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接客は苦手です

気まぐれ更新になってしまい申し訳ございません。

急ぎ足で、買い物を済ませ最後に寄った肉屋で揚げたてのコロッケもどきを大量に頂き、公爵家の別邸に帰ると玄関先にルベスとご婦人が揃っていた。


「ローズベルガ殿下…ご無事で!?」


ふたりは膝を突いて、土下座に近い感じで私の前で頭を下げた。


「あ…の大丈夫ですので…」


やっぱりこういうのいつまでも慣れないよ…


「ご挨拶が遅れましてジョナと申します」


「私の妻です」


なんと、ルベスとジョナはご夫婦なのか…今なら少しお話出来るかな?


「あの…少しお話聞かせてもらってもいいかしら?」


「!」


ご夫婦は揃って顔を上げると、私を客間に案内した。案内された客間は辛うじてお掃除が出来ていた。私の目線に気がついたのだろう、ルベスが謝罪を口にした。


「殿下…申し訳ありません。お屋敷の掃除が私達だけで手が足りず…他のメイドも侍従も本邸から一緒に来るはずだったのですが…シュリーデ様が行かなくてよいと仰ったとかで…」


ええっ!?それはあまりにモテ男ナンバーワンは根性が悪すぎ…しかし私の目線の動き一つで私の心情を読みとるなんて、このルベスは流石、公爵家の使用人ね。髪に白いものが交じっているので、もしかして現役は退いているのかな?


「そうなの…じゃあおふたりでこの屋敷全部のお掃除は難しいわね…」


「申し訳御座いません…」


「あ、いいのよ?その自分の部屋は…まあ私が片付けたりできるので問題無いし」


「殿下が!?」


「まあ!?」


ご夫婦が飛び上がらんばかりに驚いているので、今日買ってきた束子もどきと洗濯石鹸と、肉屋でもらったコロッケもどきを披露した。


本日の戦利品を見せて説明を始めた途端…ルベスとジョナ夫妻はさめざめと泣き始めた。


失敗した…


「あの…何も悲観的なことではないのですよ?私…商店街でお買い物もしたかったし、その…王城に居た頃はお兄様達が監…いえいえ、商店街も他のお店も出かけて見たことはなかったので、今とても楽しいのです…だから出来れば自由に行動させて欲しい…とか」


「王女殿下とあろう方が危険です、明日からは供をつけて行って下さいませ」


いやいやジョナ…それはモテ男ナンバーワンが一人で来いや!と言ったから身一つで嫁いできたので…


「いえ、まあ…私は護衛はおりませんし?」


私がそう言うとご夫婦はポカンとした顔をしてきた。


「そんな公爵家から護衛が寄越されているはずなのですが…確認して参ります」


ヨロヨロしながらルベスが外に出て行ってしまった。ジョナはお茶の準備をしてくれたのだが、ご老人だから手元が危うい。


私は立ち上がると、ジョナの手伝いをした。ジョナは驚愕して遠慮していたが、手元が狂って火傷でもしたら困るでしょう?と言いくるめてお茶の準備を手伝った。


「まさか……護衛がいない?今日から屋敷周りに配置していたはず…」


と言ってルベスがオロオロしながら客間に戻って来た。


「朝から護衛はいなかったわよ?」


ルベスにそう伝えると、まさか!と、ルベスとジョナが同時に叫んだ。


「私達と一緒に護衛も来ていたはずです。昨日の夜もいました…いつの間にいなくなったんだ?」


ジョナが小さく息を飲んだ。


「もしかして外の護衛もシュリーデ様が引き上げさせたのかしら?」


「えぇ?」


それは酷いよ……ますますモテ男ナンバーワンのシュリーデ様の好感度が下がる下がる。


ジョナはガタガタ震えながら話し出した。


「お世話はなにもしなくてよい…そうすれば城に逃げ帰るとシュリーデ様が仰ったと言われました。そう言われた時に鵜呑みにせずに、もう少しララベル様に詳しくお聞きしていれば…」


ララベルって誰だ?


ルベスに尋ねると、私がここに越して来る当日に、ララベル…公爵家の親戚筋の子爵令嬢のララベル=ミューデ様がここを訪れて


「シュリーデ様がメイドや侍従はこちらに寄越さずに、ルベスとジョナに全て任せると仰ったわ!シュリーデ様は少しでも早く追い出したいのよっあなた達も協力しなさい!」


と言ったらしい。ルベスとジョナはあまりにも不敬な発言に、再度ララベル様に聞き返したそうだ。


するとララベル様は


「あなた達は余計な詮索はしないでいいのよっ!シュリーデ様が仰っているのだからそれに従えばいいの!シュリーデ様が早くローズベルガ殿下に出て行って欲しいと思っているのだからっあなた達はその為に殿下を追い出せばいいのっ」


と、更に畳み掛けてきたそうだ。


もう呆れて言葉が出ないわ…そんなことを言って、親戚の女の子を寄越して来たシュリーデ=プレミオルテ令息に嫌悪感すら感じるレベルだ。


その日の夜は、私はルベスとジョナと共にコロッケもどきとスープとサラダで三人で食事をした。ご夫婦は恐縮していたが、三人しかいない屋敷だからいいじゃない?と笑いかけると、また泣かれた。


そんなに不憫なことはない…はず。


その夜、ルベスとジョナが私のお世話を頑張ります、と言われたが絶対大丈夫だから私の出来る範囲はやらせて欲しいとお願いした。


こんな条件下じゃなければ、のびのび自由に出来ないものね。


しかし一人で商店街に出かけることには難色を示された。でもね~商店街の別のお店も見たいし、マリリカの夢のお兄さんに働くと誤解をされたままなのも解いておきたいし…


翌朝ルベスが、公爵家に私の現状の報告に出かけて行った。


これはチャンスだ!


私はジョナの目を盗んで、お昼すぎに屋敷を飛び出した。


そしてマリリカの夢を訪ねた…が


「ローズちゃんっ見て!昨日ローズちゃんが言ってたみたいに、ドレス丈短くしてみたの~着てみて!」


マリリカの夢に入った途端、お店の奥さんに捕まってしまった。


「っえ?あの…え…え?」


また口を挟む隙が無いまま、カウンターの中に引き込まれて更に店の奥まで引っ張り込まれた。


奥さんにカフェの制服?を押し付けられたので、広げて体に当ててみた。


なるほど…踝が見えるまで裾をあげてみたのか。


「あの…裾をもう少しあげて、裾はレースの縁取りをしてみるのは如何でしょうか?丈の長さはさほど変わらなくても短く見えて隙間から肌が少し見えるのが良いかと…」


奥さんは目を丸くすると、叫んだ。


「それだぁ!」


…しまった。妙なアイデアをあげてしまったかも…でもね。


今日も店内はお爺様と女性の二人組のお客のみ…確かにお客を奪われているっぽい。せめて制服を可愛くすれば女性客に受けが良くなりそうな気もするのよね。店内の飾りも女子狙いにしてもいいし…


「ね~いつから働けそう?今日から働く?」


「んぇ?」


驚いて奥さんに変な返事を返してしまった。しかも奥さんの手元を見ると、既にドレスの裾上げを終えており、しかもいつの間に見付けてきたのかドレスと同色のレースを、すごい勢いで縫い付けているではないか。


なに?もしかして奥さん、裁縫がお得意なの?


「ほら出来た!着てっ着て!きゃあ!似合ってる~」


元々陰キャなので、陽キャの勢いには呑まれやすい…あっという間にカフェの制服に着替えさせられていた。


奥さんに全身鏡の前に連れて行かれて、鏡の向こうにいるのは、極上のメイドさんだ。くうぅぅ~これが今の私なんだよなあ…怖いくらいどんな服も着こなしてしまう。


「ねぇねぇ?お店に出ようよ?接客出来る?」


「ええぇ?流石にそれは…」


無理無理…と思ったけど、接客相手は女性の二人組だった。異性に注文を取りに行ったりするよりは緊張しないし、何とかなりそうだと思った。そう思ってしまうのは既に奥さんに押されて流されているという事なんだけど、深く考えてはいけないような気がした。


「ご注文はお決まりですか?」


「!」


〇ァミレスなどの店員の方の接客の言葉を思い出しながら、笑顔を浮かべて女性達を見ると彼女たちは驚きとそして顔を赤くして私を見上げている。


あれ?〇ァミレススマイルはおかしかったのか?


「わ…私は…森の恵みケーキと…」


女性達は慌てて注文を伝えてきたので、メモに書き留めて再び


「畏まりました、もう暫くお待ち下さいませ」


と、笑顔を浮かべてからカウンターの中にいる奥さんの所へ戻った。ところが奥さんもポカーンとして私を見ている。


どうしたの?


「ロ…ローズちゃぁんん!!何?何その…笑顔!?その言葉!?そんな接客いつ学んだの!?」


し……しまった、そういえば、こんなスマイルゼロ円のフレンドリーな接客は日本だけだと聞いた気がする…今更取り繕ってもおかしなものだし…


パティシエのバードさんが森の恵みケーキとフルーツサンドをお皿に載せて、渡してくれた。


「別にいいじゃねえか、不機嫌な顔で旨いモノ給仕されるより笑顔で渡された方が気持ちいいもんな」


「バード!それよっそれ!」


どれだ?奥さんは興奮しながら、果実ジュースをグラスに入れている。私はお盆にグラスと皿を乗せてお盆の上の食器を魔法で動かないように固定した。


転んだりしてケーキ皿を落としたらいけないものね。


「お待たせしました。こちらが森の恵みケーキです、こちらがフルーツサンドでございます」


女性達はケーキを見詰め、頬を染め…私を見て更に頬を染めていた。


「?」


なんだろうか…奥さんが何だか大きく頷いているけど?


そしてそのままの流れで、夕方までマリリカの夢で働いてしまった。


「これ半日分のお給金!」


もう帰らなくては…と奥さんに声をかけると、そう言って小さな麻袋を手渡された。


バイト代!?


「え?あの…」


奥さんとご主人のバードさんはニコニコと微笑みながら、オロオロしている私の手にバイト代の入った袋を握らせてくれた。


押し切られて働くことになったけど…初めての労働で得たお給料だ…


ご夫婦はバイト代を渡した後、何も言わないで私を帰してくれた。


そして夕闇が迫る中…公爵家の別邸の屋敷の中に静かに入ると、複数人の気配と共にこちらに駆け寄ってくる足音が聞こえた。


玄関ホールに走り込んできたのは、夜会などで面識のあるプレミオルテ公爵夫妻と昨日ぶり?のシュリーデ=プレミオルテ令息だった。


ヤバイ…どうしよう!義両親(仮)と旦那様(仮)の勢揃いだ!


シュリーデ(旦那)がクズすぎて好感度が下がりまくってますが……次回からは少しづつ上がっていく予定です。

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