔物の魂を女王様が憐れんで生まれたって、皆んな言うの。
だから、妖精じゃない私はいつも一人。ここで動物さんと暮らしてるの。
えへへ、大丈夫、ありがと。ワタシは気にしてないよ。
えっ!? 名前? 名前をつけてくれるの? ワタシに?
えっと、いいのかな? そんなこと勝手にしても?
…うん、ありがとう…。じゃあお願いしようかな。
……セレス。
ワタシはセレス…!
ありがとう! とっても気に入ったよ!
うん、大事にする!
大事に、するね…。
そうだ、人間さんはどうしてここへ来たの? 妖精たちは多分……、人間さんたちのことそんなに好きじゃないから危ないよ?
そっか、薬草を探してたら魔物さんに襲われて崖から落ちちゃったんだ。
たしかにこの辺は少し暗いし、近くがフェアリーフォレストになってるのに気づかないのも仕方ないよ。
それで、人間さんはこれからどうするの? 傷はだいたい癒せたと思うけど……、
帰る?
そう、だよね…。
ううん、なんでもない。
でも今日はもう暗くなるし、セレスのお家に泊まっていかない? 洞窟だけど、野宿するよりはきっといいと思うの!
大丈夫、気にしないで! 今、人間さんを返したら、妖精達に悪戯されたり、また怪我しちゃうかもだから。
ようこそ! セレスのお家へ! どう? 綺麗? 住みたい?
あはっ、それは良かった! それじゃあどうしようか? セレスはいっぱいお話しできるよ!?
あ……そう、もう寝るんだ。そうだよね、人間さんは怪我もして疲れちゃったよね?
え!? お話ししてくれるの? 本当に? いいの? やったー! セレス、沢山お話しできるの初めてだよ! 嬉しい。
えっとねー、じゃーねー、……。
【呟くように】
人間さん寝ちゃった。そうだよね。沢山お話ししてくれたもんね。
明日……、帰っちゃうのか。ヤ、だな。
寂しい。
どうしよう。どうしよう、どうしよう。
一人は嫌だよ。どうしたら、どうしたら人間さんはずっとここに居てくれるの?
それとも、また来てねって約束する? 人間さんは優しいから約束してくれるかもだけど、こんな森の奥まで無事に来れるかな…。
あ、そうだ。
【呟くように終わり】
あ、起きた? 人間さん、おはよう!
ん? なんでセレスが人間さんの手足を包んでいるのか?
ううん、傷じゃないよ。大丈夫、ちゃんと治ってるよ。
じゃあ、なんで…か。
えっとね、ちょっと恥ずかしいんだけどね、多分セレス人間さんに恋っていうのもしてるんだと思うの!
だからね、人間さんと一緒に暮らすことにしたんだ。だから人間さんはもうお家には帰れないんだ、ごめんね。
えっ、だからなんで、そんな違うよ! 食べたりしないよ!
なんで分かってくれないんだろ?
だからね、人間さん! これは恋…いや、愛なんだよ! セレスもちょびっとは妖精だからね、分かるの。これは女王様がセレスを産むときにくれた心の一つ、愛なの。
だから絶対逃さないよ。
ふふっ、女王様は妖精を産むときに知識も少し下さるの。例えば恋人同士の愛の確認の仕方とかも…ね。
逃げようとしてもダメだよ、人間さんにも、セレスを愛してもらうんだもん。
大丈夫、セレスは人間さんの欲しいモノもあげるし、好きなかたちにもなってあげる。
だから、ちゃんと愛してね?
★彼女は目の前に傷ついた存在がいれば人も動物も魔物も助けてあげたいと思えるほど優しい性根です。でも妖精だけは妖精のように、台本の都合のため以外の理由もあって人間さんの名前を聞きもしないように、意識にない自己中、傲慢があるのかもしれない。